高市早苗首相は6日、衆院財務金融委員会に1時間出席し、飲食料品の消費税率を2年間1%に下げる法案の質疑に臨む。公明党の発表によると、自民党の村井英樹国会対策委員長と衆院会派「中道」の後藤祐一国対委員長が4日、国会内の会談で合意した。自民は6日の委員会での採決も提案したが、中道は財源などの論点が多く残っているとして折り合わなかった。参院は同じ4日の本会議で、この法案を審議する特別委員会の設置を議決している。
6日午前9時に開会、首相の質疑は1時間
衆議院の開会情報によると、財務金融委員会は6日午前9時に第1委員室で開く。本会議は午後1時に予定されているが、開会情報に議題は書かれていない。
法案は10月9日に衆院で受理され、20日に財務金融委員会へ付託された。6日未明の時点で、衆議院の議案審議経過情報の審査終了と本会議議決の欄はいずれも空欄で、法案はまだ委員会の審査を終えていない。
公明党は、4日の国対委員長会談が断続的に開かれたと伝えている。合意は首相が1時間出席して質疑を行うという内容で、採決の日取りまでは決まらなかった。6日の質疑には公明党の岡本三成代表が立つ。岡本氏は4日の党中央幹事会で「党を代表して質疑に立ち、問題点を明らかにしながら、国民の期待に沿うような物価高対策、就業者支援につながる形を作りたい」と述べた。
公明党は衆院では会派「中道」に加わり、9月28日現在で中道は47人、自民党・無所属の会は315人だ。衆院の定数は465で、欠員が1ある。立憲民主党の徳永エリ政務調査会長は5日の党の会議で、「総理がようやく1時間だけ質疑に応じる」と述べた。公明党と民主改革の会の幹事長らも4日に会談し、首相が出席する衆参予算委員会の集中審議と今国会での党首討論を引き続き求める方針を確認した。11月中旬に予定される首相のアジア訪問の後に、帰朝報告と質疑を行うべきだという考えでも一致した。
| 日付 | 場所 | 内容 |
|---|---|---|
| 10月9日 | 衆院 | 法案を受理 |
| 10月20日 | 衆院 | 財務金融委員会に付託 |
| 10月21日 | 衆院財金委 | 片山さつき財務相が趣旨を説明 |
| 10月23日・27日・30日 | 衆院財金委 | 法案の質疑 |
| 10月28日 | 衆院 | 財金委と農林水産委の連合審査会 |
| 11月4日 | 衆院財金委 | 法案の質疑 |
| 11月4日 | 参院本会議 | 特別委員会の設置を議決 |
| 11月6日(予定) | 衆院財金委 | 首相が1時間出席して質疑 |
出典: 衆議院の議案審議経過情報・財務金融委員会ニュース、公明党の発表(11月4日と6日の欄)
4日の質疑、年度内の給付と所得上限を問う
4日の委員会については、衆議院の委員会ニュースがまだ掲載されていない。以下は公明党の発表による。
中道の赤羽一嘉氏(公明党副代表)は、消費税の引き下げが来年4月、支援金の先行実施が来年秋ごろと想定される点を挙げ、「来年4月まで本当に待てるのか」と問うた。そのうえで、予備費を使った住民税非課税世帯や子育て世帯への年度内の給付を求めた。片山財務相は「予備費の活用も含めて、必要な時にはタイミングを逸することなく対応する」と答えた。
赤羽氏は、政府が答弁で「参考値」として示した給付対象の所得上限350万円前後についても取り上げ、「所得上限額を引き上げるべきだ」と主張した。2年後に飲食料品の税率が8%へ戻ることには、事実上の大増税になるとの懸念を示した。
大森江里子氏は、国税庁の新しい基幹システムの稼働に伴って税金の還付に遅れが生じている事案に触れ、来年4月以降の減税で手続きが増えれば影響が広がる恐れがあるとして、確実な還付の対応を求めた。本紙は国税庁の公式発表でこの遅れを確認できていない。
所得上限は、それ以前の委員会でも論点になっていた。財務金融委員会ニュースによると、30日の質疑では中道の伊佐進一氏が所得上限を350万円とした場合の男女別の対象割合を尋ね、同じく中道の山本香苗氏は2029年度以降の支援金の財政規模を示す必要性を問うている。10月までの質疑の内容は支援金法案の衆院財金委質疑、所得上限や支給額の明示求める質問相次ぐ 27日は参考人4人で報じた。
参院は特別委を設置、委員長は自民の松村氏
公明党の発表によると、参院は4日の本会議で「消費税・支援金法案に関する特別委員会」の設置を議決し、特別委は委員長に自民党の松村祥史氏を互選した。設置を巡る10月30日の与野党合意の内容は、食料品減税・支援金法案、参院に特別委設置で与野党合意 委員40人、委員長は自民で報じた。
参議院の議案情報では、6日未明の時点で、この法案の参院の付託委員会の欄は空欄のままだ。同じページは、この法案を衆院で先に審議する「衆先議」と記している。
野党側は審議の条件を重ねて求めている。公明党の西田実仁幹事長は4日の党参院議員総会で、十分な審議時間の確保、複数回の首相出席、公聴会の開催などを求めていることに触れ、「参院は特別委で一歩深い議論をしていく」と述べた。立憲民主党の水岡俊一代表は同じ日の参院議員総会で「野党の総意として、しっかりと参院で熟議を展開するべきだ」と述べ、首相をはじめ各大臣の出席を求めていく考えを示した。徳永氏は5日、「来週からは参議院でも審議が始まるという状況」と語っている。
参議院の会派別所属議員数(11月5日現在)では、在籍247人に対し、自民党・無所属の会は101人で、過半数の124人に届かない。立憲民主・無所属は39人、国民民主党・新緑風会は25人、公明党は21人、日本維新の会は19人だ。衆院で自民会派が315人を占めるのとは、勢力の構図が異なる。
法案の中身と政府の説明
内閣官房と財務省の概要によると、法案は2027年4月1日から2029年3月31日までの2年間、飲食料品の消費税率を地方消費税と合わせて1%にする。国の分は0.78%で、地方消費税の減収は地方特例交付金で補う。
もう1つの柱の就業者負担軽減支援金は、働く人の税と社会保険料の負担を軽くするために、要件に当たる人へ毎年1回支給する。勤労所得の下限、合計所得の上限、支援額はいずれも政令で定める。費用は3分の2以上を国が負い、残りを都道府県と市区町村が半分ずつ負担する。財源は「特例公債に頼ることなく」歳出と歳入全般の見直しで確保するとしている。
政府は減税の位置付けを、10月27日付の答弁書で説明した。減税は支援金を2029年度に本格導入するまでの「つなぎ」であり、首相は衆院予算委員会で「二年後には確実に税率を戻す」と答弁している。税率を0%にせず1%とした理由については、首相が参院本会議で、1%であれば「零パーセントとするよりも事業者のシステム改修の期間が短縮でき、令和九年四月から実施可能」と述べた。2年後の税率の復帰を増税と見る指摘には、「時限的に行うものですから、税率を元に戻すことを持って負担増になるとの考え方はそもそも馴染まない」との答弁を示している。
一方、支援金の総額については、答弁書は「具体的な支給対象者の範囲、支援額を検討していく中で決まっていくもの」という首相答弁を引くにとどまる。支給要件も「法案審議における御議論や恒久財源の確保状況、所得等に応じた対象者数の推計などを踏まえて、支給開始に間に合うよう政令で定める」としている。
首相は2029年度以降の規模を示すべきだ
減税に2年の期限を切り、首相が税率を戻すと明言した点は妥当である。消費税は社会保障の財源であり、期限のない減税にすれば財政への信認を損なう。
問題は期限の先にある。支援金は毎年1回配る制度で、費用は国が3分の2以上、残りは都道府県と市区町村が負う。ところが、法案には支給対象の所得の線も金額も書かれておらず、総額について政府は「検討していく中で決まっていく」と答えるにとどまる。財源は特例公債に頼らないとしたが、答弁書は恒久財源の確保を今後の要素に挙げている。納税者から見れば、毎年いくらの公金が必要になるのかが分からないまま、制度の枠組みを決めることになる。
金額の確定を政令に委ねるとしても、公明党の発表によれば、政府は所得上限の参考値を答弁で示している。それなら、2029年度以降の支援金の規模の幅と、恒久財源の考え方を示すこともできるのではないか。6日の1時間は、首相自身がそれを語る場になる。参院で自民会派は過半数に届かない。数字を示したうえで採決に進むことが、法案の審議を前へ進める近道だ。
