電子部品大手の村田製作所は10月30日、2027年3月期(2026年4月〜2027年3月)の通期連結業績予想を上方修正したと発表した。営業利益の予想は7月31日に公表した4300億円から900億円多い5200億円に、売上収益の予想は2兆1100億円から1500億円多い2兆2600億円に引き上げた。同日発表した4〜9月期(中間期)の連結決算(国際会計基準)は、売上収益が前年同期比20.8%増の1兆907億円、営業利益が48.9%増の2459億円で、いずれも同社の過去最高だった。AIサーバーを中心としたデータセンター向けの部品需要が伸びた。

通期予想、営業利益を900億円上積み

業績予想の修正に関するお知らせによると、修正後の通期予想は売上収益が2兆2600億円(7月予想比7.1%増)、営業利益が5200億円(同20.9%増)、税引前利益が5320億円(同18.0%増)、親会社の所有者に帰属する当期利益が3960億円(同17.2%増)。基本的1株当たり当期利益の予想は185円68銭から218円80銭になった。

前期(2026年3月期)の実績は売上収益1兆8308億円、営業利益2818億円、当期利益2339億円だった。決算短信によると、修正後の予想は前期比で売上収益が23.4%、営業利益が84.5%、当期利益が69.3%の増加にあたる。

修正の理由について、同社は「データセンター関連需要のさらなる高まり」で売上収益が前回予想を上回る見込みだと説明した。利益面では「生産高増加に伴う操業度益や品種構成の良化」を挙げた。生産量が増えて工場の稼働が上がると、設備の費用を多くの製品で分け合えるため、1個あたりの費用が下がる。これが操業度益である。

10月以降の為替の前提は、7月予想と同じ1ドル=155円のまま変えなかった。決算説明会資料によると、対ドルで1円の変動は年間で売上収益に約90億円、営業利益に約45億円の影響を与える。上期の実績レートは1ドル=159.37円で、前年同期の146.04円より円安だった。

株主還元は変えない。年間配当予想は中間35円・期末35円の1株70円で、前期の65円から5円の増配となる計画を据え置いた。1500億円の自己株式取得も当初の方針どおり実施する。設備投資の計画は7月予想から150億円多い2700億円とし、主にデバイス・モジュール製品で将来の需要に備える。

中間期は売上・利益とも過去最高

4〜9月期の売上収益は1兆907億円で、前年同期の9027億円から1880億円増えた。このうち為替の円安による押し上げが約600億円あり、それを除いた増収率は14.2%だった。営業利益は2459億円(前年同期1651億円)、親会社の所有者に帰属する中間利益は1861億円(同1323億円)で40.6%増えた。

四半期で見ると、7〜9月期の売上収益は5885億円、営業利益は1475億円で、4〜6月期の5023億円・985億円からいずれも増えた。説明会資料は、第2四半期と上期の売上収益・営業利益がいずれも過去最高を更新したとしている。営業利益の増加分808億円のうち、為替の影響は約300億円だった。

受注も伸びた。全社の受注高は円高による外貨建て受注残高の評価減があったものの、データセンター関連や通信向けを中心に過去最高を更新した。受注高を売上高で割ったBBレシオ(1を上回ると受注が出荷を上回る)は7〜9月期で1.28、4〜6月期で1.34だった。一方で同社は「長納期案件の増加に加え、一部用途での前倒し受注の懸念など引き続き動向に注視していく」と記している。

事業別では、主力のコンデンサの売上収益が33.1%増の6056億円で、全体の55.5%を占めた。サーバーや代理店、自動車(モビリティ)向けの積層セラミックコンデンサ(MLCC)が増えた。コンデンサとインダクタ・EMIフィルタを合わせたコンポーネント部門の営業利益は、前年同期の1577億円から2556億円に増え、営業利益率は34.3%になった。

データセンター関連は前年同期の約2倍

用途別の売上収益を見ると、伸びが最も大きかったのはデータセンター関連である。

用途別の売上収益(4〜9月期)(億円)

2025年度上期2026年度上期

通信3,2853,468車載2,3452,688PC等1,4592,351家電734716産業他1,2041,684
「車載」はモビリティ、「PC等」はコンピュータ(データセンター関連を含む)。同社の推計値出典: 村田製作所「2027年3月期 第2四半期決算説明会資料」
数値で見る(単位: 億円)
項目2025年度上期2026年度上期
通信3,2853,468
車載2,3452,688
PC等1,4592,351
家電734716
産業他1,2041,684

コンピュータ向けは2351億円で61.2%増えた。その内訳のデータセンター関連は1649億円で、前年同期の817億円から101.8%増え、売上全体に占める割合は9.1%から15.1%に上がった。モビリティ向けは14.6%増の2688億円、産業・その他は39.8%増の1684億円だった。最大の用途である通信向けは5.6%増の3468億円で、家電向けは2.4%減の716億円だった。

スマートフォン向けの製品は振るわなかった。高周波・通信部門の売上収益は2.1%減の1985億円で、樹脂多層基板や高周波モジュールがスマートフォンやパソコン向けで減った。高周波・通信、エナジー・パワー、機能デバイスを合わせたデバイス・モジュール部門の営業損益は、前年同期の103億円の黒字から48億円の赤字になった。売価の値下げや材料価格の上昇に加え、電源モジュール事業で案件が取りやめになった損失約20億円も減益の要因になったと同社は説明している。

AI向けの部品需要で業績予想を上げたのは村田製作所だけではない。電子部品の同業では京セラも11月2日に通期の売上高予想を引き上げた(京セラ、通期売上高予想を2兆1200億円に上方修正 中間期はAI向け部品で増益)。パナソニックホールディングスもデータセンター向けの蓄電システムやAIインフラ向けのコンデンサの販売増を中間期の増益の要因に挙げている(パナソニックHD中間期、営業益2.2倍の3632億円 年間配当70円に増配)。

下期もデータセンター向けが伸びる計画

修正後の用途別の通期予想では、データセンター関連を7月予想の3706億円から544億円多い4250億円とした。上期の実績は1649億円なので、下期(10月〜2027年3月)は2601億円を見込み、上期より57.7%多い。コンピュータ向け全体の通期予想は5636億円で、7月予想を616億円上回る。

事業別では、コンデンサの通期予想を1兆1575億円から1兆2762億円に引き上げた。データセンター向けのMLCCの需要増を見込む。一方、高周波・通信は3797億円で7月予想を7億円下回り、樹脂多層基板のスマートフォン向けの減少を見込んでいる。

事業環境の認識も書き換えた。7月時点では原材料価格の高騰や「ホルムズ海峡の封鎖影響によるコスト増」を費用の前提に挙げていたが、10月時点ではモビリティ向けについて「中東情勢悪化等のリスク要因が緩和され増加」とした。製品価格の値下がりは「前回予想から緩やかに推移」とみている。

MLCCに5年で約1兆円

同社は決算説明会で、MLCCの生産能力を広げる計画も示した。2026年から2030年までの5年間で約1兆円を投じ、2030年度のMLCCの売上高を2025年度の2倍以上にする。内訳は建物への投資が約3500億円、生産設備が約6500億円。建物は国内の新しい生産棟3棟と、国外2拠点での生産体制の整備にあてる。

MLCCは電気を一時的にためて放出し、電子回路の電圧を安定させる小さな部品で、スマートフォンや自動車、サーバーに大量に使われる。同社は需要が広がる分野としてITインフラ、モビリティ、エッジデバイス(端末側の機器)、ヒューマノイド(人型ロボット)を挙げ、小型・大容量や高耐熱・高耐圧の高付加価値品が「成長を牽引」するとしている。

投資が本格化するのは2028年度以降で、資金は原則として営業キャッシュフローでまかない、一時的な需要には必要に応じて外部から調達する。2027年度までの中期方針で示した資金配分の進み具合に大きな変更はないという。上期の営業キャッシュフローは2155億円で、前年同期から477億円増えた。