弾道ミサイルが飛んできたときに逃げ込む先として国が指定を進めている「緊急一時避難施設」は、2026年4月1日時点で全国6万2382か所となった。内閣官房と消防庁、内閣府がまとめた指定状況で分かった。前年から1240か所(2.0%)増えた。このうち、爆風をより避けやすい地下施設は4540か所で、307か所(7.3%)増えている。

地下施設のカバー率は5.9%

指定の量を人口と比べた「人口カバー率」でみると、緊急一時避難施設全体は全国で162.8%にのぼる。前年度の155.2%から上がり、47都道府県と20の指定都市のすべてで100%を超えた。単純に面積だけで計算すれば、住民の1.6倍にあたる人数を収容できる計算になる。

一方、地下施設だけをみると5.9%にとどまる。前年度の5.5%からほとんど動いていない。人口カバー率は、施設の面積を1人あたり0.825平方メートルで割った想定収容人数を、2020年国勢調査の人口で割って算出する。つまり、地上の建物を含めれば全員分の避難先が数字のうえでは確保されているが、地下に限れば17人に1人分しかない。

地下施設の中身も偏っている。内訳は地下道が2139か所と最も多く、地下駅舎などが767か所、その他の地下施設が1139か所、地下駐車場などが454か所、地下街などが41か所である。地下駅舎と地下街は都市部に集中しており、地下街は東京都の7か所、大阪市の6か所、神戸市の5か所、福岡市の4か所などで、指定がある指定権者は13にとどまる。

5年間で地下は1278か所から4540か所へ

政府は2021年度から2025年度までの5年間を「集中取組期間」と位置づけ、地下施設の指定を集中的に進めてきた。この間に緊急一時避難施設全体は1万388か所(20.0%)増え、地下施設は1278か所から4540か所へと3262か所(255.2%)増えた。地下駅舎などに限れば2021年4月の79か所から767か所へ、地下街などは4か所から41か所へ増えている。

数としては大きく伸びたが、地下施設は既にある地下鉄駅や地下街を指定する形で増やしてきたため、鉄道網や地下街のない地域には指定できる施設がそもそも少ない。人口カバー率が5%台で頭打ちになっているのはそのためだ。

「避難所」とは別の施設

緊急一時避難施設は、国民保護法148条に基づいて都道府県知事(指定都市では市長)が指定する避難施設の一種である。国が定める避難施設は2026年4月1日時点で全国10万3226か所あり、このうち屋内の施設は8万1670か所。その中で、災害時に寝泊まりする「避難所」が7万1969か所、爆風などから一時的に身を守る「緊急一時避難施設」が6万2382か所となっている。両方を兼ねる施設もある。

避難所が数日から数週間の滞在を想定しているのに対し、緊急一時避難施設はミサイルが飛来してから着弾するまでの数分間に駆け込む場所という位置づけで、コンクリート造りの堅ろうな建物や地下街、地下駅舎が対象になる。核攻撃などに耐える長期滞在型の施設とは別のもので、政府はそうしたシェルターについては調査・研究の段階としている。長期間の避難が可能な「特定臨時避難施設」は、沖縄県の先島諸島にある与那国町、竹富町、石垣市、多良間村、宮古島市の5市町村で整備を予定している。

目標の単位を市区町村へ細かくする

政府は3月31日、「緊急事態を想定した避難施設(シェルター)の確保に関する基本方針」を閣議決定した。2024年3月に関係省庁の連名でまとめた「基本的考え方」を引き継ぎつつ、閣議決定の形にしたのは初めてで、あわせて2005年3月に閣議決定した「国民の保護に関する基本指針」も変更した。

基本方針は、これまでの取り組みを「都道府県単位」「公共施設中心」「夜間人口をベース」「地上施設が多い」と整理したうえで、2026年度から2030年度は市区町村単位での人口カバー率100%を目標に掲げた。全国平均や都道府県平均では100%を超えていても、市区町村ごとに見れば足りない地域が残るためだ。加えて、通勤・通学者を含む昼間人口のカバー率100%も目指すとしている。

確保の手法も広げる。地下駅舎や地下街、大規模建築物の地下駐車場といった民間の既存施設をシェルターとして確保し、水や食料、簡易ベッドの備蓄で数日間の滞在を可能にすることを促す。大規模建築物の容積率緩和などの奨励策も検討するという。災害時の帰宅困難者向け「一時滞在施設」と緊急一時避難施設を兼ねる「デュアルユース」も進め、武力攻撃から自然災害までを同じ施設で受け止める考えだ。

訓練は今年度19件

避難先の整備と並行して、実際に逃げる訓練も各地で行われている。内閣官房と消防庁は2026年度に全国19件の住民避難訓練を予定しており、9月27日の熊本県人吉市、10月10日の愛媛県久万高原町に続き、10月24日には福島県会津坂下町と石川県羽咋市で実施する。会津坂下町では、緊急一時避難施設に指定されている小学校の体育館と地下歩道へ住民が避難する。

北朝鮮は9月20日に2発の弾道ミサイルを発射しており、Jアラート(全国瞬時警報システム)が実際に鳴る事態は現実に起こりうる。基本方針は、シェルターの技術的な仕様や名称、優先して取り組むべき地域について、決定から1年後をめどに整理するとしている。