財務省理財局は9月18日に開かれた財政制度等審議会の財政投融資分科会で、令和9年度の財政投融資計画の要求内容を示した。各省庁から出された要求の総額は19兆400億円。令和8年度の当初計画である19兆180億円を220億円上回るだけで、規模はほぼ横ばいだ。ただし中身は大きく動いており、貸し付けが減って出資が増える形になっている。

総額は横ばい、「貸す」が減って「出す」が増える

財政投融資は三つの手段に分かれている。国が長期に資金を貸し付ける「財政融資」、国が株式などを引き受けて資金を出す「産業投資」、そして民間金融機関から借りる際に国が返済を保証する「政府保証」である。いずれも財政融資資金の長期運用に対する特別措置に関する法律(昭和48年法律第7号)第5条第2項に列挙された運用・投資・債務保証にあたる。

三つのうち、財政融資は令和8年度当初計画の12兆7162億円から令和9年度要求の12兆3956億円へ3206億円減る。政府保証も5兆8015億円から5兆4744億円へ3271億円減る。減った分を埋めて総額を横ばいに保っているのが産業投資で、5003億円から1兆1700億円へ6697億円増える。倍率にすると2.3倍だ。

貸し付けや保証は、いずれ返ってくることを前提にした資金である。これに対し産業投資は出資であり、事業が失敗すれば戻ってこない。政府が抱えるリスクの性質が変わるという意味で、総額の横ばいよりも内訳の動きのほうが重い。

産業投資の最大は国際協力銀行の3880億円、半導体量産に1500億円

産業投資の要求を機関別に見ると、最も多いのが国際協力銀行の3880億円である。令和8年度当初計画は1650億円で、2230億円増える。次に多いのが日本政策投資銀行の2000億円で、650億円から1350億円増える。エネルギー・金属鉱物資源機構は1044億円から1727億円へ683億円増える。

新しく登場したのが情報処理推進機構への1500億円だ。令和8年度当初計画には計上がなく、要求の全額が新規である。経済産業省が公表した同省関係の財政投融資要求概要によれば、使途は「次世代半導体の量産に取り組む事業者への出資」とされている。同省関係では、エネルギー・金属鉱物資源機構の1727億円が天然ガス・重要鉱物・水素・地熱の探鉱や開発段階の出融資や債務保証に、産業革新投資機構の800億円が次世代産業の育成や事業再編による競争力強化に充てられる。経済産業省関係の産業投資の要求額は合計4027億円で、令和8年度計画の1644億円の2.4倍になる。

このほかの産業投資の要求は、海外通信・放送・郵便事業支援機構が455億円から780億円、脱炭素化支援機構が326億円から450億円、海外交通・都市開発事業支援機構が208億円から447億円、鉄道建設・運輸施設整備支援機構が20億円から66億円。沖縄振興開発金融公庫は50億円で据え置きだ。

一般会計の予算では、令和9年度の概算要求が143.1兆円にのぼり、高市内閣が新設した『「強く豊かな日本」投資枠』にGXやAI・半導体向けを含めて12.2兆円が求められている(令和9年度の概算要求143.1兆円 新設の「強く豊かな日本」投資枠に12.2兆円 片山財務相「大幅な増加との指摘は当たらない」)。財政投融資は税金を配る一般会計とは別の仕組みで、国債の一種である財投債などで市場から集めた資金を、長期・低利で貸したり出資したりする。半導体やエネルギーへの資金供給が、補助金と出資の両方から同時に増えることになる。

機関の顔ぶれも入れ替わる

区分ごとの合計では、日本政策金融公庫や国際協力銀行などの政府関係機関が13兆2456億円から11兆6248億円へ1兆6208億円減る。国際協力銀行は産業投資が増える一方で、財政融資が4兆2527億円から3兆810億円へ、政府保証が4兆1650億円から3兆2000億円へ減るため、合計では8兆5827億円から6兆6690億円へ1兆9137億円の減となる。

逆に伸びるのが独立行政法人等で、2兆3309億円から3兆1869億円へ8560億円増える。なかでも鉄道建設・運輸施設整備支援機構は445億円から3095億円へ、うち財政融資が425億円から3029億円へと大きく増える。住宅金融支援機構は2244億円から6091億円へ増えるが、その大半は政府保証の1900億円から5500億円への増加による。電力広域的運営推進機関は540億円から1660億円へ増え、経済産業省の資料では大規模な電源や送配電網の整備を行う事業者への融資にあてるとしている。

特殊会社等も1兆614億円から1兆8161億円へ増える。日本政策投資銀行が7150億円から1兆3500億円へ、財政融資3000億円から8000億円への増加を伴って倍近くに膨らむのが主因だ。地方公共団体向けは2兆3558億円から2兆3984億円へ426億円の増にとどまる。

金額を示さない「事項要求」も残る

日本政策金融公庫については、日本成長戦略の実行に伴う民間投資を支える金融支援に関する令和9年度の要求が「事項要求」となっている。事項要求は、必要性は認めつつ金額を確定できない段階で、項目だけを立てておく要求の形だ。地方公共団体の震災復興対応分も、今後調整するとして今回の計数には含まれていない。つまり19兆400億円という数字は、これから積み増される余地を残している。

分科会では、このほか国際局から日米戦略的投資イニシアティブの状況報告も行われた。国際協力銀行が米国のガス火力発電事業向けに約6億3000万ドルを上限とする貸付契約を結んだことなどが、すでに公表された内容として整理されている(対米投資5500億ドル、これまでに結んだ貸付契約は5件 協調融資の総額は約68億ドルで枠の約1.2% 利益は元利回収後に米9割・日1割)。国際協力銀行の産業投資が2倍以上に増える要求は、こうした対外投資の枠組みと同じ時期に出てきたものだ。

財政投融資計画の要求は、これから分科会での議論と財務省の査定を経て、12月に政府案として決まる。資料に付された注記によれば、今回の計数は令和8年8月31日現在のものである。