片山さつき財務相は11月2日の閣議後記者会見で、高市首相から税収見積りの「精度」と「透明性」を高め、その結果を令和9年度予算編成に反映するよう指示を受けたことについて、「経済・物価の見通しも、今までとは状況も変わってきたこともあり、適切な見積りに努めてまいりたい」と述べた。財務省の決算資料によると、令和7年度の一般会計税収は84兆2226億円で、当初予算で見積もった77兆8190億円を6兆4036億円(8.2%)上回った。政府は補正予算に頼る運営から当初予算を中心とする運営へ移る方針で、そのためには予算を組む段階で税収をより正確に見込む必要がある。

会見で何を答えたのか

指示が出たのは10月29日の第15回経済財政諮問会議である。内閣府が公表した城内実経済財政相の会見要旨によると、首相は片山氏に対し、内閣府との連携を通じて「見積もりの精度」と「透明性」を高め、その結果を令和9年度予算編成に反映するよう指示した。城内氏には、「マクロ経済見通し」に基づく分析を行うなど財務省と緊密に連携し、税収見積もりの精度向上に貢献するよう求めた。会議の議論の全体は、諮問会議、補正予算頼みからの脱却を具体化へ 首相が予算編成の基本方針で「財政の全体像」示すよう指示で伝えている。

11月2日の会見は、首相の指示に具体的にどう取り組むかを問う質問から始まった。財務省が公表した会見の概要によると、片山氏は「歳出及び歳入全般の見直しを行う中においても税収見積りを適切に行うことは重要」と述べ、見積りの手法については「不断の改善を図っているところ」だと説明した。

透明性については、見積りの方法に関する情報は予算を国会に出す際の「租税及び印紙収入予算の説明」の中で示しており、財務省のウェブサイトでも公表していると強調した。そのうえで「引き続き、丁寧な説明を通して透明性についても、今でも公表していますけれども、向上に努めてまいりたい」と述べた。

この日の答弁では、見積りの手法をどう改めるのか、推計に使う前提や検証の結果をいつ、どの形で示すのかには触れなかった。見積りの改善を「経済・物価の見通し」の変化と結び付けた点が、答弁で示された方向性である。

令和7年度は当初見積りを6.4兆円上回った

見積りと実績の差はどのくらいあるのか。財務省主税局の「令和8年度租税及び印紙収入予算の説明」と、財務省の令和7年度決算資料を並べると、令和7年度の一般会計税収は、当初予算の77兆8190億円から、補正予算で80兆6980億円に増額修正され、決算では84兆2226億円となった。補正後の予算と比べても3兆5246億円多い。

令和7年度の一般会計税収(億円)

当初予算決算

0100,000200,000300,000226,660252,565所得税192,450217,449法人税249,080260,277消費税
決算は億円未満切り捨て。3税とも当初予算の見積りを上回った出典: 財務省主税局「令和8年度租税及び印紙収入予算の説明」、財務省「令和7年度一般会計決算概要(剰余金)」
数値で見る(単位: 億円)
項目当初予算決算
所得税226,660252,565
法人税192,450217,449
消費税249,080260,277

税目別に見ると、上回り方が大きいのは法人税と所得税である。法人税は当初の19兆2450億円に対し決算は21兆7449億円で、2兆4999億円(13.0%)多かった。所得税は22兆6660億円に対し25兆2565億円で、2兆5905億円(11.4%)多い。消費税は24兆9080億円に対し26兆0277億円で、1兆1197億円(4.5%)の上振れにとどまった。

税目 当初予算 補正後予算 決算
所得税 22兆6660億円 24兆6590億円 25兆2565億円
法人税 19兆2450億円 19兆5960億円 21兆7449億円
消費税 24兆9080億円 25兆5430億円 26兆0277億円
税収計 77兆8190億円 80兆6980億円 84兆2226億円
令和7年度一般会計の主な税収(予算は10億円未満四捨五入、決算は億円未満切り捨て)

出典: 財務省主税局「令和8年度租税及び印紙収入予算の説明」、財務省「令和7年度一般会計決算概要(剰余金)」

上振れは令和7年度に限らない。諮問会議の有識者議員が出した参考資料(資料2)は、物価上昇が続く中で、政府経済見通しの名目GDPや当初予算の税収見積もりが実績・決算との間で「一定の乖離」を生じており、近年は「上振れ傾向にある」と指摘した。直近4年間の平均で、乖離額は所得税が2.3兆円(乖離率11.3%)、法人税が1.6兆円(9.7%)、消費税が0.9兆円(3.8%)だったとしている。資料2はさらに、2020年代に入って所得税収や法人税収の増加率が名目GDPの伸び率を「大きく上回って」いると分析した。

税収以外の収入も見込みより多かった。令和7年度決算概要(見込み)によると、税外収入は補正後予算より9880億円多く、うち日本銀行納付金が9403億円を占めた。歳出の不用額2兆993億円と合わせ、財政法第6条の純剰余金は2兆6088億円となった。

財務省は税収をどう見積もっているのか

片山氏が会見で挙げた「租税及び印紙収入予算の説明」は、財務省主税局が予算の国会審議のために作る資料である。令和8年度版(令和8年2月)は、税目ごとに「政府経済見通しによる経済諸指標、最近までの課税実績、収入状況等」を勘案して見積もったと説明している。

主な税目では、前年度の税額に一定の割合を掛ける形で翌年度の税額を見込んでいる。令和8年度予算では、源泉所得税のうち給与所得について、雇用者報酬の伸びなどを勘案し、令和7年度に対する令和8年度税額の割合を「108%程度」とした。法人税は生産、物価、輸出、消費の動向などから「105%程度」、消費税は消費の動向などから「104%程度」と見込んだ。申告所得税の事業所得は「100%程度」としている。

起点となる令和7年度の税額は、見積りの時点では決算が出ていない。令和8年度の説明資料は、令和7年度の当初予算額と補正後予算額を比較の対象として示している。令和8年度の一般会計の税収見積りは83兆7350億円で、令和7年度当初予算より5兆9160億円多い。税制改正を反映する前の見込みは84兆2750億円で、そこから個人所得課税の7100億円の減収などを差し引いた。

その後7月に出た令和7年度の決算額は84兆2226億円で、令和8年度の予算額を4876億円上回っている。前年度の実績が当年度の見積りを超えた状態から令和8年度が始まったことになる。

諮問会議が求めた検証と、令和9年度予算への道筋

税収見積りの精度が予算編成の論点になったのは、政府が補正予算への恒常的な依存をやめ、当初予算を中心とした運営に移ろうとしているためである。年度の途中で税収が見積りを上回れば、その分が補正予算の財源に回ってきた。資料2によると、令和7年度の補正後予算は前年度と比べ、政策経費が4.7兆円増えた一方、税収・税外収入が8.9兆円増えた。

有識者議員の提言(資料1)は、当初予算の段階で税収を「より精緻に見積もる必要がある」とした。具体的には、財務省が近年の税収実績と当初予算の見積もりとの乖離を税目別・要因別に検証し、見積もりに使う推計手法や主要な調整要因を確認できるようにすることを求めた。内閣府には、経済動向やマクロ経済見通しに基づいて主要税目の税収動向を分析し、財務省と緊密に連携するよう求めている。

税外収入についても、資料2は令和8年度予算で9.0兆円程度、令和5年度から7年度までは10兆円以上で推移したと示した。提言は、活用できる税外収入を的確に把握するよう求めている。

城内氏は10月29日の会見で、当初予算中心の運営を支える税収見積もりの精度向上などを重視し、『令和9年度予算編成の基本方針』の策定に取り組むと述べた。片山氏の11月2日の答弁は、この基本方針に向けた財務省側の考えを示したものとなる。乖離の検証結果がどの資料で公表されるかは、会見では示されなかった。

為替は「共同声明に沿って行動」

会見では為替の質問も出た。11月3日の米中間選挙を前に市場への姿勢を問われた片山氏は、選挙の結果にかかわらず大統領と閣僚は「瞬時では代わらない」とし、米財務長官と出した共同声明は「この瞬間でも」有効だと述べた。そのうえで「無秩序な動きですとか過度に投機的な動きがあれば行動する」と説明した。

財務省の公表によると、政府は令和8年7月30日から8月26日までの間に計15兆3993億円の外国為替平衡操作(為替介入)を実施している。9月25日には片山氏とベッセント米財務長官が電話会談を行い、「円の過小評価は問題である」との認識を再確認した(日米財務相が電話会談、「円の過小評価は問題」を再確認 首脳会談でトランプ大統領が円安への懸念 高市首相「米国の貿易が厳しいと言われた」)。

11月2日の会見で記者は、相場が1ドル157円近辺で推移していると指摘した。片山氏は具体的な水準への言及を控えたうえで、「前よりは改善はしているんじゃないかと思っていますが、一時164円まで行っていたのは事実」と述べた。今の水準が適切かどうかについては「いいとも不適切だとも我々が言うはずがない」とし、過度な乱高下や投機的な動き、無秩序な動きは「断固避ける」との姿勢で日米当局は一致していると語った。