米国務省は10月9日(米国時間)、オランダ・ハーグにある国際刑事裁判所(ICC)を、機関そのものとして制裁対象に指定したと発表した。米国はこれまで、ICCの裁判官や検察官、所長ら個人を制裁してきたが、対象を裁判所そのものに広げた。日本はカナダやドイツ、英国など7か国と外相共同声明を出して反対を表明し、茂木外相は10日夜、日本出身の赤根智子ICC所長と電話で会談した。

米国内の資産を凍結、運営維持は「180日」の猶予

国務省の発表によると、指定の根拠は大統領令14203号「国際刑事裁判所に対する制裁の発動」だ。この大統領令に基づく制裁対象は、今回より前に17の個人・団体に上っていた。

指定により、米国内にあるICCの資産や、米国人・米企業が持つICCの資産は凍結される。米国人がICCに資金や物品、サービスを提供することも、原則として禁じられる。

一方で、米財務省の外国資産管理室(OFAC)は同じ9日、例外として取引を認める「一般許可」を4本出した。ICCの運営を維持するための取引、クラウドやソフトウェアなどIT関連のサービス、職員の年金、ICCに拘束されている被告人に関わる取引が対象だ。

このうち運営維持の許可は期限が180日に限られる。国務省は、この期間を「締約国が、ICCをめぐる米国の根本的な懸念に対処する外交的・法的な解決に向けて、意味のある進展を示すための時間」と位置づけ、取り組みの成否に応じて内容を見直すとしている。猶予の間に締約国の側が動くよう求めた形だ。

ICCは同じ9日に声明を出し、「前例のない措置」だとして強く反発した。声明は、これまでに13人の独立した裁判官と検察官が制裁対象にされてきたと指摘した。赤根所長は「裁判所は、法と証拠のみに基づき、独立かつ公平に、その任務を引き続き完全に果たしていく」と述べた。

日本など8か国「遺憾に思い、強く反対」

日本が10日に加わった外相共同声明は、カナダ、デンマーク、ドイツ、フランス、イタリア、日本、オランダ、英国の8か国によるもので、いずれもICCの設立条約であるローマ規程の締約国だ。外務省が和文の仮訳を公表した。

声明は「米国による裁判所への制裁の発表を遺憾に思い、強く反対します」と表明した。制裁が実施されれば「裁判所の業務、その献身的なスタッフ、およびその家族に重大な影響を及ぼす」とし、ICCがこうした措置に備えてきた取り組みを評価した。

そのうえで、2026年12月に予定されるICC締約国会議の準備を進めるにあたり、「非締約国との建設的かつ包括的な対話に取り組む姿勢を堅持」するとした。反対を表明しつつ、締約国以外の国とも対話を続ける姿勢を示した。

茂木外相は10日午後9時から約15分間、赤根所長と電話で会談した。外務省によると、米国によるICCへの制裁の発表を受けたもので、両者はICCをめぐる現下の状況などについて意見を交わした。

赤根氏個人は、すでに8月18日、OFACの制裁対象者リストに加えられている。この問題をめぐっては、高市首相が9月の記者会見で、米国への働きかけを続けていると述べていた(高市首相、ICC赤根所長への米制裁「今も米国に働きかけを継続」 日米首脳会談は「未定」 法の支配の強化に「必ず取り組む」)。

国民民主党は「懸念表明にとどまらず」と要望

国内では、国民民主党が10日、山田吉彦安全保障調査会長名で声明を出した。米国の措置に「深い懸念を表明し、強く抗議します」としたうえで、日本政府に対し「懸念表明にとどまらず、毅然とした明確な対応をとるべき」だと求めた。具体的には、米国に措置の即時撤回を求める公式な対話の申し入れを直ちに行うことや、ICCへの支援の継続を国際社会に宣言することを挙げた。

ICCは、集団殺害(ジェノサイド)、人道に対する罪、戦争犯罪、侵略犯罪を犯した個人を裁く常設の国際裁判所で、ICCの声明によると締約国は125か国に上る。日本は2007年10月1日に正式に締約国となった。

米国は運営維持の許可を180日に区切り、その間の締約国の動きを見るとしている。8か国の声明は、12月の締約国会議に向けて結束を保ちつつ、非締約国との対話にも取り組むとしている。