国民民主党の玉木雄一郎代表は6日、衆院本会議の散会後に国会内で記者団の取材に応じ、飲食料品の消費税率を2年間1%に下げる政府提出法案の採決で、与党の自民党と日本維新の会が賛成討論に立たなかったことを批判した。玉木氏は、法案が本会議を通過し、自党の対案は賛成少数で否決されたと説明している。党が発言の概要を公式サイトに掲載した。採決の結果は6日夜の時点で衆議院の議案審議経過情報に載っておらず、本紙は議事の記録では確認できていない。
本会議の討論は4人、自民と維新の議員は登壇せず
玉木氏は「4党から反対討論をやりましたけれども、自民党、維新の会、与党からは賛成討論がありませんでした」と述べた。法案を「総理の悲願」で「先の衆議院選挙の大きな最大の争点」だったと位置づけたうえで、「ではなぜ与党の自民党・維新の会は賛成討論にすら立たないのか」と問いかけた。
制度が今なぜ必要なのかを説明する責任が与党にあったというのが、玉木氏の主張だ。「その責任を放棄して、数の力で結果(衆議院を)通過させてしまうということは非常に残念な結果になってしまった」とも語っている。
衆議院の審議中継の記録では、本会議は午後1時2分に始まり、51分間だった。根本幸典財務金融委員長の後に発言したのは次の4人で、自民党と維新の会の会派の議員はいない。
| 開始時刻 | 発言者 | 会派 | 所要時間 |
|---|---|---|---|
| 午後1時17分 | 伊佐進一氏 | 中道 | 10分 |
| 午後1時27分 | 田中健氏 | 国民民主党・無所属クラブ | 11分 |
| 午後1時38分 | 牧野俊一氏 | 参政党 | 5分 |
| 午後1時43分 | 峰島侑也氏 | チームみらい | 7分 |
審議中継の記録に賛否の欄は無い。田中氏の討論は党が全文を掲載しており、国民民主、食料品の消費税1%法案に反対討論 「中間層が大幅な負担増」に内容を記した。残る3人の討論について、本紙は全文を確認できておらず、反対討論だったとするのは玉木氏の説明による。玉木氏は3人の討論の趣旨が国民民主の政策に沿っていたとも述べた。
同じ日の午前の財務金融委員会でも、午前11時14分に委員長が発言した後の4人は中道の大森江里子氏、田中氏、牧野氏、峰島氏で、3〜5分ずつだった。この場面にも自民と維新の議員はいない。一方で、それ以前の時間帯には自民党・無所属の会の北神圭朗氏が午前10時3分から発言している。首相が出席するまでの経緯は消費税減税法案、6日の衆院財金委に首相が1時間出席 同日採決は中道が応じずに詳しい。
衆院の会派別の所属議員は、定数465のうち自民党・無所属の会が315人、日本維新の会が36人で、与党2会派の合計は351人に上る。討論に立った4会派は中道47人、国民民主28人、参政15人、みらい11人で、合計は101人だ。
反対の最大の理由は2年後、政府は「負担増」の見方を退ける
政府案は、2027年4月1日から2029年3月31日まで、飲食料品の消費税率を地方消費税と合わせて1%にする。あわせて、働く人の税と社会保険料の負担を軽くする「就業者負担軽減支援金」を毎年1回支給する内容だ。
玉木氏が「最大の反対理由」に挙げたのは、「2年後に消費税率を1%から8%に戻した時に、支援金の対象外となってしまう中間層の大幅な負担増」に十分な対応が示されていない点だ。「減税は2年で終わりますが、子育ても介護も国民の暮らしも2年では終わりません」と述べ、「我々としては負担の軽減には賛成」としたうえで、恒久的な軽減策が必要だと主張した。田中氏は討論で、税抜き価格が変わらなければ税込み価格は約7%上がると説明している。
政府の立場は異なる。10月27日付の答弁書は、税率の引き下げを支援金の2029年度の本格導入までの「つなぎ」と位置づける。高市早苗首相の「時限的に行うものですから、税率を元に戻すことを持って負担増になるとの考え方はそもそも馴染まない」という国会答弁を引き、「二年後には確実に税率を戻す」との答弁も示した。首相は参院本会議で、「支援金の対象者の大宗は、飲食料品の消費税率引下げの効果を上回る支援を受けられます」とも答えている。本格導入される支援金については、中所得・低所得の勤労者への「初めての恒久的な負担軽減」と説明した。
玉木氏は、政府案の支援金を「低所得者向け給付」にとどまり、中間層向けの税額控除が無いため「制度として未完成」だと評した。9月15日に閣議決定した大綱も、支援金制度を「本格的な「給付付き税額控除」を導入する第一歩」と書いている。法案の概要には、税額控除と給付を組み合わせる仕組みの導入と、「本支援金の対象とならない者に対する必要な措置の在り方」を検討する規定が並ぶ。ただし答弁書は、2027・2028年度に対象外の人へ1%相当分の支援を行うことについて「検討していない」としている(支援金の対象外の人に「1%分の支援」は検討せず 食料品減税法案で政府答弁書)。
支援金の線引きは政令に、公明の発表では「参考値」350万円前後
玉木氏が「もう一つの最大の問題」としたのは、「支援金の中身が未だに分からないこと」だ。「対象の所得階層、そしていくらもらえるのか。いくらから減り始めて、いくらで消失するのか未だに全く分かりません」と語った。
法案の概要を見ると、支給の要件は4つある。勤労所得の下限、合計所得金額の上限、税・社会保険料の負担額の下限、配偶者の所得の上限で、いずれの金額も「政令で定める額」と書かれている。支援額も政令で定める。田中氏は討論で、重要事項を政令に委ねる法案を「白紙委任といっても過言でありません」と批判した。
政府は答弁書で、具体的な支給要件は「法案審議における御議論や恒久財源の確保状況、所得等に応じた対象者数の推計などを踏まえて、支給開始に間に合うよう政令で定める」とする首相答弁を示し、「現時点でお答えすることは困難」とした。
一方で、手掛かりがまったく無いわけではない。公明党の発表によると、同党の赤羽一嘉副代表は4日の衆院財務金融委員会で、政府答弁で「参考値」として示された給付対象の所得上限額を350万円前後と紹介し、引き上げを求めた。本紙はこの答弁の原文を確認できていない。田中氏も討論で、2027・2028年度の先行給付について、年収119万円以下の層に年5000円程度という参考案が示されたと述べたが、本紙はこの原資料も確認できていない。
費用の負担は概要に定めがある。支援金の3分の2以上を国が負い、残りを都道府県と市区町村が半分ずつ負担する。財源は「特例公債に頼ることなく、歳出・歳入全般の見直しにより確保する」としているが、金額は書かれていない。
玉木氏は、消費税の減税そのものについても、農業者や外食の事業者の負担がむしろ増え、利益が圧縮される課題があると指摘した。2月の代表質問で「10の懸念」として説明を求めたものの、すべてに十分な回答が得られないまま採決に至ったと述べている。
対案は否決、審議は与党が過半数に届かない参院へ
国民民主党の対案は、中間層向けの住民税減税と給付を組み合わせる内容だ。法律案要綱によると、2028年度以後の個人住民税について基礎控除と給与所得控除の合計を178万円に引き上げ、16歳未満の扶養親族も扶養控除の対象に加える。所得税では2027年分以後、この合計が178万円を下回らないようにする。玉木氏は「住民税の減税、中間層の減税と低所得者の給付を組み合わせて初めて、給付付き税額控除は完成する」と説明した。
この対案を支える議席は多くない。国民民主党の衆院の会派は28人で、定数465の約6%にあたる。2026年2月の第51回衆院選の比例代表で同党が得た票は557万2951票(得票率9.73%)で、自民党の2102万6140票(同36.72%)の約4分の1だった。
勢力が異なるのは参院だ。11月5日現在の会派別所属議員数では、在籍247人のうち自民党・無所属の会が101人、日本維新の会が19人で、合計120人にとどまる。過半数の124人に4人届かない。立憲民主・無所属は39人、国民民主党・新緑風会は25人、公明党は21人だ。玉木氏は「参議院は与野党が伯仲しています」と述べ、住民税減税法案を対案として示しながら「最終最後まで諦めずに粘り強く交渉していきたい」と語った。
立憲民主党の発表によると、参院は4日の本会議で消費税・支援金法案に関する特別委員会を設けた。参議院の議案情報では、この法案の衆議院からの受領日と付託委員会の欄は、本紙の確認時点で空欄だった。
もっとも、参院の議決が最後の関門とは限らない。憲法59条は、衆院が可決し参院が異なる議決をした法律案について、衆院で出席議員の3分の2以上の多数で再び可決すれば法律になると定める。全議員が出席した場合の3分の2は310人で、与党2会派の351人はこれを上回る。
与党は賛成の理由を語り、国民民主は財源を示すべきだ
2年で税率を戻すと明言した首相の判断は、社会保障の財源を守るものとして理解できる。玉木氏も、負担の軽減には賛成だと述べた。論点は減税の是非より、その説明の仕方にある。
本紙は、与党が賛成討論に立たなかった例が過去にどれほどあるかを確かめていない。自民党と維新の会の公式サイトの新着一覧にも、6日夜の時点で法案の採決に関する発表は見当たらなかった。討論に立たなくても、衆院で351人を持つ与党の多数は動かない。しかし、税率を2年間動かし、毎年の給付を新設する法案である。多数を持つ側が、なぜこの制度が必要なのかを本会議の場で語ることは、与党の職務ではないか。
支援金の線引きについて、政府は政令で定めるとして「お答えすることは困難」としてきた。ただ、公明党の発表のとおり「参考値」を答弁で示せるのであれば、参院の特別委員会で対象の範囲を幅で示すこともできるはずだ。納税者の立場に立てば、税率が8%へ戻る2029年4月に自分が受け取る側か外れる側かを、法律の成立前に知る機会があってよいのではないか。
同じ物差しは国民民主党にも当てはまる。要綱は住民税の減収を補填する措置を求めるが、減収額も財源も記していない。「恒久的な負担軽減」を掲げる対案を参院の交渉材料にするなら、毎年いくらの税収が減り、それをどう賄うのかを同じ場で示すべきではないか。
税率が戻る日に誰がいくら受け取るのかを語らないまま成立させるのであれば、与党は玉木氏の批判に答えたことにならない。
