横浜市が設置した第三者委員会は7月30日、山中竹春前市長の職員に対する言動を調べた調査報告書をまとめた。調査対象とした7つの事項のほとんどについて事実が存在したと認定し、「職員の尊厳を深く傷つけ、職場環境を悪化させる、決して看過できない重大なパワハラ行為があったと認定せざるを得ない」と結論づけた。山中氏は8月28日に市会へ辞職願を提出しており、後任を選ぶ市長選は10月4日告示、18日投開票で行われる。
職員の告発から市会の全会一致決議へ
報告書によると、発端は今年1月15日、当時の市総務局人事部長が記者会見を開き、「横浜市長・山中竹春氏による問題のある言動」と題する文書を配ったことだった。
市会は1月28日、「山中竹春市長による暴言や誹謗中傷に関する事案の真相究明を求める決議(議第13号)」を全会一致で可決した。決議文は、市長と前人事部長の主張に依然として隔たりがあると指摘したうえで、市長の影響が及ばない「公正・中立で専門性を有した第三者的な組織」による調査を強く要望した。
市はこれを受けて2月4日、神奈川県弁護士会に弁護士3人の推薦を依頼し、2月20日に調査要綱を定めた。第三者委員会は、組織の内部ではなく利害関係のない外部の専門家が事実関係を調べる仕組みで、今回は市の職員を事務局に入れず、職員アンケートの回答が市側に漏れない運用を取った。委員は、アンケートと情報提供窓口による情報収集に加え、関係者へのヒアリング、録音記録や電子メールなどの客観的な証拠の確認、市長室の視察を重ねた。
7事項のほとんどで事実を認定 認定できなかった点も明記
調査項目は7つある。市長室で怒鳴る・書類を投げつける行為、市長公舎での「切腹」発言、銃撃を思わせる仕草、人格を否定する発言と他者への侮辱、深夜・休日を問わない常態的な業務連絡と私用メールアドレス使用の指示、「市長室出入り禁止」の措置、そして人事権を背景とした職員支配である。
報告書は「事項1~7のほとんどの項目について事実が存在したと認定した」と記した。最も重く位置づけたのは人事権の行使で、「人事権を用いて職員を心理的に圧迫し、支配するとの意図に基づいた人事異動がなされてきたことが認定できる」としたうえで、「働く者の生殺与奪にかかわる人事権を不当な意図のもとに行使する行為は、パワハラの最たるものである」と評価した。
一方で、存否を認定するに至らなかった事実も明示している。2023年6月16日に市長が机を叩いたという事実、「切腹」発言が前人事部長のみに対して行われたという事実、写真展の開幕式典の会場での発言、情報公開を理由に私用メールアドレスの使用を指示した事実の4点である。山中氏は委員のヒアリングに対し、職員を下に見ているといった「認識はない」と答え、行政のやり方を変えたいという職務意識を語ったと報告書は記している。
「指針や要綱では限界」 条例による規律を提言
報告書は再発防止策として、市長ら特別職も対象に含めた「ハラスメント防止条例」の制定を求めた。内部規程にすぎない指針や要綱では特別職への法的強制力や処分に限界があるため、議会の議決に基づく条例として定め、首長をも対象に含める規範として位置づけるべきだとの考えを示した。
条例に盛り込むべき具体策としては、市長らからの被害を直接訴えられる独立した第三者通報窓口の設置、相談や調査への協力を理由とする不利益な取り扱いの禁止の明示、外部の弁護士らのみで構成する第三者委員会を市の附属機関として位置づけること、ハラスメントを行ったとされる者が市長本人である場合に条例に基づく権限の行使を副市長が代理すること、確認された事実を速やかに公表する仕組みなどを挙げた。
山中氏が辞職願を提出した8月28日、渡邊忠則市会議長は「今回のパワー・ハラスメント問題は、本市職員の士気や組織全体へ大きな影響を及ぼすとともに、市政に対する市民の信頼を著しく損なうものであり、極めて重大な問題であると認識しております」とのコメントを出した。
市選挙管理委員会によると、後任を選ぶ横浜市長選は10月4日告示、10月18日投開票で、投票は午前7時から午後8時まで、開票は同日午後9時15分に始まる。候補者情報と選挙公報は立候補届け出の受理後、10月5日以降に市のサイトへ掲載され、選挙公報は16日までに各世帯へ配られる予定となっている。
