農林水産省が11月6日に公表したスーパーの販売データで、10月26日から11月1日の週の米の平均価格は5キロ2,816円となり、前週より28円上がって11週続いた低下が止まった。1年前の同じ時期の4,235円より1,419円安い。この価格は、生産から小売までの費用を積み上げた「米のコスト指標」の5キロ2,816円と同額である。前週は指標を下回っており、5日の参院農林水産委員会では、新米が前年産より安く売られる価格の逆転と、2027年度から見直す水田政策の支援単価が問われた。

11週続いた低下が止まり5キロ2,816円

データは、全国約1,000店舗のスーパーのレジの販売記録(POSデータ)を農水省がまとめたものだ。直近3週の平均価格は2,821円、2,788円、2,816円と動いた。武部新農水相は11月2日の記者会見で、10月19日から25日の週について「11週連続の低下」と説明していた。直近の週はそこから28円戻したことになる。

内訳を見ると、販売量の85%を占める銘柄米は前週より30円高い2,841円で、1年前より37.4%安い。残り15%のブレンド米などは4円安い2,674円だった。5キロの袋を月に2袋買う世帯なら、1年前より月2,838円安く買える計算になる。

値下がりの経過を農水省の資料でたどると、平均価格は2025年6月以降に政府備蓄米の流通で一度下がり、同年9月以降は5キロ4,000円を上回った。2026年1月以降に下落へ転じ、9月7日の週に3,000円を下回っている。直近の週の販売量は前年同期より14.6%多い。農水省は新米の出回りなどを背景に挙げる。

店頭より前の段階の値下がりはさらに大きい。産地の集荷業者と卸売業者の間で決まる相対取引価格は、2026年産の9月の全銘柄平均が玄米60キロ2万1,293円で、前年同月の3万6,895円より42%安い。銘柄では、新潟の一般コシヒカリが2万2,261円、北海道のななつぼしが1万8,702円、青森のまっしぐらが1万1,854円だった。卸値の詳細は2026年産新米の卸値、60キロ2万1293円で前年同月比42%安 店頭は5キロ2952円にで報じている。

コスト指標は「最低取引価格」ではない

米のコスト指標は、食料システム法に基づく団体である公益社団法人米穀安定供給確保支援機構が2026年4月7日に公表した。農水省の説明では、生産、製造、加工、流通、販売の各段階で食料の持続的な供給に要する費用を示し、取引当事者の間の誠実な協議を促す役割を持つ。

段階 玄米60キロあたりの指標
生産 2万535円
集荷 2,539円
卸売 2,346円
小売 4,992円
米のコスト指標の段階別の内訳(2026年4月公表)出典: 農林水産省「米をめぐる状況について(米の流通の状況)」

4段階の合計は玄米1キロあたり506.9円で、玄米から精米にする歩留まりを0.9として換算すると精米5キロ2,816円になる。農水省の資料は、指標がコストの積み上げであり、利潤を含まず、取引価格を示すものではないと注記している。

武部農水相も11月2日の会見で「国が認めた最低取引価格ではありません」と述べた。価格は「民間の取引環境の中で決まるもの」とし、「生産者の再生産・再投資が可能で、かつ、消費者の皆様方に御理解を得られるような価格に落ち着いていくことが重要」と説明している。

店頭の平均が指標と並んだからといって、各段階の費用がそのまま賄われているとは限らない。卸売業者が買う段階の価格と比べると、生産と集荷の2段階の指標を足した額は60キロ2万3,074円で、9月の相対取引価格の平均2万1,293円はこれを1,781円下回る。ただし、9月の取引量は5万3,814トンと前年同月の34%で、新米の取引はまだ少ない。

参院委で問われた「価格の逆転」

立憲民主党が公表した質疑の概要によると、5日の委員会では徳永エリ氏(参院北海道選挙区)が質問に立った。徳永氏の所属する会派「立憲民主・無所属」は39人で、参院の所属議員合計247人のうち自民党の会派は101人である。委員会の会議録は7日時点で国会会議録検索に載っておらず、本紙は発言の原文を確認できていない。以下は同党の発表に基づく。

徳永氏は、2026年産の新米が前年産より安く売られる逆転が起き、生産者へ支払われる概算金が大幅に下がる一方で、卸売・流通業者が高値で仕入れた在庫を抱えていると指摘した。そのうえで、政府の需要見通しや備蓄米の放出、増産方針から需要に応じた生産への転換が市場と現場を混乱させたとして、政治の責任を問うた。武部農水相は安定供給体制の整備やセーフティネットによる支援を説明し、コスト指標については最低取引価格ではないと答えたうえで、「フードGメン」による調査などで制度の実効性を確保する考えを示した。徳永氏は「残念ながらお答えいただけなかった」と述べている。

逆転の背景は農水省の数字で確かめられる。2025年産の相対取引価格は、出回りから2026年9月までの平均が60キロ3万5,174円で、2026年産の2万1,287円より1万3,887円高い。高い値で取引された2025年産は、9月末の民間在庫に105万トン残っている。一方、概算金の全国の集計は本紙が開いた農水省の資料には無く、徳永氏の言う下げ幅は確かめられていない。

武部農水相が挙げたセーフティネットには2つの制度がある。青色申告者が対象の収入保険は、保険期間の収入が基準収入の9割を下回ると、下回った額の9割を上限に補てんする。認定農業者などが対象のナラシ対策は、販売収入の合計が標準的収入額を下回ったとき、差額の9割を補てんする。財源は農業者と国が1対3の割合で負担する。

在庫は最高水準、2027年度の水田政策の支援単価は未定

在庫は高い水準にある。9月末の民間在庫は255万トンと前年同月より58万トン多く、農水省は最も高い在庫水準としている。米の民間在庫、9月末255万トンで最高水準 新米の契約は前年の54%にとどまるで詳しく報じた。

10月30日の食糧部会で農水省が示した見通しでは、2028年6月末の民間在庫量は233万〜267万トンとなる。買戻し条件付きで売り渡した備蓄米31万トンのうち、残り10万トンを追加で買い戻した場合でも223万〜257万トンである。11月2日の会見で記者は適正水準を180万〜200万トンと述べて受け止めを尋ね、武部農水相は「供給量は十分に確保されている環境にある」と答えた。

備蓄米は2025年に59万トンを主食用に放出しており、農水省は適正水準の100万トン程度への回復を進める。武部農水相は10月30日の会見で、11月中旬に公表する10月25日現在の予想収穫量などを見定めたうえで、残り10万トンの対応を含めて回復を進めると説明した。買い戻しは民間在庫を減らす方向に働く。

2027年産の主食用米の生産見通しは693万トンで、会見では記者から、需給の緩みが続くとの懸念が産地などにあるとして受け止めを問う質問が出た。武部農水相は「二度と供給不足を招かないよう」余裕を持った見通しを基本とすると説明し、加工用、米粉用、輸出用などの需要開拓を進めたうえで「需要に応じた生産」を徹底すると繰り返した。

委員会では、2027年度からの新たな水田政策も取り上げられた。徳永氏は支援単価や基準単収の設定、天候不順による減収への対応を尋ね、小規模・家族経営や中山間地域の農家への支援を求めた。同党の概要によると、藤木眞也農水副大臣は、地域の実情を踏まえた基準単収の設定や、農業者に責任のない事情による減収への配慮などを検討していると答えた。

見直しの中心は、水田活用の直接支払交付金(水活)である。農水省の資料によると、主食用の米のうち業務用以外は従来どおり対象外とし、業務用米は当面支援を検討する。加工用、米粉用、輸出用などの米と麦、大豆、飼料作物は、作物ごとの単収の向上を支援する。単収とは10アールあたりの収量のことで、収量に応じた面積払いにする。効率的な施肥や高温に強い品種の導入といった取り組みが対象となり、地域の平均単収を基準に支援額を決める。基準を一定以上下回る場合は支援しない一方、災害などのやむを得ない単収減には配慮する。

支援の単価はまだ決まっていない。武部農水相は10月30日の会見で「現行水準以上を確保すべく、令和9年度予算の編成過程の中で決定していく」と述べた。支援単価は米の用途によらず一律にする方向である。11月2日の会見では、地方自治体や生産者団体の意見を聞きながら「早め早めの情報提供」を行うと話している。

値下がりと来年の作付け

店頭の値下がりは、高値が続いた2025年の水準から見れば家計の負担を軽くした。5キロで1,419円の差は、多くの世帯の買い物に現れる数字である。コスト指標は最低価格ではないとする農水相の説明も、指標の性格に沿っている。指標を下回ったことを理由に国が価格を支えれば、その費用は納税者と消費者が負う。価格を民間の取引に委ねる姿勢は妥当だ。

一方で、市場に委ねるなら、生産者が来年の作付けを判断する材料をそろえるのは農水省の職務である。見通しの在庫は最大で267万トンと高く、需要に応じた生産を求めるなら、主食用以外の米へ移る生産者がいくらの支援を受けられるのかが判断の中心になる。農水相は「早め早めの情報提供」を約束した。ならば、作付けを決める生産者の立場に立てば、支援単価と基準単収を確定する時期を明示し、予算の決定を待たずに示せる範囲の案を産地へ出すべきではないか。徳永氏が支援単価や基準単収、減収への対応を問うたのは、この点で妥当な質問である。政治の責任を問うだけで終わらせず、来年の生産者の判断に必要な数字を委員会の場で引き出すことが、与野党双方の職務になる。