政府は9月30日午後4時から20分間、首相官邸2階大ホールで「地域未来戦略に関する関係副大臣等会議」の第7回を開き、都道府県や市町村がつくった産業振興の計画を高市首相に報告した。新たに報告されたのは、茨城・神奈川・岩手・栃木・奈良・島根・愛媛の7県による「地域産業クラスター計画」10件と、北海道芽室町・鳥取県智頭町による「地場産業成長プラン」2件である。内閣官房が公表している計画は現在52件で、7月末から2か月で大きく増えた。

7県10件と2町2件が新たに報告

9月30日に報告された地域産業クラスター計画10件の内訳は、茨城県が「宇宙機器製造を核とする宇宙産業」と「脱炭素・資源循環型製品を核とする素材・エネルギー産業」の2件、神奈川県が「人工衛星・サービス分野を核とする航空宇宙産業」、岩手県が「半導体製造、半導体製造装置製造を核とした半導体関連産業」と「モビリティ産業への変革を目指す自動車関連産業」の2件、栃木県が「航空機製品を核とする航空宇宙産業」、奈良県が「創薬及びヘルスケアの成長分野を支える医薬品製造・製剤機器製造企業を核とする産業」、島根県が鉄鋼業や輸送用機械器具製造業など、愛媛県が次世代船舶や洋上風力発電関連部材などの海洋関連産業と、水産加工流通業・魚類養殖業・運輸業の2件。茨城・神奈川の2県は官邸に出席し、残る5県はオンラインで参加した。

地場産業成長プランは、北海道芽室町が農業と日高山脈襟裳十勝国立公園の自然景観・スキー場を生かした「食・観光」、鳥取県智頭町が木質バイオマスの熱を使った園芸という農林業分野を挙げた。

このほか、すでに過去の会議で報告した自治体が2件目以降としてつくった計画も参考資料として示された。地域産業クラスター計画は宮城・千葉・新潟・鳥取・福岡・宮崎の6県で8件、地場産業成長プランは静岡県と静岡市・浜松市が共同でつくった茶産業、鳥取県のきのこ類とそれに由来する繊維の2件である。

高市首相は会議のまとめで「宇宙産業クラスターから農業、観光クラスターまで、各地域の特色を活かした、大変意欲的な『地域産業クラスター計画』や『地場産業成長プラン』を御説明いただき、本当にありがとうございました」と述べ、「地域の景色を一変させよう、地方を一変させよう」という自治体の意欲を「全力で応援をしてまいります」と語った。

「3類型」とは 規模と主導者で分ける

地域未来戦略は、地域の産業振興の計画を性格の違いでA・B・Cの3つに分けている。この区分は2026年6月24日に決めた「地域未来戦略の政策パッケージ」で整理されたものだ。

A「戦略産業クラスター計画」は、政府の成長戦略が掲げる17の戦略分野に関連する企業の大規模投資を起点とするもので、計画をつくるのは国である。ブロックごとに地方経済産業局が中心となって有識者検討会で素案をまとめ、都道府県が候補のプロジェクトを国へ提案する形をとる。道路や工業用水といったインフラ整備を国が先行して進め、大規模投資を呼び込む狙いがある。

B「地域産業クラスター計画」は、都道府県知事らが主導し、都道府県が主体となってクラスターをつくる。海外への輸出で外貨を稼げる産業や、国内市場で上位シェアを狙える産業分野を特定して投資を促す。9月30日に報告された7県の計画はこの類型にあたる。

C「地場産業成長プラン」は、市町村または都道府県が、地域に根ざす農林水産業・観光業・スポーツ産業・伝統的工芸品製造業・部品加工業などの成長を図る。個々の規模はA・Bより小さくても、面的に地域経済を支える数多くの地場産業の底上げをめざす類型である。地域の担い手不足への対応では、人口が急減する地域で働き手を無期雇用して派遣する人口が急減する地域の担い手を雇う「特定地域づくり事業協同組合」、全国146組合にといった仕組みも並行して動いている。

3類型に共通する支援策として、設備投資の促進、政府系金融機関による投資・融資、地域未来交付金などによるインフラ整備、国家戦略特区制度を使った規制・制度改革、産業人材の育成の5つが挙げられている。

公表済みは52件 7月末から2か月で急増

内閣官房が公表している計画は、A14件・B31件・C7件の計52件である。A類型は半導体が北海道・東北(岩手県)・中国(広島県)・九州7県の4件、洋上風力が北海道・東北3県・九州2県の3件、ロケットと射場が北海道・和歌山県の2件、ほかに千葉県成田空港周辺の民間航空機整備、大阪府・兵庫県の空飛ぶクルマとバイオ・先端医療、瀬戸内7県と九州5県の次世代船舶が並ぶ。

計画数の増え方は急である。7月31日の第5回会議での報告はA13件・B6件・C4件、8月28日の第6回ではA1件・B25件・C3件だった。この2回を足した数字が、現在公表されている52件と一致する。9月30日に報告された12件はまだ一覧に載っておらず、今後さらに増える。

新潟県・新潟市のアニメーション制作を核とするコンテンツ産業のように、製造業以外の計画も出ている。地域のコンテンツ産業をめぐっては全国知事会、コンテンツ産業の新チームが初会合 41都道府県が参加 ロケ誘致の支援や海外クルーの入国手続きを課題に 国への提言めざすも動いており、自治体側から国への働きかけが続いている。

計画期間は2030年度まで 377施策にKPI

地域未来戦略は2026年7月21日に閣議決定された。前年の令和7年12月23日に閣議決定していた「地方創生に関する総合戦略」を変更する形をとっており、計画期間は2030年度までである。その土台となる地域未来戦略本部は、2025年11月11日の閣議決定で内閣に置かれた。

戦略は「強い地域経済の構築」「豊かな生活環境の実現」「選ばれる地方の実現」の3本柱で構成される。盛り込まれた施策は、強い地域経済が170、豊かな生活環境が121、選ばれる地方が63、横断的施策が23で、重複を含めて合計377にのぼる。進捗を客観的につかめるKPI(達成度を測る指標)を設定し、PDCAサイクルを徹底するとしている。

今後の進め方について、政府はB・C両計画は月1回程度の頻度で知事や市長らが副大臣会議などで報告する方針を示した。A類型の計画づくりが国主導で一巡したのに対し、自治体が自らつくるB・C両類型は、毎月の報告を積み上げながら数を増やしていく段階に入る。