国民民主党の玉木雄一郎代表は10月6日の定例記者会見で、沖縄で起きた米兵による事件について「厳重に抗議をしたいと思いますし、憤りを禁じえません」と述べ、日米地位協定の見直しを求めた。党が公表した会見記録によると、玉木氏は「米軍側にも捜査への全面協力を求めたい」とも述べている。
「公務外」と「公務中」で分かれる第一次裁判権
玉木氏は会見の冒頭発言で「今回は公務外ということでですが、日本の当局が逮捕し、司法手続きにも入りますが日米地位協定もございますので、公務であった場合は逮捕もできない、裁判手続きにも入れないとあります」と述べた。そのうえで「従来から、地位協定の見直しについては不断の努力をやっていくべきだというのが私たち国民民主党の立場でもあります」と語り、「広い意味での沖縄の基地負担の軽減ということからも、地位協定の見直しについても、引き続きアメリカ側とも緊密にやり取りをしていくべきだ」と続けた。
玉木氏が挙げた公務中と公務外の区別は、日米地位協定第17条が定めている。外務省が公表する協定全文によると、第17条3(a)は「もつぱら合衆国の財産若しくは安全のみに対する罪」と「公務執行中の作為又は不作為から生ずる罪」について、米国の軍当局が米軍構成員・軍属に対して裁判権を行使する第一次の権利を持つと規定する。同3(b)は「その他の罪」については日本の当局が第一次の権利を持つと定めている。第一次裁判権とは、どちらの国が先に裁判にかけるかという優先順位のことで、同3(c)は、第一次の権利を持つ国が権利を行使しないと決めたときは速やかに他方へ通告し、他方から放棄の要請があれば好意的考慮を払うと定めている。
起訴前の身柄引き渡し、1995年の合意で道が開いた
公務外の事件で日本が裁判権を行使する場合も、被疑者の身柄をいつ日本側が預かれるかは協定が別に定めている。第17条5(c)は「日本国が裁判権を行使すべき合衆国軍隊の構成員又は軍属たる被疑者の拘禁は、その者の身柄が合衆国の手中にあるときは、日本国により公訴が提起されるまでの間、合衆国が引き続き行うものとする」と規定する。つまり米側が先に身柄を確保していれば、起訴までは米側が拘禁を続けるのが協定上の原則だ。
この原則に例外を設けたのが、1995年10月の日米合同委員会合意である。外務省が公表する合意文は「合衆国は、殺人又は強姦という凶悪な犯罪の特定の場合に日本国が行うことがある被疑者の起訴前の拘禁の移転についてのいかなる要請に対しても好意的な考慮を払う」とし、日本側は重大な関心を持つ場合に合同委員会へ移転の要請を提起すると定めている。外務省の解説によると、この合意は1995年に沖縄県で発生した少女暴行事件を受けた日米協議の結果で、以後6件の事件で起訴前の身柄引き渡しが要請され、5件で実現した。応じられなかったのは2002年11月に沖縄県で発生した婦女暴行未遂・器物損壊事件で、被疑者の身柄は起訴後に日本側へ引き渡された。2004年4月には、米軍司令部の代表者が日本側当局による被疑者の取り調べに同席できるようにする合同委員会合意も作られている。
政府は協定本文ではなく「運用の改善」で対応
地位協定をめぐる政府の立場は、本文の改定ではなく運用の改善と合同委員会合意の積み重ねに置かれている。外務省は「刑事裁判手続に関する運用の改善」のページで、派遣国が接受国の起訴時まで被疑者を拘禁するという考え方は北大西洋条約機構(NATO)の地位協定も採っていると説明し、米韓地位協定では12種類の凶悪な犯罪は韓国側の起訴時まで、それ以外の犯罪は判決確定後まで米側が拘禁できると記している。ドイツに適用されるボン補足協定では判決確定まで派遣国が拘禁できるとも紹介し、「日米地位協定の規定は、NATO地位協定と並んで受け入れ国にとって最も有利なものとなっています」と結論づけている。2011年11月には、軍属の公務中の犯罪について、米側が刑事裁判にかけない場合に日本側が裁判権の行使に同意を求められる枠組みも合同委員会で合意された。
協定の運用そのものは今も日米合同委員会を通じて動いている。直近では、嘉手納の米軍機、10月19日から築城基地へ訓練移転 築城への移転は12回目 日米合同委員会が土地約2万9000平方メートルの限定使用を9月17日に承認のとおり、地位協定第2条第4項(b)に基づく施設の限定使用が9月17日に承認されている。玉木氏は沖縄の基地負担をめぐり、国民民主・玉木代表、沖縄振興予算は「3000億円台の確保が必要」 概算要求2897億円との差は103億円でも政府・与党への要請を表明していた。
国民民主党の議席は衆院28、参院25
協定の改定には米国との交渉が必要で、国会の議席が直接その是非を決めるわけではないが、要求の重みは議席数に表れる。衆議院の会派別所属議員数(令和8年9月28日現在)によると、「国民民主党・無所属クラブ」は465議席のうち28議席で、自民党・無所属の会の315議席、中道の47議席、日本維新の会の36議席に次ぐ4番目の規模だ。参議院の会派別所属議員数(令和8年10月7日現在)では「国民民主党・新緑風会」が25議席で、自由民主党・無所属の会の101議席、立憲民主・無所属の39議席に次ぐ。
事件そのものの日時や容疑、逮捕の主体については、沖縄県警察と沖縄県の公表資料では確認できていない。本記事が記した事件の性格づけは、いずれも玉木氏の会見での発言である。玉木氏は「いずれにしても今回のことは二度とあってはならない。極めて許しがたい、残忍な事件であります」と述べ、米軍側への捜査協力と再発防止の要求を続ける考えを示した。
