第2次高市改造内閣の発足に伴い総務相を退いた林芳正氏が9月17日、臨時閣議後の記者会見で退任のあいさつをした。林氏は昨年10月21日の着任から約11か月の在任中に26道府県を訪問したと述べ、地域を回って聞いた声を施策に反映させる「サイクルを回す」ことに力を注いだと振り返った。後任の総務相には藤井比早之氏が就任している。

「本省で説明を聞くよりも、色が付いた奥行きのある声」

林氏は冒頭発言で「国民生活に広く密接な関わりのある幅広い行政分野を所掌する総務省において、地域の現場を知って、様々な声を聴きながら、施策を進めていく、そのサイクルを回していくことが重要、という信念のもとで」26道府県を訪問したと説明した。質疑では「実際にこの本省で説明を聞くよりも、色が付いた奥行きのある現場の声を聞くことができた」と述べている。

総務省は地方行財政、選挙、消防、情報通信、放送、郵便、行政相談、行政評価、統計と、所管が広い。林氏は在任中の実績として、令和8年度に必要な予算の確保に加え、6本の法案とNHK予算を成立させたことを挙げた。

印象に残った出来事としては、在任中に各地で起きた自然災害への対処を挙げた。令和8年熊本地震では、緊急消防援助隊の派遣による救助、通信環境の確保、被災自治体への職員の応援派遣、特別行政相談活動などに「できることは何でもやるという気持ちで」取り組んだと語った。

引き継ぎは食料品減税の地方協議と「ふるさと住民登録」

やり残した案件を問われると、林氏は現に動いている案件として2つを挙げた。

1つは、飲食料品の消費税率の臨時的な引き下げと、就業者負担軽減支援金の導入に関する大綱である。9月15日に閣議決定されたばかりで、地方団体との協議はこれからだ。消費税は一部が地方の財源になるため、税率を下げれば自治体の収入にも影響する。林氏は「地方団体と丁寧な協議をこれからも進めていく」段階だったと述べた。

もう1つが、ふるさと住民登録制度である。住民票を置いていない自治体にアプリから登録し、その地域の情報を受け取ったり担い手として関わったりできるようにする仕組みで、総務省は今年3月27日、モデル事業の対象自治体を決めている。公募には161団体が応じ、都道府県と市町村が組む連携モデルとして7道県、個別の市町村モデルとして21市町村が選ばれた。林氏は「開始に向けて準備を進めているところ」とし、新大臣に引き継ぐと述べた。

人口減少への向き合い方については、高知県を訪れた際に知事から聞いたという「スマートシュリンク」という言葉を挙げた。人口が当面減っていく前提に立ちつつ、生き生きとした地域社会を維持するにはどうするかを考える発想だと説明し、概算要求で打ち出した施策も使いながら進める形が「一つの在り方ではないか」と述べた。

人事と総裁選については答えず

会見では、林氏が高市首相に続投を希望していたとする報道についても質問が出た。林氏は「人事に関することは、これまでも申し上げてまいりませんでしたので、申し上げることは差し控えさせていただきたい」と述べた。ポストの打診を断ったのではなく留任の要請がなかったという理解でよいかと重ねて問われても、「そのことも含めて、人事に関することはお答えを差し控えたい」と答えるにとどめた。

来年の自民党総裁選にどう向き合うか、立候補の考えはあるかを問う質問には、「総務大臣として今ここに来ておりますので、差し控えたい」と述べた。閣外に出た後の活動については「今後も地域の声に丁寧に耳を傾けつつ、地域の課題解決に資する取組に貢献したい」と繰り返した。

林氏は農相や外相も務めた。訪問していない都道府県が20余り残っていることに触れられると、これまでは総務相として視察の形で訪れてきたとしたうえで、「今後は一議員ということでいろんな活動、先ほど申し上げたような考え方に沿って何ができるかしっかりと考えていきたい」と語った。