米国政府から防衛装備品を買う有償援助(FMS)の調達額が、2023年度に1兆3867億円となり、2018年度の4078億円から3倍以上に増えた。会計検査院が参議院の要請を受けて検査し、結果をまとめた。代金はドル建てで、円安の影響により2023〜25年度の支払額は契約額などより約3000億円増える見込みだという。報告は今年1月16日に参議院議長へ提出され、検査院が11月5日に内閣へ送付した令和7年度決算検査報告で特徴的な案件の一つに掲げられた。

米国政府と直接結ぶ取引、価格は見積り

FMSは Foreign Military Sales の略で、米国が安全保障政策の一環として、同盟国などに防衛装備品を有償で提供する取引である。日本は日米相互防衛援助協定に基づいて調達している。防衛省の調達方法には、国内企業から買う国内調達、商社などを通す一般輸入調達もある。防衛省は、機密性が高い装備や米国でしか製造できない高性能の装備を買える点、共同購入で価格の低減が期待できる点をFMSの特徴に挙げている。

一方で、民間との売買とは条件が異なる。価格は見積りで、出荷の時期も予定にとどまる。支払いは原則として前払いで、提供の完了後に精算し、余った分が返還される。売却価格が一定額以上の場合、米大統領は議会に証明書を提出する。日本向けの基準は主要な防衛装備品で2500万ドル以上、それ以外で1億ドル以上である。

検査の対象は2018〜23年度の調達で、一部は2024年度以降を含む。検査院がFMSを取り上げるのは初めてではなく、2018年6月にも参議院の要請を受けて検査し、2019年10月に報告した。今回は2024年6月10日の要請に基づき、防衛省の内部部局や各自衛隊の補給処などで延べ562人日の実地検査を行い、米国の関係機関からも説明を受けた。決算検査報告の全体は令和7年度決算検査報告、指摘金額1445億円で前年度の2.7倍 中小機構の案件が約6割で伝えた。

2023年度に急増、F35関係は1兆円を超える

調達額は2018年度から2022年度まで2500億〜7000億円ほどで増減していたが、2023年度に大きく増えた。2022年12月に決まった防衛力整備計画で、2023〜27年度の防衛力整備の水準が43兆円程度とされた時期にあたる。2023年度の1兆3867億円のうち、防衛装備庁が担う中央調達が1兆3686億円で98.6%を占める。自衛隊別では航空自衛隊が7875億円で56.7%だった。

FMS調達額の推移(契約ベース)(億円)

05,00010,00015,0004,0782018年度6,9722019年度4,2812020年度2,5282021年度3,7922022年度13,8672023年度
当初契約の額。契約年度の支出官レートで円に換算出典: 会計検査院「有償援助(FMS)による防衛装備品等の調達の状況について」別図表5
数値で見る(単位: 億円)
項目億円
2018年度4,078
2019年度6,972
2020年度4,281
2021年度2,528
2022年度3,792
2023年度13,867

もっとも、FMSだけが膨らんだわけではない。防衛装備品の調達全体も2022年度の2兆8275億円から2023年度は7兆1825億円に増えた。全体に占めるFMSの割合は、別の統計の集計で2023年度が19.3%で、2019年度の26.8%を下回る。

2018〜23年度の調達合計は3兆5520億円で、上位10件で64.5%を占めた。最大は戦闘機F35A/Bの8041億円で、F35Aの1994億円と合わせると1兆35億円になる。合計の約28%がF35関係という計算だ。続いてイージス・システム構成品などの2651億円、F15の能力向上の2071億円が並ぶ。早期警戒機E2Dの2件は合わせて3828億円で、トマホークも1303億円が入った。

米国防安全保障協力庁の公表資料を基にした検査院の集計によると、2019〜23米会計年度のFMS調達額で、日本は約214億5000万ドルで4位だった。1位はオーストラリアの約230億6000万ドルで、台湾、サウジアラビアが続く。

円安で支払いが増える仕組み

為替の影響が出るのは、契約と支払いで換算の時点が異なるためだ。FMSの契約額はドル建ての額を契約年度の支出官レートで円に換算して決まるが、支払額は支払年度のレートで換算する。支出官レートは国の支払いに使う換算率で、2018〜22年度は1ドル110円前後だった。2023年度に137円、2024年度に139円、2025年度に150円と円安の方向に動いた。

複数年度にわたる契約で翌年度以降に支払う後年度負担額は、中央調達で2022年度まで1兆円前後だった。2023年度はその約2倍の1兆8947億円に増えた。検査院は、支払額が将来の為替の動きで大きく変わる可能性があると指摘している。

契約の区分 2023〜25年度の支払いの増加
2019年度の契約(長期契約を除く) 297億円
2019年度のE2Dの長期契約 183億円
2020年度以降の契約(試算) 2530億円
計 約3000億円
為替の影響による支払額の増加(契約額などとの差)出典: 会計検査院「有償援助(FMS)による防衛装備品等の調達の状況について」

過去の数字を見ると、向きは為替で変わる。2018年度の契約は、支払年度のレートが契約時より円高だったため、支払額が契約額より121億円少なかった。

防衛省は、この増加分も含めて43兆円程度の規模を保つため、効率化と合理化を進めるとしている。省全体の縮減額は2023年度予算で約2572億円、2024年度で約2764億円、2025年度で約2653億円だった。ただ検査院によると、そのうちFMSに関わる取り組みの状況と縮減額を一元的に把握する体制が無かった。検査院が各自衛隊などに確認できた範囲では、FMSの縮減は航空自衛隊の337億円と海上自衛隊の12億円の計2件349億円だった。防衛省は、為替による増加分のすべてをFMSの効率化で賄うとはしていない。

調達全体の価格については防衛装備品の取得価格、3年で5〜7割上昇 哨戒艦は1隻89億円から143億円に 計画の為替前提は1ドル108円、今年7月は157〜163円台で、翌年度以降の負担については防衛費、翌年度以降に払う分が16兆8274億円 今年度予算8兆8093億円の1.9倍 今年度の契約で今年度使う経費は1兆8798億円で伝えた。

未精算は2兆3538億円、届かない装備も

前払いした代金のうち、まだ精算が済んでいない額も増えた。納入期限を過ぎた「未納入」は大幅に減ったが、納期が来ていない契約の未精算額が約2倍になり、中央調達の未精算額の合計は2兆3538億円に達した。

区分 2018年度末 2023年度末
未納入 99件・205億円 18件・6億円
納期未到来 519件・1兆865億円 590件・2兆2715億円
未完了の全体 1064件・1兆1837億円 1059件・2兆3538億円
FMS中央調達の未完了の契約と未精算額出典: 会計検査院「有償援助(FMS)による防衛装備品等の調達の状況(要請)」。全体には提供後に精算が終わっていない契約を含む

納期未到来といっても、計画どおりとは限らない。2018年度末に納期未到来だった519件のうち118件、1兆1408億円は、品目の追加や出荷予定の変更で5年後も同じ区分に残っていた。検査院はE2Dの整備器材の例を挙げた。2015〜18年度に結んだ4件で、当初の出荷予定は2019年4月から2020年8月だったが、製造会社の遅れなどで2024年6月から2026年4月に変わった。納入先の航空自衛隊三沢基地はE2Dの整備に使えず、機数が減りつつあるE2Cの器材を回して運用への影響を抑えていた。

F35A/Bの機体などの契約では、2024年度末までに出荷予定時期が来た248の品目(ライン)のうち、85の受領が完了していなかった。部品の調達でも、2018年度に航空自衛隊が最優先の「特別緊急」で発注した分のうち、発注方法によって22.5%と10.3%が取り消されていた。主な理由は、部品の枯渇など米国政府が対応できない事情だという。

提供が済んだ後の精算にも時間がかかる。2023年度末に最終計算書を受け取っていない420件(789億円)のうち、提供の完了から24か月を超えたものが283件(356億円)あった。120か月、つまり10年を超えたものも25件(56億円)ある。

価格差は縮小、検査院は一元的な把握を要求

F35の1機あたりの単価は、日本が米国を上回ってきた。F35Aの差はロット9(生産の区切り)の約5610万ドルが最大で、日本の単価はその後下がり、ロット16では日本の約8250万ドル、米国の約8190万ドルとなり、差は約60万ドルまで縮んだ。航空自衛隊は、日本企業が加わる最終組立・検査の作業の習熟などが変動の主な要因だと説明している。ただ、ロット19以降の日本の単価は部材費や人件費の高騰で9400万ドルを超えた。F35Bの差はロット16と17で約900万ドルだった。

負担を減らす取り組みも進んだ。防衛省は2023年4月、米側と品質管理の枠組みに署名し、品質管理費用の免除を受けることになった。免除額は防衛省の試算で2023年度が29億7856万円、2024年度が27億3801万円である。最終計算書の送付前に余剰金を受け取る手続きも2021年3月に初めて実施し、2024年8月までに198億円が返還された。一方、契約管理・契約監査の費用は、米国が1987年以降どの国とも互恵の協定を結んでおらず、免除は見込めないという。

検査院は所見で、2024年度以降もFMSの調達額は大きな規模が続くと見込んだ。そのうえで防衛省に対し、FMSに関わる効率化の状況を一元的に把握すること、部隊の運用に支障が出ないよう米国政府と出荷の調整を続けること、精算を促すことなどを求めた。緊急度の高い部品が届かない場合には、他の調達方法の検討も挙げた。

予算の面でも高い水準は続く。令和8年版防衛白書によると、FMSの予算額(契約ベース)は2022年度の3797億円から2023年度に1兆4768億円へ増え、2024年度は9316億円、2025年度は1兆76億円、2026年度は8741億円である。2026年度の内訳には、F35Aの1493億円、空中給油・輸送機KC46Aの877億円などがある。

防衛省は白書で、納入と精算の遅れを「様々な課題があることは事実」としたうえで、FMSを防衛力の強化に「非常に重要」と位置づけた。今年1月の日米の第10回協議では、未納入額と未精算額の縮減に取り組むことを確認し、より詳細な価格情報の提供を重ねて要請したと記している。

報告の数字は2023年度までの契約と2025年度までの支払いが中心で、2026年度以降の為替の影響額は示されていない。

米国でしか製造できない装備は他の調達で置き換えられず、調達額が増えたこと自体は日本の防衛力の強化に沿う。問題は、払った金額に見合う装備が予定どおりに届くかどうかである。中央調達の未精算額は2兆3538億円に上り、三沢基地では予定どおりに届かなかった器材の代わりにE2Cの器材を回していた。円安による約3000億円の増加に対し、検査院が確認できたFMSの縮減は349億円で、その1割余りだった。

為替は防衛省には動かせないが、納入と精算の管理、効率化の把握は日本側で進められる。買った装備が部隊に届いて初めて、国民の負担は防衛力になる。防衛省はFMSの効率化の状況を一元的に把握する体制を、いつ、どのような形で示すのか。その答えが、増額した防衛費の使い方を判断する材料になる。