国土交通省は令和8年版の国土交通白書を公表した。建設後50年以上が経過する道路橋の割合は、2025年3月時点の約42%から、2030年3月に約54%、2040年3月には約75%へと上がる見通しだ。高度経済成長期以降に集中して造られた施設が、そろって更新の時期を迎える。
白書は「経済成長を牽引するハード・ソフトのインフラ」をテーマに、道路や港湾といった施設だけでなく、民間が担う交通サービスまで含めてインフラをとらえ、生産性を上げるための課題を整理した。
6分野すべてで割合が増える 水道管路は約10%から約40%へ
白書が割合を示したのは6分野だ。2025年3月時点と2040年3月の見通しを並べると、道路橋(橋長2メートル以上、約73万橋)が約42%から約75%、トンネル(約1万2千本)が約28%から約52%、河川管理施設(約2万8千施設)が約26%から約64%、港湾施設(約2万5千施設)が約29%から約64%になる。
水道管路(約75万キロメートル)は約10%から約40%、下水道管渠(約50万キロメートル)は約7%から約34%で、いまの割合は低いが4〜5倍に膨らむ。水道管路と下水道管渠の現状値だけは2024年3月時点のものだ。
「50年」は寿命ではなく、点検と修繕が重くなる目安
50年を超えたからといって、その施設がただちに使えなくなるわけではない。50年は、点検や修繕の必要性が高まり、管理にかかる手間と費用が増えていく一つの区切りとして使われている。白書が問題にしているのは、その区切りを超える施設が同時期に大量に生まれることだ。
費用の見通しもある。国交省が2018年に行った推計では、道路、河川・ダム、砂防、海岸、下水道、港湾、空港、航路標識、公園、公営住宅、官庁施設、観測施設の12分野を対象に、先回りして直す予防保全を前提としたうえで、維持管理・更新費は20年後も30年後も最大で約1.3倍に増える見込みとされた。白書は、予防保全に切り替えてもなお増加は避けられないとしている。
限られた予算のうち既存の施設を維持・更新する分の割合が年々増えれば、新しい施設への投資が抑えられる。白書はこれを「インフラが成長のボトルネックとなる懸念」と並ぶ課題として挙げた。維持にかかる費用を誰が負担するかは、利用者の意識も変わりつつある。内閣府の世論調査では、高速道路の維持費「通行料金でまかなうべき」が66.4% 5年前の62.9%から増加 内閣府の道路世論調査という結果が出ている。
予防保全への転換 複数の自治体をまとめて管理する「群マネ」
予防保全とは、不具合が出てから直すのではなく、定期的に点検・診断を行い、機能や性能に支障が出る前に修繕することをいう。2025年6月6日に閣議決定された第1次国土強靱化実施中期計画でも「予防保全型メンテナンスへの早期転換」が掲げられている。事後保全と比べて全体の費用が抑えられ、支出の山谷もならせるというのが国の説明だ。
課題は担い手だ。市町村では土木や建築を専門とする技術系職員が限られる。そこで国交省は、複数の自治体のインフラや複数分野のインフラをひとまとめの「群」として扱い、効率的に管理する地域インフラ群再生戦略マネジメント(群マネ)を進めている。2025年10月には全国展開に向けて「群マネの手引きVer.1」を公表した。人が入りにくい下水道管の内部をドローンで点検するなど、新技術の導入も併せて進める。地方の担い手不足は交通分野でも共通の課題で、政府、令和8年版「交通政策白書」を閣議決定 地方の「交通空白」解消が焦点 自動運転や公共ライドシェア活用 全国2500か所を対象にでも同じ構図が示されている。
事業者アンケートでも「老朽化インフラの更新」が上位
白書は、全国の製造業・建設業・運輸業などの民間事業者1163社に2026年2〜3月にウェブで実施したアンケートも載せた。インフラの整備が地域経済にどの程度貢献しているかを尋ねたところ、「非常に貢献している」と「貢献している」の合計が8割を超えた。
生産性を上げるために重要だと考える施策としては、「生産性が高い基幹インフラ等の拡充・強化」と並んで「老朽化インフラの更新に合わせた経済的価値創出」を挙げる回答が多かった。古くなった施設をただ元通りに直すのではなく、造り替えに合わせて新しい価値を生み出せるかどうかが問われている。
