EUの統計機関ユーロスタットは10月2日、ユーロ圏の9月の消費者物価上昇率が前年同月比3.8%になるとの速報値を公表した。8月の3.2%から上がり、1年前の2025年9月は2.2%だった。3.8%は2023年10月以降のどの月よりも高く、これを上回っていたのは2023年9月の4.3%である。

ユーロスタットが使うのはHICP(消費者物価の調和指数)という指標で、EU加盟国が同じ定義・同じ方法で作る。国ごとの物価指数をそのまま足し合わせると比べられないため、品目の範囲や算出の仕方をそろえたうえで各国の消費規模に応じて加重平均する。日本の総務省が作る消費者物価指数に相当するものを、EU全体で横に並べられる形にした指標だと考えればよい。

上がったのはエネルギー 食品と工業製品は1%台

品目を4つに分けると、上げているのはエネルギーに偏っている。エネルギーは前年同月比18.8%の上昇で、8月の14.3%からさらに加速した。前月比でも3.9%上がっている。1年前の2025年9月はマイナス0.4%、つまり前年より安くなっていた品目だった。

残りの3つは落ち着いている。サービスは3.2%(8月は3.0%)、食品・酒・たばこは1.4%(同1.1%)、エネルギー以外の工業製品は1.1%(同1.2%)だった。エネルギーを除いた上昇率は2.3%、エネルギーと食品・酒・たばこを除くと2.5%にとどまる。

エネルギーが物価指数全体に占める重みは9.03%で、サービスの46.82%、工業製品の25.22%、食品・酒・たばこの18.94%より小さい。それでも全体を3.2%から3.8%まで押し上げたのは、上昇率そのものがサービスの約6倍、エネルギー以外の工業製品の約17倍に達しているためである。食品側では生鮮食品が4.0%(8月は2.7%)と伸びた一方、加工食品・酒・たばこは0.4%(同0.5%)まで鈍っている。品目をさらに細かく見た8月時点の内訳はEUのパッケージ旅行代、8月は3.2%上昇でインフレ率と同じ 航空運賃は0.4%下落 日本の外国パック旅行費は9.7%上昇で物価全体の5倍で扱っている。

ユーロ圏21か国の国別では、リトアニアの6.1%が最も高く、ブルガリア5.6%、キプロスとルクセンブルクが5.2%、ギリシャ5.1%、スペイン5.0%と続く。最も低いのはマルタの2.4%で、フィンランド2.6%、ラトビア2.9%が並ぶ。経済規模の大きい国ではドイツ3.3%、フランス3.4%、イタリア4.1%だった。なお2026年1月からブルガリアがユーロを導入したため、ユーロ圏は20か国から21か国に増えている。ユーロスタットは加盟国の変更を連鎖指数の方式で織り込んでおり、2025年12月まではブルガリアを含まない20か国、2026年1月以降は21か国の数値になる。

1月の1.7%から3.8%へ エネルギーが3月にプラスへ転じた

2026年の推移を並べると、1月1.7%、2月1.9%、3月2.6%、4月3.0%、5月3.2%、6月2.8%、7月2.9%、8月3.2%、9月3.8%となる。年初は2%を下回っていたものが、9か月で2倍以上になった。

転換点はエネルギーである。エネルギーの上昇率は1月がマイナス4.0%、2月がマイナス3.1%と前年より安い状態が続いていたが、3月に5.1%へ跳ね、4月と5月は10.8%、6月8.7%、7月10.3%、8月14.3%、そして9月18.8%と水準を上げてきた。エネルギー以外を除いた上昇率が年初から2%台前半で動いていないことと合わせると、今回の物価上昇はエネルギー価格の変動がそのまま出たものだと読める。

ECBは9月に利上げ 「中東の紛争がインフレ圧力を生み続けている」

欧州中央銀行(ECB)は9月10日、3つの政策金利をいずれも0.25%引き上げると決めた。金融政策の基準となる預金ファシリティ金利は2.25%から2.50%へ、主要リファイナンス金利は2.40%から2.65%へ、限界貸付ファシリティ金利は2.65%から2.90%へ上がり、9月16日から適用された。ECBは2026年6月17日にも預金ファシリティ金利を2.00%から2.25%へ上げており、今年2回目の引き上げになる。

決定文でECBは「中東の紛争がインフレ圧力を生み続けており、物価上昇率は相当な期間、目標を大きく上回り続ける見込みだ」と述べた。ECBの物価目標は中期的に2%で、3.8%はその2倍近い水準にあたる。ECBのスタッフ見通しは消費者物価上昇率の年平均を2026年3.0%、2027年2.5%、2028年2.1%と置き、6月時点に比べて2027年と2028年を上方修正した。一方で成長率は2026年0.9%、2027年1.4%、2028年1.5%へ引き上げている。ECBは「あらかじめ特定の金利の道筋を約束はしない」として、会合ごとにデータを見て判断する姿勢を示した。

金利を上げる動きは欧州だけではない。米連邦準備制度理事会(FRB)も9月に利上げに踏み切っており、その経緯はFRB、3年2か月ぶり利上げ 政策金利を年3.75〜4.00%へ 12人全会一致、前回反対の3人が求めた水準ににまとめている。

日本は8月が1.9% ホルムズ海峡の阻害は「半年以上」

日本の物価はユーロ圏より低い水準にある。総務省が9月18日に公表した8月分の消費者物価指数(2025年=100)は、総合が102.2で前年同月比1.9%の上昇、生鮮食品を除く総合が102.0で1.7%の上昇、生鮮食品及びエネルギーを除く総合が102.5で1.9%の上昇だった。同じ8月のユーロ圏の3.2%と比べると、上昇率は半分あまりである。日本の内訳は8月の消費者物価、生鮮食品を除く上昇率は1.7%に鈍化 電気代とガソリンが前年より安く 一方でキャベツは45.0%高で詳しく扱っている。

ECBが名指しした中東情勢について、日本政府も影響の大きさを認めている。茂木敏充外相は10月2日、来日したカタールのムハンマド・ビン・アブドルラフマン・アール・サーニ首相兼外相と40分間会談し、ホルムズ海峡における自由で安全な航行が半年以上にわたり阻害されていることが世界経済に大きな影響を与えていると指摘した。茂木外相は、2026年2月に結んだ日本とカタールのLNG長期契約に触れつつ、イランの攻撃でカタールのLNG関連施設が被害を受け、輸出に深刻な影響が続いていることへの強い懸念を伝えている。日本はホルムズ海峡とバブ・エル・マンデブ海峡の安定回復に向けた外交努力を重ねるとし、湾岸諸国の経済・エネルギー強靱化のための包括的な協力計画をまとめていることも伝えた。

今回の3.8%は速報値で、確定値を含む9月の全データは10月16日に公表される。10月分の速報値の公表は11月4日の予定である。