サプリメントなどに「亜鉛は、味覚を正常に保つのを助ける栄養素です」といった表示ができる栄養機能食品について、そのルールを定めた食品表示基準の別表第11が10月1日に改正された。食品表示基準の一部を改正する内閣府令(内閣府令第89号)が同日公布され、附則第一条の「この府令は、公布の日から施行する」との規定により、同じ日から施行された。
変わったのは3点で、消費者庁の改正概要によれば、①栄養成分の下限値・上限値、②栄養成分の機能の文言、③摂取をする上での注意事項である。
下限値は9成分、上限値は3成分が変わった
栄養機能食品は、1日当たりの摂取目安量に含まれる成分量が、別表第11の下限値と上限値の範囲内にないと名乗れない。新旧対照条文によると、今回動いたのは次の数値である。
上限値が変わったのは3成分で、亜鉛が15ミリグラムから17ミリグラムへ、マグネシウムが300ミリグラムから320ミリグラムへ上がり、銅は6.0ミリグラムから4.6ミリグラムへ下がった。
下限値が変わったのは9成分で、上がったのはカルシウム(204→210ミリグラム)、パントテン酸(1.44→1.65ミリグラム)、ビタミンB12(0.72→1.20マイクログラム)、ビタミンD(1.65→2.70マイクログラム)、ビタミンE(1.89→1.95ミリグラム)。下がったのは亜鉛(2.64→2.55ミリグラム)、鉄(2.04→1.95ミリグラム)、銅(0.27→0.24ミリグラム)、ビタミンB1(0.36→0.30ミリグラム)である。n-3系脂肪酸、カリウム、ナイアシン、ビオチン、ビタミンA、B2、B6、C、K、葉酸は下限・上限とも据え置かれた。
下限値が動いたのは、計算のもとになる値が変わったためだ。検討会の取りまとめによると、下限値は従来どおり栄養素等表示基準値の30%を採用している。上限値のほうは事情が違い、平成17年以降は見直されていなかった。亜鉛と銅については、耐容上限量から日本人の摂取量の上位1パーセンタイル値を差し引いて算出する方法が採られた。平均的な摂取量を引く方法だと「多くの者で UL を超える可能性がある」ためで、取りまとめは「国が定める上限値である以上、安全性の確保が特に重要である」としている。
「必要な栄養素」から「助ける栄養素」へ
消費者が手に取ったときに気づきやすいのは、容器に書かれる機能の文言のほうだろう。語尾が全体として控えめな表現に改められた。
亜鉛は、改正前の「亜鉛は、味覚を正常に保つのに必要な栄養素です」が「味覚を正常に保つのを助ける栄養素です」に変わった。「亜鉛は、皮膚や粘膜の健康維持を助ける栄養素です」も「助ける栄養素のひとつです」となった。さらに改正前にあった「亜鉛は、たんぱく質・核酸の代謝に関与して、健康の維持に役立つ栄養素です」の一文は削除され、亜鉛の機能は3文から2文に減った。
葉酸では「胎児の正常な発育に寄与する栄養素です」が「胎児の正常な発育を助ける栄養素です」に、カリウムでは「正常な血圧を保つのに必要な栄養素です」が「血圧を正常に保つのを助ける栄養素です」に改められた。いずれも、その成分だけで効果が決まるかのような書き方を避け、「助ける」「ひとつです」という言い回しに寄せる方向である。
見直しは制度創設から25年を経て
栄養機能食品の制度ができたのは平成13年で、食品表示基準は脂肪酸1種類、ミネラル6種類、ビタミン13種類の計20成分を定めている。国への届出も審査も要らず、基準の範囲に収まっていれば事業者の責任で機能を表示できる点が、届出が必要な機能性表示食品や、審査のある特定保健用食品と異なる。
検討会の取りまとめによると、制度創設後に行われたのは、平成16年と平成27年の対象成分の追加、平成17年の下限値・上限値の見直し、平成27年の下限値の見直しだけで、機能や注意事項の文言は一度も見直されていなかった。その間に、現行の「日本人の食事摂取基準」に記載された機能の根拠との食い違いが生じていることが、令和2年4月の消費者庁の調査事業報告書で指摘されていた。今回の改正は、この指摘に対応したものである。
食品の表示をめぐっては、表示と中身が違っていた事例への行政の対応も続いている(精米9商品を「単一原料米」と誤表示 農水省が新潟のコメ販売会社に是正を指示 439袋を4か月販売)。
切り替えには猶予がある。附則第二条は、令和12年3月31日までに製造・加工・輸入される加工食品(業務用を除く)と、同日までに販売される生鮮食品(業務用を除く)について、改正後の別表第11にかかわらず「なお従前の例によることができる」と定めている。しばらくは新旧の表示が店頭に混在することになる。
