トヨタ自動車は11月5日、2027年3月期の連結営業利益の予想を3兆4000億円から3兆9000億円へ5000億円引き上げた。前期の3兆7662億円を上回る見通しとなる。同日発表した2026年4〜9月期(中間期)は、営業収益が26兆9624億円で前年同期比9.5%増、営業利益が2兆1911億円で9.2%増だった。同社は関税負担の軽減などで北米が黒字に戻ったと説明した。一方、為替などの影響を除いた営業利益の増減は1950億円の減少で、通期の純利益は前期比7.2%減を見込む。

中間期は増収増益、為替が6850億円を上積み

親会社の所有者に帰属する中間利益(純利益)は2兆2364億円で26.1%増えた。同社のオウンドメディア「トヨタイムズ」は、今回の決算を「3年ぶり増益」と伝えている。

営業利益の増加分1854億円の内訳を見ると、最も大きいのは為替変動の影響で、6850億円の増益要因となった。平均の為替レートは1ドル159円で前年同期より13円の円安、1ユーロは184円で16円の円安だった。営業面の努力も1650億円の増益要因となった。

減益要因は、原価改善の努力が3400億円、諸経費の増減・低減努力が200億円、その他が3046億円だった。原価改善の項目には資材価格の上昇4650億円が含まれ、そのうち1250億円は中東情勢の影響である。営業面でも中東情勢で850億円の減益要因があり、この二つを合わせると2100億円になる。説明資料は、原価改善、営業面の努力、諸経費の合計を「為替・スワップ等の影響除き」として1950億円の減少と示した。

純利益の伸びが営業利益を上回ったのは、営業外損益が7632億円と2908億円増えたためだ。持分法による投資損益は3583億円で、うち日本が2863億円と前年同期から1026億円増えた。一方で、三菱ふそうトラック・バスと日野自動車の経営統合で日野自動車への支配を失い、これに伴う損失954億円を計上した。

連結販売台数は475万8000台で0.5%減った。前年同期には日野ブランド車の5万1000台が含まれており、同社はこの影響を除くと2万6000台の増加だと説明している。小売りのトヨタ・レクサス販売台数は505万9000台で4.0%減った。理由には中国の需要減退と中東情勢をあげた。電動車の比率は46.7%から55.6%に上がり、ハイブリッド車(HEV)は245万台、電気自動車(BEV)は23万1000台だった。

北米は黒字に転換、中国は販売が25%減

所在地別では、北米の営業利益が1661億円となり、前年同期の678億円の赤字から黒字に転換した。同社は要因として関税影響の軽減と価格改定をあげた。日本は為替と台数増などで12.2%の増益、欧州は価格改定やバリューチェーン収益の増加などで9.2%の増益だった。アジアは1.6%、その他の地域は0.5%の減益となった。

所在地 営業利益 前年同期 連結販売台数
日本 1兆2533億円 1兆1171億円 102万4000台
北米 1661億円 678億円の赤字 153万台
欧州 2192億円 2007億円 58万9000台
アジア 4371億円 4442億円 85万7000台
その他 2009億円 2019億円 75万8000台
トヨタの所在地別の営業利益と連結販売台数(2026年4〜9月期)。その他は中南米、オセアニア、アフリカ、中東

出典: トヨタ自動車「2027年3月期 第2四半期(中間期)決算要旨」「第2四半期決算 プレゼンテーション資料」

その他の地域の販売台数は前年同期より11.2%減った。営業利益が減った理由について、決算短信は「販売面での影響など」としている。

中国は、トヨタ・レクサスの販売台数が91万4000台から68万5000台へ25.1%減った。中国の連結子会社の営業利益は1222億円から650億円に、持分法適用会社の投資損益は480億円から286億円に減り、同社はどちらも販売面の影響などと説明した。金融事業の営業利益は、融資残高の増加などで4.9%増の4723億円だった。

上方修正の内訳、関税の額は資料に示さず

通期の予想は、8月4日の第1四半期決算で3兆円から3兆4000億円に上げたのに続き、2回連続の上方修正となった。

項目 前期実績 8月の予想 今回の予想
営業収益 50兆6849億円 54兆円 53兆5000億円
営業利益 3兆7662億円 3兆4000億円 3兆9000億円
税引前利益 5兆1529億円 4兆5700億円 4兆9600億円
純利益 3兆8480億円 3兆2500億円 3兆5700億円
連結販売台数 959万5000台 970万台 970万台
想定為替(1ドル) 151円 160円 157円
トヨタの2027年3月期の連結業績予想

出典: トヨタ自動車「2027年3月期 第2四半期決算 プレゼンテーション資料」

上積みした5000億円の内訳は、諸経費の増減・低減努力が3650億円で最も大きい。その中の「経費ほか」が3400億円を占める。営業面の努力が1400億円、為替変動の影響が200億円、原価改善の努力が50億円の増益要因で、その他は300億円の減益要因だった。

同社は上方修正の理由に「関税負担の軽減」と「バリューチェーン収益の拡大など改善努力」をあげた。ただ、説明資料とスクリプトには関税の軽減額が書かれておらず、どの項目にいくら入っているかは確認できていない。バリューチェーンは、新車の販売後に部品や中古車、金融、コネクティッドなどで得る収益を指す。

利益の予想を上げた一方で、営業収益の予想は5000億円下げた。連結販売台数は970万台で据え置いたが、地域別では日本を207万台から210万台に上げ、アジアを178万台から174万台に下げた。アジアには中国市場の減速とタイの洪水の影響を織り込んだ。トヨタ・レクサスの販売台数は1050万台から1030万台に、BEVは53万3000台から46万3000台に下げた。8月の資料は「令和8年熊本地震」の影響を見通しに反映していないと注記していたが、今回は「震災・洪水」の影響を挽回努力などで最小化するとしている。

前期と比べると、資材価格の上昇は1兆3250億円の減益要因で、うち3450億円が中東情勢の影響である。営業面の中東影響1600億円と合わせると5050億円になる。

通期予想から中間期の実績を差し引くと、下期の営業利益は1兆7089億円で、前期の下期の1兆7606億円を下回る計算になる。純利益は通期で3兆5700億円と前期比7.2%減の予想で、差し引いた下期は1兆3336億円である。前期の下期は2兆746億円だった。

配当は年100円、自社株の取得枠を1兆3000億円に

中間配当は前年より5円多い50円とし、年間配当は5円増の100円を予想する。年間配当の予想は8月から変えていない。中間配当の総額は5889億円で、前年の5865億円をわずかに上回る。年間配当は2023年3月期の60円から75円、90円、95円と増やしてきた。同社は「安定的・継続的に増配を実施」する方針を掲げている。

自己株式の取得枠は3000億円増やし、今期の上限を1兆3000億円とした。説明資料は増額の理由を「株主からの売却要請に応えるため」としている。消却は10億株を追加し、今期の累計を12億株とする。9月末の時価で約3兆5000億円に当たる。自己株式の取得は会社が発行した株式を買い戻すこと、消却はその株式を無効にして発行済みの数を減らすことを指す。説明資料は、自己株式の保有水準を引き下げ「資本効率を意識した資本政策を推進」するとした。中間決算に合わせた大型の自己株式取得では、三菱商事、上限1兆円の自社株買い 中間純利益74%増、通期予想1.2兆円に上げの例もある。

中間期の自己株式の取得額は3兆8518億円にのぼった。説明資料は豊田自動織機の非公開化の一環として、公開買付けによる取得額を3兆6568億円と注記している。同社が持っていた豊田自動織機の株式の売却も、中間期に完了した。

北米で生産を移管、来年1月にロボット組織

決算説明会では、宮崎洋一取締役副社長(CFO)が「事業構造改革」の進捗を説明した。北米の所在地営業利益は、金利スワップ取引などの評価損益を除いて2026年3月期に2986億円の赤字となった。説明資料は、この赤字の要因を関税影響と記している。

トヨタの北米所在地の営業利益(億円)

-5,000-2,50002,5005,0007,5003,62721/3期5,32522/3期74623/3期5,24924/3期1,04325/3期-2,98626/3期
金利スワップ取引などの評価損益を除く。資料は23年3月期を資材高騰、25年3月期をインディアナ工場の稼働停止、26年3月期を関税影響の年と記す出典: トヨタ自動車「2027年3月期 第2四半期決算 プレゼンテーション資料」
数値で見る(単位: 億円)
項目億円
21/3期3,627
22/3期5,325
23/3期746
24/3期5,249
25/3期1,043
26/3期-2,986

今回の中間期は同じ基準で1320億円の黒字だった。同社は収益の回復に向け、ノースカロライナ州の電池工場の稼働を上げてHEVを増産し、ピックアップトラック「タコマ」の生産をテキサスの第2ラインへ移すほか、ロボットの導入を広げるとしている。北米の説明資料には、市場内のHEV比率が12.7%から15.6%に上がり、BEV比率が7.8%から5.8%に下がったとの図も載せた。

中国では、2027年9月に稼働を予定するレクサスの上海拠点で開発期間を18カ月短縮し、来年から現地で開発した新エネルギー車を順次投入するとした。

新たな事業としてはロボットを掲げた。2028年から2040年までに、トヨタグループで15万台、仕入先で25万台の計40万台の導入需要があり、老朽設備の更新の需要は年1兆円規模と見積もる。この需要を起点に技術を磨き、他の製造業などへの外販につなげる計画で、2027年1月1日付で全社直轄の組織「トヨタロボティクス」を立ち上げる。バリューチェーン事業は年1500億円規模で収益を積み上げ、2030年に1兆円の上積みをめざす。