第15回国連犯罪防止刑事司法会議(コングレス)が9月26日から10月1日まで、アラブ首長国連邦(UAE)のアブダビで開かれる。国連薬物・犯罪事務所(UNODC)が9月18日時点の公式プログラムを公表した。初日26日の午前、開会と組織事項の処理に続くハイレベル会合の中で、成果文書「アブダビ宣言」を採択する。会場はアブダビ国立展示センター(ADNEC)で、UAE政府が受け入れ国となる。
コングレスは1955年から5年に1度開かれており、UNODCは刑事司法の分野で「世界最大かつ最も多様な会合」と位置づけている。各国政府だけでなく、市民社会、学界、国際機関、実務家が一堂に会する場で、ここで採択された宣言や準則が、その後5年間の各国の制度づくりと国際協力の方向を決めてきた。
テーマは「デジタル時代」 4つのワークショップ
全体テーマは、国連総会決議78/223が定めた「犯罪防止、刑事司法及び法の支配の加速──デジタル時代に人と地球を守り、2030アジェンダを達成する」。同じ決議で、会議中に開く四つのワークショップの題目も決まっている。女性・子ども・若者を守る強靱(きょうじん)な社会づくり、すべての人への平等な司法アクセス、新しい形の犯罪に対応するためのデータ収集・分析の強化、そしてデジタル時代を機会に変える技術の責任ある利用の四つで、いずれも技術と犯罪の関係が軸になっている。
議題そのものも同じ並びだ。プログラムによると、28日午後から犯罪防止戦略(議題3)、29日に人中心の刑事司法制度(議題4)と組織犯罪・テロを含む新たな形態の犯罪(議題5)、30日午後に国際協力とパートナーシップ(議題6)を扱い、各議題はそれぞれ対応するワークショップと組み合わせて議論される。閉幕は10月1日午後で、委員会報告を了承したうえで会議報告書を採択する。
初日26日の午後4時半からは、特別ハイレベル会合「国連サイバー犯罪条約──署名から実施へ」が開かれる。同条約は2024年12月に国連総会で採択され、昨年10月にハノイで署名式が行われた。条約を持つ段階から、各国が国内法と捜査体制をそろえて動かす段階へ、議論が移ったことになる。27日午前には「AI時代のオンライン詐欺に立ち向かう」と題した会合も予定されている。
「京都からアブダビへ」 日本が積み残した宿題
前回の第14回コングレスは2021年3月に京都で開かれ、成果文書「京都宣言」を採択した。今回、初日26日の昼に開かれるテーマ別会合の一つ目は「京都からアブダビへ──刑事司法と犯罪者処遇における構想を行動に移す」と題されており、この5年間で京都宣言がどこまで実行されたかを点検する場になる。
法務省は京都宣言の具体化として、再犯防止に関する国連モデル戦略(京都モデル戦略)、法遵守の文化のためのグローバルユースフォーラム、アジア太平洋刑事司法フォーラム(Crim-AP)の三つを掲げてきた。このうち京都モデル戦略は、法務省が外務省と連携して策定を主導し、2025年12月18日の国連総会で採択された。受刑者一人ひとりの特性に応じた処遇や、保護司をはじめとする更生保護ボランティアを生かした官民連携という日本の実務が、国際準則に盛り込まれた形だ。ユースフォーラムは2021年から2026年までに4回、Crim-APは2022年から2025年までに4回開かれている。
アブダビでも日本の関与は続く。国連アジア極東犯罪防止研修所(UNAFEI)は、ルーマニアやタイ司法研究所などの協力を得て「京都モデル戦略の実施推進」と題したサイドイベントを開く。国連地域間犯罪司法研究所(UNICRI)が開く「環境に配慮した刑務所」のサイドイベントにも、日本がUNAFEIとともに支援団体として名を連ねている。採択された準則を各国の現場でどう回すかが、日本にとっての次の宿題になる。
新事務局長にとって初のコングレス
今回のコングレスは、UNODCの新しい事務局長にとって初めての大舞台でもある。ケニアのモニカ・ジュマ氏が今年5月11日、国連ウィーン事務局長とUNODC事務局長に就任した。ジュマ氏はケニア大統領の初代国家安全保障顧問を2022年から2026年まで務め、それ以前はエネルギー、国防、外務の各省で閣僚を歴任している。就任にあたっては「多国間主義にとって重要な時期に」二つの組織を率いると述べ、防衛・安全保障・外交の経験を薬物、組織犯罪、汚職、テロへの対応に生かす考えを示していた。
UNODCは今回、宣言を採択して終わりにしない仕組みとして「Pledge4Justice(司法への誓約)」という取り組みも用意した。アブダビ宣言が共通の原則と優先課題を確認しても、その影響は各国・地域・国際レベルで約束がどれだけ具体的な行動に移されるかで決まる、という考え方に基づく。ハイレベル会合の発言順は9月2日にウィーンで開かれた委員会の会期間会合で抽選により決められ、一般討論の発言登録は8月26日に始まっていた。会議に先立つ24日と25日には、若者が参加するユースフォーラムも開かれる。
