EUの統計機関ユーロスタットは9月24日、2025年のEUと域外国との貿易を輸送手段別に集計した結果を公表した。重さで見ると、海上輸送が輸入の73.3%、輸出の72.6%を運び、最大の輸送手段だった。金額で見ると輸入の50.2%、輸出の40.4%で、重さの割合より小さくなる。船で運ばれた輸入は11億トン、金額は1兆2700億ユーロ、輸出は5億トン、1兆690億ユーロだった。
重い荷物は船、高い荷物は航空機
対照的なのが航空輸送だ。重さでは輸入の0.3%、輸出の2.9%にすぎないのに、金額では輸入の20.7%、輸出の29.1%を占めた。輸入で見れば、重さが千分の3しかない荷物が、金額では5分の1を稼いでいることになる。
船と航空機のどちらを使うかは、荷物1トンあたりの値段でほぼ決まる。原油や鉱石、石炭、穀物のように重くて単価が低いものは、運賃を抑えられる船でまとめて運ぶ。半導体や医薬品、精密機器のように軽くて単価が高いものは、運賃が高くても日数を短くできる航空機に乗る。ユーロスタットの数字は、この分業が貿易統計の上でどう見えるかを示したものだ。
EUには陸続きの貿易相手がある
EUの特徴は、船と航空機以外の手段が無視できない大きさで残っている点にある。道路輸送は重さで輸入の6.0%・輸出の17.4%、金額で輸入の19.5%・輸出の24.9%を占めた。鉄道輸送は重さで輸入の2.6%・輸出の2.9%、金額で輸入の1.2%・輸出の1.3%だった。
EUの域外貿易といっても、相手国のなかには陸で国境を接する国が含まれる。そこへはトラックと貨物列車が直接乗り入れられるため、重さでも金額でも数%から二十数%という無視できない比率になる。EUの域外貿易をめぐっては、WTO、EUの炭素国境調整メカニズム(CBAM)を審理へ ロシアの2回目の要求でパネル設置 日本など18の国・地域が第三国参加のように、輸入品にかかる制度そのものが国際的な争いの対象になっている。ユーロスタットは今回の公表を、9月24日の「世界海の日(World Maritime Day)」に合わせたものだと記している。
日本は貿易量の99.5%が海上輸送
日本の数字を並べると、構造の違いがはっきりする。国土交通省海事局の「海事レポート2025」によると、日本は貿易量(輸出入合計)の99.5%を海上輸送が占める(2024年、トン数ベース)。EUの73.3%・72.6%とは比べものにならない。四方を海に囲まれ、トラックや貨物列車で荷物を持ち込める陸の国境が一つもないためだ。EUの統計を日本の数字と並べると構造の違いが見えるのは、EUの労働災害死亡、2024年は3367人 建設業が23.0%を占める 就業者10万人あたり1.65人、日本は2025年に700人で過去最少でも同じだった。
海事局が財務省「貿易統計」からまとめた「数字で見る海事2025」によると、2024年の日本の海上貿易量は輸出入合計で7億8115万トン、金額は153兆4243億円だった。内訳は輸入が6億4132万トン・81兆2102億円、輸出が1億3983万トン・72兆2141億円で、重さでは輸入が輸出の4倍を超える。品目別では石炭1億6575万トン、原油1億1496万トン、鉄鉱石9639万トン、液化天然ガス(LNG)6589万トンが上位に並ぶ。食料も小麦521万トン、トウモロコシ1529万トン、大豆317万トンが船で入ってくる。
海上貿易量の59.8%を日本商船隊が運ぶ
この海上貿易量のうち59.8%を運んでいるのが日本商船隊だ。日本商船隊とは、日本の外航海運事業者が運航する2000総トン以上の外航商船群を指し、日本国民や日本の法令で設立された会社が持つ日本籍船と、外国企業から用船(チャーター)している外国籍船で構成される。
海事レポートは、このうち日本籍船について「我が国の管轄権が公海にて排他的に及び、非常時に国民生活を維持するための物資輸送を担う」点で経済安全保障の中核を担うと位置づけている。エネルギーと食料をほぼ全量船で運び込む国で、その船をどの旗の下に置くかは、平時の運賃の話ではなく有事の供給の話になるという整理だ。
「数字で見る海事2025」に載る2024年の海上貿易量は財務省貿易統計の確々報に基づく数値で、2023年ぶんと同じように確定値へ置き換わる。ユーロスタット側の2025年の集計は、同じ統計から誰でも引き出せるようデータセット「ds-059334」として公開されている。
