総務省は6日、「Wi-Fi HaLow」の名で知られる800MHz帯広帯域小電力無線システムの携帯局を「登録局」として開設できるようにする電波法施行規則の改正案について、意見募集の結果を公表した。9月12日から10月16日までに10件の意見が寄せられた。同日に諮問を受けた電波監理審議会(会長・笹瀬巌慶応義塾大名誉教授)は原案を適当と答申し、総務省は速やかに省令を整備するとしている。

1局ずつの免許ではなく「登録」で開設

登録局は、電波法27条の21第1項の登録を受けて開設する無線局をいう。無線局ごとに免許を受ける代わりに、省令で決めた規格の無線設備を使う場合に、総務大臣の登録で開設できる仕組みだ。

改正案は、施行規則17条「登録局の無線設備の規格」に、無線設備規則49条の37が定める技術基準を新しい号として加える。49条の37は7月30日の省令改正で設けられた800MHz帯広帯域小電力無線システムの携帯局の規定だ。e-Gov法令検索で9日に確認できる施行規則は、登録の対象とする無線局にこの携帯局をすでに挙げているが、登録局の無線設備の規格にはまだ入っていない。改正で、登録による開設の手続きがそろう。省令は公布の日から施行する。

49条の37によると、この携帯局は846.5〜854.5MHzの電波を使い、空中線電力は200ミリワット以下(854MHzのチャネルを含む場合は20ミリワット以下)とする。送信アンテナの利得は8デシベル以下で、1MHz幅のチャネルを1、2、4、8のいずれかの数だけ束ねて使う。送信時間を制限する装置、混信を防ぐ機能、ほかの電波が出ていないかを確かめるキャリアセンスを備えることも求めている。

意見10件、修正は条文の1か所

意見を出したのは法人・団体が6件、個人が2件、匿名が2件だった。総務省が案を修正したのは1件だけだった。

提出者 意見の主な中身 修正
フルノシステムズ 賛成。将来は登録不要の無線局として運用できる制度を 無
Morse Micro 賛成。手続きのオンライン化、屋内利用の簡素化を 無
TOA 賛成。屋内は登録不要、屋外・上空は登録とする運用を 無
ビジネス・アクション・クラブ ICTビジネス研究会 賛成。手続きや導入例を一体で示すよう要望 無
村田製作所 賛成。2029年のMCA終了を節目に登録制度の検証を 無
802.11ah推進協議会 賛成。条文の書き方を指摘、非登録局化の検討も要望 有
個人 既存の無線との共存や混信の検証結果の公表を 無
個人 改正内容を概要資料に明示するよう要望 無
匿名 移動する農機の登録を市町村単位で 無
匿名 在外投票の書類の電子化について(対象外) 無
意見募集に提出された意見と総務省の対応出典: 総務省 別紙1「提出された意見及び当該意見に対する総務省の考え方」

修正のきっかけは、一般社団法人802.11ah推進協議会(AHPC)の指摘だった。原案は条文で49条の37の技術基準「のうち携帯局に係るもの」を規格に加えるとしていた。協議会は、49条の37はもともと携帯局の無線設備の技術基準なので、この限定は要らないと指摘した。総務省はこれを受け入れ、「設備規則第四十九条の三十七に規定する技術基準」と書き改めた。答申の対象になった別紙2の省令案は、この書き方になっている。

業界は「屋内なら登録不要」を求める

賛成した企業の多くは、登録も要らない形への見直しを将来の課題に挙げた。フルノシステムズは、多数の無線局の設置が見込まれ、普及が進めば登録手続きが利用者や導入者の負担になり、普及を妨げるおそれがあるとした。そのうえで、登録を要しない無線局として運用できる制度の検討を早期に始めるよう求めた。

Morse Micro(モースマイクロ)は、米国やオーストラリアでは一定の条件の下で個別の免許申請が要らない制度があると説明した。日本独自の登録手続きが海外の制度や運用の慣行と違えば、国内向けの追加対応が必要になり、製品の導入や国際展開の妨げになりかねないと指摘した。5GHz帯の無線LAN(W52)で屋外や上空の利用に登録局制度を当てている例を挙げ、小電力で屋内に限った利用は登録不要も含めて手続きを簡素にするよう求めた。

村田製作所は、デジタルMCAのサービスが終わる2029年を節目に、登録局制度が必要かどうかや運用の方法を改めて検証するよう求めた。AHPCも、いまの920MHz帯の20ミリワットの無線局から切れ目なく移れるよう非登録局とすることが利用者には望ましいとした。

総務省はこれらの意見に対し、運用実績の状況を踏まえた将来の制度の柔軟化に関する意見は「今後の検討の参考とさせていただきます」と答えた。手続きのオンライン化については、登録申請はすでに電子申請でできると説明した。

混信を懸念する声と、農機の登録範囲

一方で、自由に使える形を急ぐことに慎重な意見もあった。TOAは、この無線は200ミリワットまで出せるため、屋外で多数の親局が近くに置かれると混信が起きやすいと懸念を示した。2.4GHz帯の無線LANのように登録なしで場所を問わず使えるようになれば、混信が増えて利用しにくい周波数帯になるおそれがあるとし、屋内は登録不要、屋外や上空は登録で管理する運用を提案した。

個人の1件は、既存の無線システムとの共存や、機器が近くで同時に使われる環境での実証試験の結果を公表するよう求めた。総務省は、技術的な条件は情報通信審議会の陸上無線通信委員会で検討し一部答申を得ており、それを踏まえて制度を整えていると答えた。今後の運用実績などの状況を踏まえ、必要に応じて見直すとしている。

匿名の1件は、ロボットトラクターやドローンなど動く機械で使う場合、圃場(ほじょう)ごとに個別の登録が要るのでは実用的でないとして、市町村単位の登録を求めた。総務省は、登録局制度は包括登録ができ、移動の範囲も市町村単位や複数の市町村にまたがる範囲で登録できると答えた。

地域での活用を支援するよう求めた団体には、令和8年度の「地域社会DX推進パッケージ事業」で社会実装を支援していると説明した。10件のうち1件は在外投票の書類の電子化についての意見で、総務省は意見募集の対象外とした。

MCA終了までは2MHz幅で

この無線に使う800MHz帯は、業務用無線「デジタルMCA」の跡地にあたる。1994年に導入されたデジタルMCAは、2029年5月末でサービスを終えると公表されている。総務省は跡地を使う新しい無線を調べ、提案のうち広帯域小電力無線システムと3次元測位システムの2つを800MHz帯に導入するため、2025年10月に情報通信審議会の一部答申を受けた。その後、技術基準を定める省令改正を7月30日に済ませた。経緯は「総務省、800MHz帯の新無線システムで省令改正案 12日から意見公募 2029年に空くMCA跡地に高速無線とGPSを補う測位網」に詳しい。

MCAの電波が出ている間の共存について、総務省は意見への回答で、サービスの終了を待たずに使う周波数を846.5〜848.5MHzに限るなどの制度整備を済ませていると説明した。技術基準の上限である846.5〜854.5MHzの8MHz幅をすべて使えるようになるのは、MCAの終了後になる。

電波の制度を巡っては、情報通信審議会の電波有効利用委員会も前日の5日、携帯電話の周波数の割り当てに関する報告案について意見募集の結果を公表している(「携帯の電波免許の審査強化、意見27件でも案の修正なし 楽天は「抜本的な再考」要求」)。今回の省令案で総務省が取り入れたのは、条文の書き方の指摘1件だった。登録そのものを不要にする要望は、運用実績を踏まえた将来の検討の参考とするにとどめ、今回の改正には入れなかった。