総務省の「地方公共団体における人材育成に関する研究会」が、自治体の職員育成について全国の都道府県・市区町村に聞いた調査の結果を公表した。職場で上司や先輩が実務を通じて仕事を教えるOJT(職場内訓練)を実施している1310団体のうち、「機能している」と答えたのは256団体(19.5%)だった。「機能の実態を把握・確認していない」は462団体(35.3%)に上った。調査結果は10月5日の第2回研究会に示され、総務省は会議の資料と議事要旨を研究会のページに掲載している。数値は速報値で、総務省は「未回答・疑義照会中の団体があるため、今後変動する可能性あり」としている。

調査の対象と研究会の位置づけ

調査は2026年4月1日時点の状況を聞いたもので、集計の対象は都道府県47、指定都市20、市区町村1677の計1744団体。研究会が6月26日の第1回で調査項目を検討し、その後に各団体へ照会した。

研究会の座長は辻琢也・一橋大大学院特任教授で、第2回には座長を含む大学の研究者4人が委員として出席した。検討の柱は「採用の多様化を踏まえた人材育成のあり方」と「職場内での人材育成のあり方」の二つだ。自治体では、民間企業の経験者を中途で採る枠や、教養試験の代わりに民間企業と同じ適性検査(SPI)を使う試験が広がっている。採り方を変えた後、入庁した職員をどう育て、どう定着させるかを議論している。

研究会は今後、11月26日の第3回で飯田信用金庫と神戸市、12月21日の第4回で佐賀県と群馬県伊勢崎市の取り組みを聞く。2月下旬の第5回で報告書案について意見を交わす予定だ。

OJT、実施していない団体も4分の1

調査では、OJTを「実施している」団体が1310(75.1%)、「実施していない」団体が434(24.9%)だった。実施していない434団体はすべて市区町村で、都道府県と指定都市は全団体が実施していた。

OJTを実施している自治体の「機能の程度」(団体)

機能している256一部課題あり571機能せず21把握せず462
OJTを実施している1310団体の回答。2026年4月1日時点出典: 総務省「第2回地方公共団体における人材育成に関する研究会」資料1(速報値)
数値で見る(単位: 団体)
項目団体
機能している256
一部課題あり571
機能せず21
把握せず462

実施している団体の内訳は、「機能している」256、「一部では機能しているが、課題がある」571(43.6%)、「機能していない」21(1.6%)、「機能の実態を把握・確認していない」462だった。都道府県は「機能している」が29.8%、市区町村は18.9%で、実態を把握していない割合は都道府県の10.6%に対し、市区町村は36.6%だった。

OJTの重要性を組織全体で共有できているかという問いには、645団体(37.0%)が「共有できていない」と答えた。このうち643団体が市区町村だった。

課題として最も多く挙がったのは、OJTを実施し「機能している」か「一部で課題がある」と答えた団体では「OJTに充てる時間が不足」で、2割程度だった。「機能していない」と答えた団体では、「組織全体・各所属のOJTに対する理解が不足(組織風土が醸成されていない)」が3割程度で最も多かった。総務省のまとめでは、OJTの効果測定をしていない団体は7割程度、OJTの指導者の育成に取り組んでいない団体は5割程度、OJTに工夫を「該当する取組はない」とした団体は6割程度あった。

採り方は広がるが、育て方は分けず

採用の側では、一般行政職で「年齢上限の引上げ・撤廃」に取り組む団体が996(57.1%)、「教養試験に代わるSPIなどの適性検査の導入」が936(53.7%)だった。適性検査は都道府県の91.5%、指定都市の90.0%が導入しているが、市区町村では52.2%だった。適性検査と面談だけで選ぶ早期採用枠は166団体(9.5%)が設けている。

一般行政職での取り組み 団体数 割合
年齢上限の引き上げ・撤廃 996 57.1%
SPIなどの適性検査の導入 936 53.7%
新卒と経験者の複数の採用ルート 732 42.0%
民間経験者の採用枠 677 38.8%
試験日程の早期化 435 24.9%
適性検査と面談だけの早期採用枠 166 9.5%
一般行政職の採用で各団体が取り組んでいるもの(複数回答、1744団体)

出典: 総務省「第2回地方公共団体における人材育成に関する研究会」資料1(速報値)

採用方法を多様化している1718団体に目的を聞くと、「人的資源の不足に伴い、即戦力としての働きを期待するため」が1133団体(65.9%)で最も多く、「採用計画に基づく採用者数を確保するため」が1083団体(63.0%)で続いた。都道府県と指定都市への聞き取りでは、中途採用者は民間企業からの転職者の割合が高く、技術職ではその傾向が強かったという。

一方で、採用後の育成を採用方法に応じて変えていない団体は1391(81.0%)に上った。変えている団体の取り組みは「採用方法に応じた人事配置の実施」が168団体(51.4%)で最も多く、「中途採用者の入庁前に、研修を実施」は26団体(8.0%)だった。変えていない理由では、採用方法に応じた育成手法の「知識・ノウハウが不足」が5割程度で最も多く、「必要な人員が不足」が4割程度で続いた。「必要性を感じていない」は3割程度だった。

人材育成の方針、未策定の49団体は「予定なし」

職員の育成の基本となる「人材育成基本方針」は、1744団体のうち1682団体(96.4%)が策定していた。未策定の62団体はすべて市区町村で、このうち49団体(村23、町20、市6)は策定の予定がない。理由(複数回答)は「策定に着手したいが、マンパワーを割くことができない」が42団体、「策定に必要な知見が不足している」が35団体だった。

策定済みの団体のうち、方針をこれまでに改正したのは1118団体(66.5%)。総務省が2023年12月に「人材育成・確保基本方針策定指針」を示した後に改正したのは470団体(27.9%)だった。改正の予定がない346団体の理由も「マンパワーを割くことができない」が246団体(71.1%)で最も多かった。

総務省は参考資料として、30代以下の職員の離職率の推移も示した。民間の離職率が微増から横ばいなのに対し、地方公務員は平成28〜令和4(2016〜2022)の間に国家公務員と同程度に上がり、令和5(2023)以降は国家公務員が頭打ちになる一方で上昇が続いているとした。都道府県と指定都市への聞き取りでは、普通退職の主な事由はすべての団体で「転職」だった。

研究会が示した論点

総務省は会合で「課題と検討の方向性(論点)」を示した。採用の面では、民間経験者と行政経験者で研修の手法を変えることや、民間経験者に公務員倫理や行政手続法の研修を行うことを挙げた。相談相手を付けるメンター制度で前職との違いを埋めることや、離職者に辞めた理由を聞き取ることも論点に入れた。人事担当部局の負担を減らすため、自治大学校など全国規模の研修機関や近隣の団体と合同で行う研修の活用、人事管理のシステム(HRテクノロジー)の導入も例示した。

OJTについては、管理職や指導者への研修で組織の意識を高めること、いつまでに何を身に付けさせるかの計画を立てること、指導の後に効果を測って本人に伝えることを挙げた。指導者の負担を減らす方法として、複数人での指導、OJTを受ける職員を同じ部署に複数置かない配置、OJTの指導を管理職・指導者の人事評価の項目にすることを例示した。

議事要旨によると、委員からは「人事担当部局の負担軽減に向けた取組が重要な論点になるのではないか」との意見が出た。HRテクノロジーの導入には自治体から財政面の懸念を聞くことが多いとして、その負担をどう乗り越えるかも議論すべきだとの指摘もあった。会合では三井化学と野村総合研究所が社内の育成の取り組みを発表した。野村総研の担当者は、外部への研修委託について、どこかの団体がまとめて発注して費用を抑えることも一つの対策ではないかと述べた。

公務員の処遇をめぐる最近の動きは、公務員の給与改定を10月9日に閣議決定 国家公務員は人事院勧告どおり官民較差1万5056円・ボーナス年4.70月へ 総務副大臣が同日、地方へ通知で伝えた。