携帯電話の電波免許を2027年10月に一斉に更新する際、各社の将来計画を中身まで審査する制度案について、総務省は11月5日、意見募集の結果を公表した。情報通信審議会の電波有効利用委員会(主査・藤井威生電気通信大学教授)に届いた意見は27件で、楽天モバイルは「抜本的な再考」を求め、ソフトバンクは計画の一律公表を「適当ではなく」と主張した。委員会はどの意見でも案を修正せず、案は次回の情報通信技術分科会で審議される。
62項目すべて「修正なし」
意見の募集期間は9月19日から10月19日まで。内訳は法人等12件、個人15件だった。法人等では携帯大手のNTTドコモ、KDDI(UQコミュニケーションズと連名)、ソフトバンク(Wireless City Planningと連名)、楽天モバイルがそろって提出し、JTOWER、Sharing Design、村田製作所なども加わった。
総務省が公表した別紙は、意見を62項目に番号を振って並べ、項目ごとに委員会の考え方と「案の修正の有無」を記している。62項目の欄はすべて「無」である。委員会の回答で最も多いのは、総務省の今後の制度検討の「参考とされるものと考えます」という形だ。賛成には「賛同意見として承ります」と返し、報告案の範囲を外れる要望には「意見募集の対象としておりません」と答えた。各社の主張の採否は、総務省がこれから定める制度と審査基準に持ち越されたことになる。
携帯の電波免許、2027年10月に一斉更新へ 総務省が審査基準の新設案 3.5GHz帯の基地局増設は年1万3989局から3976局に鈍化で扱った報告案の骨格は、次の通りだ。携帯電話の無線局の免許は有効期間が5年以内で、期限の前に申請すれば再免許を受けられる。現行の一斉再免許では、申請時に出す「将来業務計画」の審査は形式的なものにとどまる。案はこれを改め、計画の内容が適正かを審査し、計画は再免許の時に原則公表する。進み具合は定期的に確かめ、免許期間が満了した時点の達成状況を、次の一斉再免許の免許要件にする。
案の根拠は2つある。1つは法的な性格で、報告案は再免許を「既存免許の更新ではなく」新たに免許を与える処分と位置づけ、改めて適正性を審査することが求められるとした。もう1つは整備の実績だ。電波を割り当てるときに認定する「開設計画」の期間が切れると、基地局の開設数が大きく減っている。
1年あたりの基地局開設数(局)
認定期間中満了後
数値で見る(単位: 局)
| 項目 | 認定期間中 | 満了後 |
|---|---|---|
| 3.5GHz帯 | 13,989 | 3,976 |
| 3.7GHz帯 | 19,855 | 8,026 |
| 28GHz帯 | 8,753 | 1,213 |
認定の満了はこれから続く。報告案によると、5G用に初めて割り当てた帯域の認定は2024年4月に満了しており、2027年5月に2.3GHz帯、2028年4月に1.7GHz帯と3.4GHz帯が続く。
楽天「事後的な経営介入」
最も強く反対したのは楽天モバイルだ。同社は将来業務計画の審査について、「抜本的な再考を求めます」と書いた。
理由の1つ目は制度の目的である。同社の見解では、免許の本来の目的は電波を混信から守ることにあり、計画の審査はこれを超えて経営判断に踏み込む。再免許の際に計画の遵守を義務づけることを「事後的な経営介入」と呼んだ。
2つ目は重複だ。電波の利用状況は、電波監理審議会の有効利用評価で毎年確かめている。有効に使っていると評価された帯域の再免許で、計画を重ねて審査し要件とするのは「規制の二重化」だと主張した。有効利用がなされていないと評価された場合に再割当てや改善命令を出す、単純な仕組みへの一本化を求めている。
3つ目は競争条件の差である。楽天モバイルによると、同社が持つのは低い周波数のローバンドが700MHz帯(3MHz幅)のみ、ミッドバンドが1.7GHz帯のみで、東京・名古屋・大阪の地域では20MHz幅の1波にとどまる。一方の先行3社はローバンドで2周波数帯、ミッドバンドで5周波数帯以上を使っているという。同社は、先発の事業者が中核の周波数を特定基地局開設料の負担なく、あるいは極めて限定的な負担で得たと指摘し、4社一律の基準で計画の遵守を義務づければ後発の成長を妨げると訴えた。
特定基地局開設料とは、2019年の電波法改正で設けた仕組みで、周波数の経済的な価値を踏まえた評価額を申請者が計画に記すものだ。楽天モバイルはこの制度の廃止も要望したが、委員会は「意見募集の対象としておりません」と答えている。4社一律を批判する主張についても回答は検討の「参考」にとどまった。ただ案には、割当周波数幅や基地局数といった事業者ごとの状況を勘案し、必要なら個別に条件を付ける項目が元から入っており、楽天モバイルはこの方針には賛同した。
同社は基地局建設が鈍った要因にも触れた。端末の買い替え期間が延びて新技術の普及に時間がかかること、データセンターの建設需要で通信工事の人手が回りにくいことを挙げ、国の調整を求めている。
ソフトバンクとドコモは公表の範囲を問題に
ソフトバンクとNTTドコモは審査の撤回までは求めず、運用の絞り込みを求めた。主な意見と委員会の答えは次の表の通りである。
| 提出者 | 主な意見 | 委員会の考え方 |
|---|---|---|
| NTTドコモ | 計画の公表方法は事前に事業者と協議を。審査基準は需要と比べて過度な目標にしない | 今後の検討の参考 |
| KDDI・UQ | 周波数の区分ごとの審査に賛同。進捗の確認は過度な負担を課さない方法で | 賛同として受領、残りは参考 |
| ソフトバンク・WCP | 計画の一律・全面公表は適当でない。毎年度の個社別の進捗公表は不要 | 今後の検討の参考 |
| 楽天モバイル | 審査の導入を抜本的に再考。「規制の二重化」を排し制度を一本化 | 今後の検討の参考 |
| JTOWER | 基本的な方向性に賛同。屋内の品質とインフラシェアリングも評価を | 賛同として受領、残りは参考 |
ソフトバンクは公表の問題を詳しく論じた。将来業務計画には基地局整備や設備投資の機微な情報が含まれるとして、各社の数値を集約する、数値に幅を持たせる、定性的に書くといった方法を例示した。比較の対象に挙げたのは地上波放送局の再免許で、事業計画そのものが一律に公表される運用ではないとの認識を示し、携帯電話だけに過度な情報公開を強いないよう求めている。
未達の扱いについても主張を展開した。開設計画は一定期間の排他的な免許申請を認める代わりに履行を厳しく求める制度だが、将来業務計画は予測に基づくもので性質が異なると主張した。次の再免許の要件にする場合でも、計画値の未達だけで機械的に判断せず、周波数を実質的に有効利用しているかで総合的に判断すべきだという立場である。個社ごとの数値目標についても「設備投資の方向性を歪める」懸念を挙げて反対した。6Gへの取り組み、インフラシェアリング、仮想移動体通信事業者(MVNO)に関する事項は審査項目にする必要性を慎重に検討するよう求めている。
報告案も公表の負の面を認めている。構成員の意見として、進捗の情報公開の頻度を上げると「寡占市場での事業者間の暗黙の協調」を促しかねないとの指摘を載せた。案は進捗の確認結果について、「競争環境の適正な確保に留意しつつ」原則公表するとしている。
賛成の側は屋内品質や山間部の評価を要望
審査の導入を歓迎した提出者もいる。JTOWERは、開設計画の認定期間が終わった後の法的な位置づけが「実質的に曖昧」だったとして、明確にする方向に賛同した。再免許は認定期間の延長ではないと理解すると書いた同社に、委員会は「ご認識のとおりです」と答えている。
JTOWERはさらに、通信量の大部分が屋内で発生する実態を踏まえ、屋内の通信品質も審査基準に組み込むよう求めた。ドコモも評価の方法に踏み込み、基地局数に加えて無線設備の数(セクタ数)を指標にする案を出した。基地局数が同じでも、通信容量の差を反映できるからだという。
個人の意見には、利用者の立場からの具体的な試算があった。報告案は移動通信の通信量が年1.15〜1.2倍で増えるとの前提を置くが、ある個人は次の免許期間を仮に5年とすると、期間の終わりには現在の約2倍から2.5倍の通信量を収容する必要があると計算し、混雑時の実効速度を測る指標を求めた。同じ意見は、人口カバー率が99%を超えていても面積で見れば通信できない場所が残るとして、面積カバー率や道路・登山道の圏外区間の数を指標に加えるよう提案した。
案が審査基準で十分に勘案するとした「デジタルインフラ整備計画2030」は、5G基地局を2024年度末の30.2万局から2030年度末に60万局へ増やす目標を掲げる。うち30万局はインフラシェアリングによる局とする。足元の整備状況は5G基地局が33万7875局に ミリ波は1年で521局増、27年度5万局目標まで4501局で扱った。
残る論点は未達の扱い
今後の日程は詰まっている。案は次回の情報通信技術分科会で審議される。報告案は、一斉再免許の申請受け付けが2027年4月ごろに始まる予定だとして、制度の枠組みと審査基準を本年度内に整えるよう総務省に求めた。残された期間は約5か月である。周波数を他社へ移す再割当制度の在り方は、2027年春ごろの二次とりまとめで扱う。再割当制度は2022年の電波法改正で導入したもので、有効利用評価の結果が一定の基準を満たさない場合などに発動できる。楽天モバイルはこの場でも、再割当てを促す道筋の明確化を求めていた。
計画を審査し、公表し、次の更新の条件にするという案の方向は妥当だ。電波は有限で、通信網は国の基盤である。認定期間が切れた帯域で基地局の開設数が3.5GHz帯は年1万3989局から年3976局に、28GHz帯は年8753局から年1213局に減った以上、国が免許の機会に各社の計画を確かめる理由はある。
一方で、各社の懸念のすべてが経営上の都合とは言えない。報告案自身が、計画と実績が離れた場合の「正当な理由の判断基準」をある程度示す必要があると構成員の意見として記し、有効利用評価との間で矛盾が生じないよう整合を確保すべきだとの意見も載せた。これは楽天モバイルの「規制の二重化」の主張や、未達の扱いをめぐるソフトバンクの主張と重なる論点である。
各社は審査基準が定まった後に、次の免許期間の計画を作る。総務省は本年度内の制度整備にあたり、どこまで未達なら再免許に影響するのか、公表する項目はどの粒度かを、申請受け付けの前に具体的に示した方がよいのではないか。基準が曖昧なまま計画を求めれば、基地局投資の見通しを立てにくくなるのは各社であり、その先の利用者である。
