会計検査院は11月5日に内閣へ送付した令和7年度決算検査報告で、「国の財政等の状況等」の章に日本銀行の財務の状況を載せた。2025年度(令和7年度)に日銀が金融機関の当座預金に払った利息(補完当座預金制度に係る支払利息)は2兆7104億円で、前年度の1兆2517億円から1兆4587億円増えた。保有する長期国債から得た利息は2兆5133億円で、支払う利息が受け取る利息を上回った。

保有長期国債の含み損は年度末に45兆4414億円となり、前年度末から16兆8186億円増えた。当期剰余金は1兆9263億円に減り、国庫納付金は1兆8300億円と前年度より3210億円少なかった。検査院は、日銀の資産と負債の規模は縮小しているものの「引き続き高水準にある」とし、財務の状況を「引き続き注視していく」と結んだ。

利払いが2.2倍に、国債利息を上回る

日銀は2024年3月に金融政策の枠組みを見直し、金融機関が日銀に預ける当座預金のうち、預けることが義務付けられた額を超える部分(超過準備額等)に年0.1%の利息を付けた。その後、2024年7月に0.25%、2025年1月に0.5%、同年12月に0.75%へと利率を引き上げた。

2025年度は利率が0.5%から0.75%に上がったことなどから、支払利息は2兆7104億円となった。量的・質的金融緩和を始める前の2012年度(平成24年度)は315億円で、約85.8倍にあたる。利息の対象となる超過準備額等は、2025年度の平均で478兆1863億円だった。前年度の515兆9084億円より残高は減ったが、利率の引き上げで支払利息は増えた。

一方の長期国債利息は、前年度から4387億円増えて2兆5133億円だった。表面利率の高い国債の残高が増え、受取利息は3兆5112億円となった。額面より高い価格で買った分を毎年差し引く「利息調整損」は9979億円で、前年度より2751億円縮んだ。保有長期国債の利回りは0.353%から0.448%に上がった。

日銀の長期国債利息と当座預金への支払利息(億円)

長期国債利息支払利息

010,00020,00030,0006,0053152012年度20,74612,5172024年度25,13327,1042025年度
出典: 会計検査院「令和7年度決算検査報告」(日本銀行の財務の状況)
数値で見る(単位: 億円)
項目長期国債利息支払利息
2012年度6,005315
2024年度20,74612,517
2025年度25,13327,104

経常収益は5兆7713億円で、前年度より1兆1955億円増えた。外貨建て資産の為替損益が前年度の908億円の差損から7461億円の差益に転じ、上場投資信託(ETF)の運用益も1兆7409億円に増えた。経常費用は支払利息の増加で3兆4292億円に膨らみ、経常利益は前年度より4501億円少ない2兆3421億円となった。

項目 2012年度 2024年度 2025年度
経常収益 1兆3982億円 4兆5757億円 5兆7713億円
うち長期国債利息 6005億円 2兆0746億円 2兆5133億円
経常費用 2665億円 1兆7835億円 3兆4292億円
うち当座預金への支払利息 315億円 1兆2517億円 2兆7104億円
経常利益 1兆1316億円 2兆7922億円 2兆3421億円
当期剰余金 5760億円 2兆2642億円 1兆9263億円
国庫納付金 5472億円 2兆1510億円 1兆8300億円
日本銀行の損益と剰余金の処分

出典: 会計検査院「令和7年度決算検査報告」、日本銀行「第141回事業年度(令和7年度)決算等について」

国債の含み損45兆円、ETFは57兆円の含み益

日銀は2024年7月と2025年6月に決めた減額計画に沿って、長期国債の買い入れを減らしている。2025年度の買入額は40兆4898億円で前年度より20兆5917億円少なく、償還などで減った額は83兆8478億円だった。この結果、年度末の保有長期国債の帳簿上の価額(貸借対照表価額)は530兆8695億円と、前年度末から43兆3579億円減った。それでも2012年度末の91兆3492億円の約5.8倍ある。

市場金利の上昇で国債の時価は下がり、年度末の時価は485兆4280億円だった。帳簿価額との差の含み損は45兆4414億円で、前年度末の28兆6228億円から膨らんだ。2012年度末は2兆5248億円の含み益だった。日銀は国債を、取得価格と額面の差を満期までの期間で均等にならす「償却原価法」で評価しており、時価の変動は帳簿に表れない。検査院は、満期まで売らずに持てば含み損が「顕在化することはないと考えられる」とした。保有国債の平均の残存期間は6.4年である。

ETFは、2024年3月に新規の買い入れを終え、2026年1月に市場での売却を始めた。売却のペースは年3300億円程度(簿価)と決めていた。年度末の帳簿価額は37兆1214億円で、株価の上昇を映して含み益は57兆0657億円と前年度末から24兆1944億円増えた。日銀は、年度末の保有状況のまま機械的に試算すると、日経平均株価が2万円程度、東証株価指数(TOPIX)が1400ポイント程度を下回ると、ETF全体の時価が帳簿価額を下回るとしている。不動産投資信託(J-REIT)は帳簿価額6649億円、含み益1252億円だった。

ETFの売却ペースについては、10月の金融政策決定会合で見直しを決めた(日銀、政策金利1.25%を据え置き 高田委員は1.5%を提案 展望レポートは物価上振れを警戒)。

損失が上回っても引当金を取り崩さず

日銀には、国債の利息と金利負担の差で生じる収益の振れをならすための「債券取引損失引当金」がある。2015年11月の日本銀行法施行令などの改正で制度を広げ、長期国債利息を収益に、当座預金の超過準備などの有利子負債に払う利息を損失に、それぞれ数えるようにした。収益が損失を上回れば積み立て、下回れば取り崩すことができる。

2025年度は、長期国債利息に所定の比率を掛けた収益の額が2兆1602億円、有利子負債に払った利息2兆7234億円などを合わせた損失の額が2兆8287億円で、損失が上回った。それでも日銀は引当金を取り崩さなかった。検査院の報告によると、日銀はその理由を「今後更なる収益の下振れ及び自己資本の減少が見込まれる中で」、財務の状況や収益の動向を総合的に考えて決めたと説明している。前年度は4727億円を積み立てていた。

一方、為替差益が出たため、外国為替等取引損失引当金には差益の50%にあたる3730億円を積み立てた。

日銀の自己資本は、資本金と法定準備金などの純資産に、この2つの引当金を加えたものである。年度末の自己資本残高は14兆6212億円で、前年度末より4693億円増えた。自己資本比率は、自己資本残高を日本銀行券の平均発行残高(2025年度は117兆4289億円)で割って求める。比率は11.78%から12.45%に上がった。日銀は、自己資本比率が10%程度となることを目途に、おおむね上下2%の範囲で運営するとしている。

国への納付は1兆8300億円に減少

日銀は日本銀行法に基づき、当期剰余金の5%を法定準備金として積み立て、出資者への配当を払った残りを国庫に納める。2025年度は当期剰余金1兆9263億円のうち963億円を法定準備金に積んだ。配当は財務大臣の認可を受けて、払込出資金額の年5%の割合にあたる500万円を払い、残りの1兆8300億円を国に納めた。前年度の2兆1510億円から3210億円減ったが、2012年度の5472億円と比べると3倍を超える。日銀自身は2026年5月27日に、この決算を公表している。

資産と負債の規模も縮んだ。年度末の総資産は663兆0250億円で、前年度末から66兆7418億円減った。負債の中心である当座預金は459兆7432億円で、国債の買い入れ減額などにより70兆6893億円減った。日本銀行券の発行残高は116兆3156億円で、前年度末より2兆3529億円減った。総資産と総負債は、いずれも2012年度末の約4.0倍の規模にある。日銀の当座預金や国債の残高の足元の動きは、日銀の総資産625兆円、前年同期より70兆円減 国債504兆円で国庫短期証券はゼロで伝えている。

金利は2026年9月に1.25%へ 検査院「引き続き注視」

検査院の報告は2025年度までの数字を扱うが、日銀は2026年度に入っても政策金利を上げた。報告の注記によると、日銀は2026年6月に無担保コールレートの誘導目標を1.0%程度に、9月に1.25%程度に引き上げ、超過準備額等に付ける利率もそれぞれ年1.0%、年1.25%とした。2025年度中の0.5〜0.75%より高い。長期国債の買い入れは、2027年1〜3月までは毎四半期2000億円程度ずつ減らし、2027年4月以降は月2兆円程度とする計画である。

日銀は2023年12月の調査論文「中央銀行の財務と金融政策運営」で、中央銀行は一時的に赤字や債務超過になっても政策を運営する能力に支障は生じないとする一方、財務リスクに注目が集まって金融政策を巡る混乱が生じれば、中央銀行や通貨の信認の低下につながるとして、財務の健全性を確保することは重要だとした。大規模な資産買い入れでバランスシートが大きくなる局面では収益が押し上げられ、縮小に向かう出口の局面では当座預金に付ける金利の引き上げなどで収益が減りやすいとも整理している。

日銀の利益は、法定準備金などを除いて国庫に入る。2025年度の決算は、当座預金への利払いの増加が経常利益を4501億円減らし、国への納付額も3210億円減らした。検査院は、国債の買い入れ減額とETFの売却を日銀が進めていることを踏まえ、資産と負債は「引き続き高水準にある」とし、財務の状況を「引き続き注視していく」とした。