国民健康保険(国保)に加入する子どもの保険料のうち、人数に応じて掛かる「均等割」を5割軽減する措置の対象が、2027年4月1日に未就学児から高校生年代まで広がる。厚生労働省の見込みでは、軽減を受ける子どもは約50万人から約180万人に増える。政府は11月6日の定例閣議で、この拡充を定めた健康保険法等の一部を改正する法律(令和8年法律第31号)の施行に伴う関係政令を決定した。
拡充は、6月5日に公布された改正法に盛り込まれた。改正後の国民健康保険法は、高校生年代を「18歳に達する日以後の最初の3月31日以前」と書き表している。18歳の誕生日を迎えた後、最初の年度末までが対象になる。
所得と関係なく掛かる均等割 子どもの分を半分に
国保の保険料は、世帯の所得に応じて掛かる「所得割」と、加入者の人数に応じて掛かる「均等割」などを足して決まる。所得の無い子どもでも、加入していれば1人分の均等割が掛かる。子どもの人数が多い世帯ほど、保険料の合計は増える仕組みだ。
この負担を減らすため、2022年4月に未就学児の均等割を5割軽減する措置が始まった。軽減の分は公費で賄い、内訳は国が2分の1、都道府県と市町村が4分の1ずつである。厚労省は今回の拡充の理由を「子育て世帯の更なる負担軽減のため」と説明している。
対象の年齢は、小学校入学前から高校卒業の年代まで12年分延びる。厚労省の資料によると、軽減対象者は未就学児だけの現在が約50万人、高校生年代までに広げると約180万人で、増加分は約140万人である(いずれも概数)。
軽減の範囲は均等割に限られる。所得割は対象にならない。国民健康保険税を採用している市町村でも同じ軽減が入り、厚労省の概要は「保険料(税)」と併記している。
手続きについては、現行の未就学児の軽減は申請が要らない。新宿区、名古屋市、大阪市はいずれも申請不要と案内している。高校生年代に広げた後の手続きを定めた資料は、今回開いた範囲では確認できていない。
市町村の財源について、改正後の法律は、軽減した額の総額を基礎に算定した額を一般会計から国保の特別会計へ繰り入れるよう市町村に義務付けている。拡充に要する公費の総額は、今回開いた資料では確認できていない。
低所得世帯は最大8.5割の軽減に
所得が一定以下の世帯には、これとは別に均等割を7割、5割、2割軽減する制度がある。子どもの5割軽減は、この軽減を適用した後の額に重ねて掛かる。たとえば7割軽減の世帯では均等割が元の3割になり、その半分が減るので、元の額の1.5割が残る。軽減割合に直すと8.5割だ。
| 世帯の所得による軽減 | 子どもの均等割の軽減割合 |
|---|---|
| なし | 5割 |
| 2割 | 6割 |
| 5割 | 7.5割 |
| 7割 | 8.5割 |
出典: 厚生労働省「健康保険法等の一部を改正する法律の概要」、新宿区「保険料の減免について」
現在この割合を適用されるのは未就学児だけで、2027年4月からは高校生年代までの子どもが同じ扱いになる。所得の基準は、2026年度の名古屋市の案内では、7割軽減が「43万円+(給与所得者等の数-1)×10万円」以下の世帯である。5割軽減はこの額に被保険者1人につき31万円を、2割軽減は1人につき57万円を足した額が上限になる。
横浜市なら1人年2万7125円 2026年度の料率で試算
減る額は、市町村の均等割の額で決まる。2026年度の料率を当てはめて試算すると、次のようになる。
横浜市の均等割は、医療分が4万870円、支援分が1万3380円で、子ども1人あたり合計5万4250円である。5割軽減なら年2万7125円減る。名古屋市は医療分が5万591円、支援金分が1万5784円で合計6万6375円となり、減額は年3万3187円余りだ。高校生年代の子どもが2人いる世帯なら、減額も2人分になる。
この試算は、所得による軽減の無い世帯で1年間加入した場合のものである。2027年度の料率は決まっていないため、実際の額はこの数字と異なる。
均等割にはほかに介護分と子ども分がある。介護分は40歳から64歳までの介護保険第2号被保険者に掛かるもので、子どもには掛からない。子ども分は、18歳未満の被保険者の均等割がすでに全額軽減されている。横浜市はこの軽減分について「18歳以上の被保険者で負担します」と案内しており、5割軽減が公費を財源とする点と仕組みが異なる。
国保組合の補助率と基金の取り崩しも見直し
同じ2027年4月1日には、国保の財政に関わる2つの見直しも施行される。
1つは国民健康保険組合(国保組合)への国庫補助である。国保組合は同種の事業や業務に従事する人でつくる保険者で、国は医療給付費などの13%から32%を定率で補助している。組合の平均所得が低いほど率は高く、150万円未満で32%、240万円以上で13%だ。改正後は、13%の区分の組合のうち、次の3つをすべて満たすところに例外の補助率12%または10%を適用する。保険料負担率(被保険者1人あたりの保険料を組合の平均所得で割った値)が低いこと、積立金が多いこと、医療費適正化などの取り組みの実施状況が低調であることだ。積立金の条件には、経過措置として被保険者数3000人以上という要件が付く。
もう1つは、各都道府県に置かれた財政安定化基金の使い道である。基金は2018年度に国費で設置され、本体基金分として2000億円を造成した。本体基金分はこれまで、保険料の収納不足や給付費の増加で財源が不足した場合に使うものだった。厚労省の資料によると、本体基金分の保有割合が95%以上の都道府県は41ある。改正後は、納付金(保険料)を抑えるための取り崩しを認め、積み戻しの期間も従来の3年間より長くできるようにする。
6日の政令、本文は未公表
11月6日の閣議案件には「健康保険法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係政令の整備等に関する政令(決定)」と記載された。7日朝の時点で、この政令の本文は官報と厚労省の法令ページに掲載されておらず、本紙は条文を確認できていない。
厚労省は8月27日から9月26日まで、題名のよく似た政令案の意見を募集していた。ただ、案の題名は「法律の一部の施行に伴う」となっており、閣議案件の題名とは「一部の」の有無が異なる。両者が同じ政令かどうかは確認できていない。このため本記事は、政令が定める具体的な内容には触れず、改正法の条文と厚労省の概要資料に基づいて書いた。
改正法にはほかにも、医療費と保険料に関わる見直しが含まれる。妊娠・出産の分野は「出産費用の新給付、12月めどに水準とりまとめ 分娩費は保険から施設へ直接支払い」、75歳以上の保険料は「75歳以上の保険料、株の配当を反映へ 2029年8月から窓口負担も 厚労省が工程案」で扱っている。施行日は項目ごとに異なり、厚労省の概要によると、OTC医薬品(薬局で買える市販薬)と代替性が特に高い薬剤の負担を見直す「一部保険外療養」は公布後1年以内、出産の給付体系の見直しは公布後2年以内に政令で定める日とされている。
