EUの統計機関ユーロスタットは9月25日、2026年8月のEUのパッケージ旅行の価格が前年同月より3.2%上がったと公表した。物価全体の上昇率3.2%とちょうど同じ水準で、旅行商品が平均並みの値上がりにとどまったことを示す。同じ月の航空旅客運賃は0.4%下落し、インフレ率を大きく下回った。

航空運賃は振れ幅が大きく、国ごとの差も極端

ユーロスタットによると、パッケージ旅行と航空運賃はいずれも2025年1月以降、前年同月比の動きが大きく振れている。振れが激しいのは航空運賃のほうだ。2025年4月に13.7%上がったあと、翌月には3.2%下がった。2026年も1月は2.9%の下落で始まり、4月に4.7%下落、5月には8.1%の上昇へ転じ、その後は小幅な上昇が続いた。

パッケージ旅行は2025年1月に8.3%、2月に8.0%と高い伸びで始まり、4月に7.7%上昇の山をつけたあと、6〜10月はインフレ率に近い水準まで落ち着いた。2026年4月には0.5%の下落となったが、その後は再び上昇に戻っている。

EU全体の平均は落ち着いていても、国別では差が大きい。2026年8月の航空運賃は、ギリシャが前年同月比16.3%、アイルランドが14.4%上がった。反対に10か国では下がっており、下落幅が最も大きかったスロバキアは61.2%安だった。残りの下落国はスペインの15.8%安からリトアニアの0.9%安までの幅に収まる。

パッケージ旅行はベルギーが16.2%高で最も上がり、ポルトガルが14.3%高、スウェーデンが12.8%高、リトアニアが12.3%高、ルーマニアが11.9%高と続いた。下がったのは4か国で、エストニアが21.1%安、スペインが5.2%安、イタリアが4.8%安、アイルランドが0.4%安だった。

日本は海外旅行だけが突出して上がる

日本の数字はこれとかなり違う。総務省統計局が9月18日に公表した2026年8月分の消費者物価指数(2025年=100)をみると、外国パック旅行費の指数は119.2で、前年同月の108.7から9.7%上がった。総合指数の上昇率1.9%の約5倍の速さだ。伸びは2026年6月の1.7%、7月の5.6%から月を追って加速している。

一方、航空運賃の指数は111.3で、前年同月の111.3とほぼ変わらなかった。宿泊料は106.8で、前年同月の108.3から1.4%下がっている。国内の宿泊が値下がりし、航空運賃が横ばいで、海外旅行のパッケージだけが二桁近い上昇という構図になっている。

同じ期間に、円の対ドル相場は1ドル147円64銭から158円81銭へ動いた。日本銀行の東京市場ドル・円スポット(17時時点)の月中平均で比べた値で、円は7.6%下落している。海外旅行の商品は現地での宿泊や食事、移動の費用を含むため、円建ての販売価格には為替の動きも反映される。

家計の中での重みは小さい

ただし、これらの品目が家計全体に占める割合は小さい。消費者物価指数のウエイトは、外国パック旅行費が1万分の22、航空運賃が24で、宿泊料の118を下回る。8月の総合指数が前年同月比1.9%の上昇にとどまったのは、こうした重みの差もある。物価全体の内訳は8月の消費者物価、生鮮食品を除く上昇率は1.7%に鈍化 電気代とガソリンが前年より安く 一方でキャベツは45.0%高で扱った。旅行する人にとっては大きな値上がりでも、平均的な家計の支出に与える影響は限られる、という読み方になる。

「旅行した時」ではなく「買った時」の値段

数字を読むうえで注意点がある。ユーロスタットは今回の公表に、このデータがパッケージ旅行を購入した時点の価格変動を反映したもので、旅行する時点のものではないと注記している。夏休みに出かけた人が春に予約していれば、その値段は春の統計に入る。8月の数字は、8月に旅行した人が払った額ではなく、8月に旅行商品を買った人が直面した値段の変化だということになる。

集計の対象は、EU共通の物価指標である消費者物価調和指数(HICP)に使われる分類のうち、航空旅客輸送(CP0733)とパッケージ旅行(CP098)である。パッケージ旅行には移動・食事・宿泊・ガイドなどを一括した商品や、半日・1日の小旅行、巡礼旅行も含まれる。EUの統計をめぐっては、輸送手段別の貿易統計を扱ったEUの輸入、重さの73.3%を船が運ぶ 金額では50.2% 航空は重さ0.3%なのに金額は20.7% 日本は貿易量の99.5%が海上輸送のように、日本の統計と並べると違いが見えることが多い。