公的年金の積立金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は11月6日、2026年度第2四半期(7〜9月)の運用状況(速報)を公表した。収益率はマイナス1.65%、収益額はマイナス5兆2533億円だった。国内外で国債の金利が上がって債券の値が下がり、円高で外貨建ての資産も円に換算した額が減った。外国債券だけで5兆2301億円の損失を出した。9月末の運用資産額は314兆3876億円で、6月末の317兆7596億円から3兆3720億円減った。

4資産のうちプラスは国内株式だけ

GPIFは積立金を国内債券、外国債券、国内株式、外国株式の4つの資産に分けて運用している。7〜9月の資産ごとの結果は、国内株式だけがプラスだった。

外国債券の収益率はマイナス6.52%、収益額はマイナス5兆2301億円で、全体の赤字額とほぼ同じ額を外国債券で失った。国内債券はマイナス1.80%で1兆4452億円の損失、外国株式はマイナス1.86%で1兆4602億円の損失だった。国内株式はプラス3.71%で、2兆8822億円の利益を出した。4資産の収益額を足すとマイナス5兆2533億円になる。

GPIFの資産別の収益額(2026年7〜9月)(兆円)

国内債券-1.45外国債券-5.23国内株式2.88外国株式-1.46
億円単位の公表値を兆円に直した。運用手数料等を差し引く前の額出典: GPIF「2026年度第2四半期運用状況(速報)」
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項目兆円
国内債券-1.45
外国債券-5.23
国内株式2.88
外国株式-1.46

各資産の収益率は、GPIFが運用成績を比べる目安にしている市場の指数(ベンチマーク)の動きとほぼ同じだった。7〜9月の指数の収益率は、国内債券(NOMURA-BPI「除くABS」)がマイナス1.85%、外国債券(FTSE世界国債インデックス、ヘッジなし・円ベース)がマイナス6.65%、国内株式(TOPIX配当込み)がプラス3.79%、外国株式(MSCI ACWI、円ベース・配当込み)がマイナス1.86%だった。

収益額には、保有する債券の利子と株式の配当として受け取った1兆2967億円が含まれる。残りは売買で確定した損益と、期末の時価で評価した損益(評価損益)を合わせたものだ。積立金のうち厚生年金の分に按分した収益額は、マイナス5兆147億円だった。

国内外で国債の金利が上昇、円高も重なる

GPIFは公表資料で、7〜9月の市場について、不安定な中東情勢を受けて原油価格が再び上昇に転じ、AI投資に関連する品目の価格上昇もあって、世界的にインフレの上振れリスクが高まったと説明した。日本銀行、米連邦準備制度理事会(FRB)、欧州中央銀行(ECB)がそれぞれ9月に利上げしたことと、拡張的な財政政策への見方などから、国内外で幅広い年限の国債の金利が上昇したとしている。日銀は9月18日、無担保コール翌日物金利の誘導目標を1.25%程度へ引き上げた(日銀、政策金利を1.00%から1.25%程度へ引き上げ 賛成7・反対2 借入金利が同じだけ上がると1社平均で年46万円の利息負担増)。

債券は金利が上がると値が下がる。GPIFが参考に示した指標では、日本の10年物国債の利回りは6月末の2.68%から9月末に3.07%へ、米国の10年物国債は4.47%から5.28%へ、ドイツの10年物国債は2.86%から3.59%へ上がった。

為替は円高に動いた。GPIFは、日米の円買い協調介入の影響などもあって、対ドル、対ユーロともに円高になったと説明している。1ドルは6月末の162円53銭から9月末に157円14銭、1ユーロは185円82銭から178円48銭になった。財務省の公表によると、7月30日から8月26日までの為替介入の額は15兆3993億円で、8月27日から9月28日までは0円だった(9月の為替介入は0円、7〜8月は15兆3993億円 片山財務相「日米協調介入の方針は一切変わらない」)。円高になると、外貨建ての債券や株式を円に換算した額は減る。

指標 2026年6月末 2026年9月末
日本の10年物国債利回り 2.68% 3.07%
米国の10年物国債利回り 4.47% 5.28%
ドイツの10年物国債利回り 2.86% 3.59%
TOPIX 3994.76 4108.65
日経平均株価 7万62円32銭 6万6753円72銭
NYダウ 5万2319.20ドル 5万906.05ドル
ドル円 162円53銭 157円14銭
ユーロ円 185円82銭 178円48銭
GPIFが7〜9月の市場環境として示した主な指標出典: GPIF「2026年度第2四半期運用状況(速報)」参考資料

株式について、GPIFは、世界的な金利上昇などが「重石」となるなかで、4〜6月に相場をけん引したハイテク銘柄の上昇ペースが鈍り、全体として小幅な上昇にとどまったと説明した。外国株式は現地通貨建てではプラスだったが、円建てではマイナスになったとしている。円高で、株価の上昇分を上回る目減りが出た形だ。

4〜9月では18兆円のプラス、GPIFは「長期的に判断」

7〜9月の赤字は、4〜6月の大きな黒字の後に出た。4〜6月の収益率はプラス8.20%、収益額はプラス24兆895億円だった。この結果、2026年度上半期(4〜9月)の累計は、収益率がプラス6.42%、収益額がプラス18兆8363億円になった。

上半期の資産別では、国内株式がプラス18.73%で13兆1576億円、外国株式がプラス14.77%で10兆8264億円の利益を出した。一方、国内債券はマイナス2.89%で2兆2930億円、外国債券はマイナス3.59%で2兆8547億円の損失だった。株式の値上がりが、債券の値下がりを上回っている。

前の2025年度は、収益率がプラス16.47%、収益額がプラス41兆3995億円だった。GPIFが市場での運用を始めた2001年度から2026年度上半期までの累積の収益額はプラス215兆7669億円で、年率に直した収益率はプラス4.83%になる。累積の収益額のうち、利子と配当の収入は64兆6629億円を占める。

年度単位で見ると、2001年度から2025年度までの25年度のうち、収益額がマイナスだった年度は7つある。最も大きかったのは2008年度のマイナス9兆3481億円(収益率マイナス7.57%)で、2019年度のマイナス8兆2831億円(同マイナス5.20%)が続く。

四半期ごとの収益額は、各期末の時価で評価した値で、市場の動きによって変わる。GPIFは公表資料の冒頭で「年金積立金は長期的な運用を行うものであり、その運用状況も長期的に判断することが必要」としたうえで、国民への情報提供のために四半期ごとの速報を出していると説明している。数値は速報値で、年度の業務概況書などで変わる場合がある。

4資産に25%ずつ、9月末の構成は許容幅の内側

GPIFの資産の配分は「基本ポートフォリオ」で決まっている。2025年4月から適用している現在の基本ポートフォリオは、4つの資産に25%ずつ振り分ける。実際の構成がずれてよい幅(乖離許容幅)は、国内債券、国内株式、外国株式がそれぞれ上下6%、外国債券が上下5%で、債券全体と株式全体でもそれぞれ上下9%の幅を設けている。

年金特別会計で管理する約5.4兆円を含めた年金積立金全体の9月末の構成は、国内債券が26.49%(84兆7132億円)、外国債券が24.05%(76兆9007億円)、国内株式が24.80%(79兆2902億円)、外国株式が24.67%(78兆8761億円)だった。4資産とも許容幅の内側にある。インフラや不動産などのオルタナティブ資産は、それぞれの性質に応じて4資産に振り分けて管理しており、全体に占める割合は1.72%(上限5%)だった。

この配分は、厚生労働大臣が示した第5期中期目標(2025年度からの5年間)に沿って決めた。目標は、運用利回りから名目賃金の上昇率を差し引いた「実質的な運用利回り」で、長期的に1.9%を最低限のリスクで確保することだ。GPIFは、年金財政上必要な利回りを満たしつつ最もリスクの小さい組み合わせを選んだ結果、資産の構成割合は第4期と同じになったと説明している。

7〜9月の結果は、資産を4つに分けて持つ配分の性質をそのまま映した。金利が上がれば債券の値が下がり、円高になれば外貨建て資産の円換算額が減る。今回は金利上昇と円高が同時に起き、外国債券がその両方の影響を受けた。一方で国内株式は円高の影響を受けず、TOPIXの上昇とともにプラスを保った。

10〜12月期の運用状況は、次の四半期の速報で公表される。