政府は11月6日、首相官邸で沖縄政策協議会を開いた。古謝玄太沖縄県知事は高市早苗首相宛ての「沖縄振興及び基地負担の軽減に関する要請」を提出し、2027年度(令和9年度)の沖縄振興予算の確保、揮発油税等の軽減措置の延長、普天間飛行場の返還期日の明確化など、4分野・小項目で計28の事項を求めた。首相は出席した各大臣に対し、要望を「令和9年度予算で対応できるもの」と「中長期的に取り組む必要があるもの」などに分けて検討するよう求めた。

閣議後の15分、首相「基地負担軽減を目に見える形で」

内閣府が公表した議事次第によると、協議会は閣議終了後の午前8時15分をめどに、官邸4階の大会議室で15分間の予定で開かれた。議事は「沖縄県知事からの要請について」の1件で、配布資料は県の要請書だけだった。

官邸が公表した冒頭の挨拶で、首相は、10月7日に古謝知事と会った際に開催の要望を受けたと説明した。続けて、10月3日に起きた強盗殺人事件で米海兵隊員が起訴されたことに触れ、「本件事案の対応、このような事件の発生防止につき、政府として、しっかりと取り組んでまいります」と述べた。

振興策では、沖縄の地理的な特性と「日本一高い出生率」を挙げ、沖縄振興策を「国家戦略として、総合的・戦略的に推進していくことが重要」と述べた。10月30日に知事から「医療・バイオ産業分野における地域産業クラスター計画」の説明を受けたことにも触れ、政府の「地域未来戦略」の枠組みも使って「強い沖縄経済」の実現を支えるとした。

基地については「戦後80年以上を経た今も、多くの『米軍施設・区域』が集中」していることを「重く受け止めて」いるとし、「沖縄の『基地負担軽減』を目に見える形で実現できるよう、力を尽くしてまいります」と述べた。そのうえで、各大臣に知事の要望を「令和9年度予算で対応できるもの」「中長期的に取り組む必要があるもの」など内容に応じて検討するよう指示した。

木原稔官房長官は同じ日の午前の記者会見で、協議会の様子を説明した。知事の要請に対し、葉梨沖縄・北方担当相、茂木敏充外相、小泉進次郎防衛相が「御要請をしっかりと受け止める」旨を述べた。木原氏は沖縄基地負担軽減担当相として、基地負担の軽減は「政府の最重要課題の一つ」であり、「できることは全て行う」との基本姿勢で取り組むと述べ、協議会の主宰者として出席の閣僚に「特段の協力」を求めたという。

要請書は4分野、小項目で28

要請書は、沖縄県が国土面積の0.6%にとどまる一方、在日米軍専用施設面積の約70.3%を抱えているとし、航空機事故や騒音、自然環境の破壊、米軍人等による事件・事故が県民生活に影響を及ぼしていると述べている。そのうえで「沖縄振興策の更なる拡充と基地負担の軽減が必要」として、次の4分野を要請した。

分野 小項目の数 主な中身
令和9年度予算 8 沖縄振興予算の所要額確保、医療・バイオ産業クラスター形成の支援、鉄軌道を含む公共交通の導入支援
令和9年度税制 2 税制改正の着実な実現、揮発油税等の軽減措置の確実な延長
長期的発展 8 県民所得倍増、国立自然史博物館の設立、那覇空港等の機能拡張
基地負担軽減 10 普天間の返還期日の明確化、日米地位協定の抜本的見直し、PFOS等の問題の解決
沖縄県の要請書(2026年11月6日)の分野と小項目の数出典: 沖縄県「要請書」(内閣府掲載)

予算の分野では、2027年度予算を含めて、沖縄振興計画の期間である2031年度(令和13年度)までの沖縄振興予算と関連予算の所要額を確保するよう求めた。小項目には、観光・健康・環境・海洋・起業を挙げた「新5K経済」の振興と国土強靱化の支援(ソフト交付金・ハード交付金の所要額確保)、県が掲げる「GW2050 PROJECTS」の早期実現への支援、子育て支援とこどもの貧困対策、市町村事業の財源(沖縄振興特定事業推進費、沖縄離島活性化推進事業費、北部振興事業費)の確保、離島で暮らすためのコストの低減、離島航空路の機材更新への支援が並ぶ。

税制の分野では、揮発油税等の軽減措置の延長を「特に」と名指しした。延長に当たっては「できる限り早期に沖縄振興特別措置法を根拠として同様の措置を講ずること」を求めている。長期的発展の分野には、鉄軌道を含む南北縦断の公共交通機関の早期事業化、海洋資源調査に関する国の機関の設置、離島航路の船舶更新への支援も入った。

基地は10項目、普天間の「期日の明確化」を求める

基地負担軽減の10項目の先頭は、普天間飛行場の「一日も早い危険性の除去及び早期返還に向けた期日の明確化」と、普天間飛行場負担軽減推進会議の早期開催だった。2番目には、嘉手納飛行場より南の施設・区域の返還と返還期日の明確化、在沖海兵隊や航空機訓練の国外移転を置いた。

ほかに、施設・区域の共同使用の推進、米軍人等による事件の再発防止、日米地位協定の抜本的な見直し、嘉手納飛行場でのパラシュート降下訓練の禁止と旧海軍駐機場の使用禁止、米軍基地周辺で検出されているPFOS等の問題の解決、嘉手納・普天間などでの航空機騒音の軽減と事故の再発防止、訓練水域・空域の削減を求めた。10番目は、普天間飛行場代替施設の建設に伴う影響について「地元住民の要望に対する適切な対応」で、移設工事そのものの中止は項目に無い。古謝知事が辺野古への移設を容認する立場を示してきたことは、古謝玄太知事、辺野古移設の容認を所信表明でも明言 沖縄県知事選で玉城氏に14万票差で伝えている。

嘉手納の米軍機の訓練を国内の他の基地へ移した直近の例は、嘉手納の米軍機、10月19日から築城基地へ訓練移転 築城への移転は12回目 日米合同委員会が土地約2万9000平方メートルの限定使用を9月17日に承認で伝えている。要請書が求めたのは、訓練の「国外移転等」だ。

1996年に設置、内閣府の記録では2013年以来

沖縄政策協議会は、1996年(平成8年)9月10日の閣議決定「沖縄問題についての内閣総理大臣談話」に基づき、同年9月17日の閣議決定で置かれた。設置の文書は、米軍の施設・区域が沖縄県に集中し住民の生活環境や地域振興に大きな影響を及ぼしている現状を踏まえ、基地の諸問題と沖縄の振興策を協議する場と位置付けている。主宰は官房長官で、必要に応じて沖縄担当相が代行する。構成員は官房長官、沖縄担当相、外務、防衛、財務、国土交通などの各大臣と沖縄県知事だ。

内閣府のページによると、協議会は1996年から2005年まで第1回から第26回まで開かれ、その後2010年9月10日に再開された。2025年時点の内閣府のページ(Internet Archive の保存版)は、直近の開催を2013年12月17日としていた。

その2013年12月17日の会合には、安倍晋三首相と閣僚が出席し、仲井眞弘多知事が米軍基地負担の軽減と2014年度の沖縄振興予算などを要請した。議事概要によると、安倍首相は「最大限実現するよう努力する」旨を述べた。このとき経済産業相として出席していた茂木敏充氏は、今回は外相として出席した。

古謝知事は10月6日の県議会での就任あいさつで、「沖縄政策協議会」の早期の開催を国に求め、沖縄振興と基地負担軽減を「政府全体の最優先課題として協議する」と述べていた。今回の開催はこの求めに応じたものになる。

首相発言にない項目、予算編成でどこまで答えるか

首相の挨拶は、振興策では知事のクラスター計画に具体的に触れたが、基地については「基地負担軽減を目に見える形で」と述べるにとどまり、要請書の先頭にある普天間飛行場の返還期日にも、日米地位協定にも言及しなかった。木原官房長官の説明も「できることは全て行う」という基本姿勢の確認だった。

首相は検討を「令和9年度予算で対応できるもの」と「中長期的に取り組む必要があるもの」に分けるよう求めた。予算と税制の10項目は、2027年度の予算と税制改正で答えが出る。とりわけ揮発油税等の軽減措置の延長は、県が根拠法の切り替えまで具体的に求めており、政府が税制改正の中でどう扱うかで、協議会の成果が数字として見える。

一方、普天間の返還期日、地位協定の見直し、訓練の国外移転は、日本政府だけでは決められず、米国との協議が要る。首相が言う「1つ1つ着実に結果を出していく」の中に、これらの項目がどう位置付けられるのか。政府は、どの項目を予算で、どの項目を中長期の課題として扱うのかを、知事と県民に分かる形で示す必要がある。協議会を一度開いて終わりにせず、検討の結果を同じ場で県に返すべきだ。内閣府の記録で2013年以来となった開催の意味は、そこで問われる。