統合幕僚監部は9月18日、自衛隊が拡大ASEAN国防相会議(ADMMプラス)の人道支援・災害救援訓練に参加すると発表した。期間は9月21日から25日までで、実施場所はインドネシア。参加するのはADMMプラスの18か国で、自衛隊からは陸上総隊、北部方面隊、統合作戦司令部、情報本部が加わる。
訓練項目は「災害医療活動」と「国際緊急援助活動における多国間調整」の2つ。公表資料は令和8年度の「国際平和協力訓練」と位置づけ、目的を「国際緊急援助活動に係る自衛隊の統合運用能力の向上を図るとともに、参加国軍等との信頼関係を強化し、望ましい安全保障環境の創出に寄与する」としている。
参加部隊に新設の「統合作戦司令部」
派遣部隊のうち統合作戦司令部は、2025年3月に市ヶ谷へ置かれたばかりの常設組織である。
令和8年版防衛白書によると、この司令部ができるまでは、陸・海・空自のうち2つ以上の部隊にまたがる作戦を行う際、必要に応じて「統合任務部隊」をそのつど臨時に編成していた。この方式では、事態の状況や推移に応じて素早く態勢を組み替えることが難しく、平素から陸・海・空・宇宙・サイバー・電磁波をまたぐ「領域横断作戦」に必要な態勢を整えておくことも難しかった。常設の司令部を置いたことで、陸・海・空自による統合作戦の指揮を平素から一本化でき、領域横断作戦の能力を日ごろから練成できるようになったと白書は説明する。
同じ白書は、自衛官の充足率が88.1%にとどまることも記している(自衛官の充足率88.1% 定員24万7154人に対し現員21万7701人 最前線を担う「士」は57.8%にとどまる 令和8年版防衛白書)。
ともに名を連ねた情報本部は、防衛省の中央情報機関にあたる。陸上総隊は陸上自衛隊の部隊を一元的に指揮する組織、北部方面隊は北海道を担当する方面隊である。
ADMMプラスは18か国、発足は2010年10月
ADMMプラスは、ASEAN加盟10か国による国防相会議(ADMM)に、域外の8か国を加えた枠組みで、2010年10月に発足した。域外8か国は日本、オーストラリア、中国、インド、ニュージーランド、韓国、ロシア、米国。閣僚会合の下に、高級事務レベル会合(ADSOMプラス)、その作業部会、分野別の専門家会合(EWG)が置かれている。
日本は第5期にあたる2024年から2027年まで、フィリピンとともに海洋安全保障の専門家会合で共同議長を務めている。2025年11月にマレーシアで開かれた第12回ADMMプラスでは「ADMMプラス創設15周年記念共同声明」が採択された。
3年前の同種演習は人員約40人とC-130が1機
防衛白書が載せる実績一覧によると、同じ枠組みの人道支援・災害救援演習は2023年10月14日から21日まで、インドネシアのジョグジャカルタ特別州で行われた。参加したのはADMMプラスの18か国とASEAN事務局(実務者級)で、日本は統合幕僚監部、陸上自衛隊、航空自衛隊から人員約40人とC-130輸送機1機を出している。
当時はまだ統合作戦司令部が存在せず、統合幕僚監部が名を連ねていた。今回の公表資料には人員や装備の規模が記されていないため、派遣の規模が3年前と比べて増えたかどうかは、この資料からは分からない。
実際の派遣は国際緊急援助隊法に基づく
訓練が想定する国際緊急援助活動は、国際緊急援助隊の派遣に関する法律(国際緊急援助隊法)に根拠を持つ。海外、とくに開発途上にある地域で大規模な災害が起きたときに、救助活動や医療活動などを行う国際緊急援助隊を派遣するための仕組みだ。国内の災害で自衛隊が出動する災害派遣とは、根拠となる法律が別になる(自衛隊の災害派遣は令和7年度339件で過去10年最少 8割超が離島からの急患輸送 山火事対応は39件で5年最多)。
自衛隊の部隊を出す場合は、外務大臣が特に必要があると認めたときに防衛大臣と協議し、その協議に基づいて防衛大臣が、救助活動、医療活動、人員または物資の輸送などを行わせることができる。被災国内に治安上の危険があり、隊員の生命や身体、機材を守るために武器の使用が必要と認められる場合には、そもそも国際緊急援助隊を派遣しない扱いになっている。このため、被災国内で武器を携行することはない。
