中部電力は11月6日、経済産業相から電気事業法に基づく業務改善命令を受けたと発表した。再発防止策の策定と実行、外部人材を使った検証体制の構築を求める内容で、業務改善計画の提出期限は11月30日、実行状況の報告期限は2027年3月31日である。同じ日には、浜岡原子力発電所(静岡県御前崎市)1号機・2号機の廃炉費用の請求をめぐり、認可法人の使用済燃料再処理・廃炉推進機構(NuRO)からも勧告を受けた。同社は「真摯に受け止めており、今後、本命令の内容を確認し適切に対応してまいります」とコメントした。

命令は再発防止策・外部の検証・改善計画の3項目

中部電力が公表した概要によると、命令は3つの項目からなる。

1つ目は、再発防止策を作り、実施の方法と時期を明確にしたうえで実行することだ。盛り込む事項として、役職員の責任の所在の明確化、法令順守体制の抜本的な強化と原子力部門など専門性の高い部門の閉鎖性の排除、牽制(けんせい)機能と内部通報への対応の抜本的な強化、各部門の業務運営体制の確立、これらを定着させる新たな経営管理体制の構築の5つを挙げた。

2つ目は、再発防止策が実際に機能しているかを、外部人材を使った審査体制も含めて客観的に検証する体制を作ることだ。不十分と認められれば追加の改善策を作って実行し、原子力規制委員会の今後の指導や指示を踏まえた追加策も求めた。

3つ目が期限である。具体策の実施方法と時期を含む業務改善計画を11月30日までに出し、決定と実行の状況を2027年3月31日までに報告する。その後も経済産業省の確認と報告の求めに対応し続けるよう命じた。

電気事業法第27条第1項は、もともと送配電事業者に業務の改善を命じる規定で、第27条の29が発電事業者にも当てはめている。命令に違反すると、第118条により300万円以下の罰金の対象になる。

同社の発表文は、命令の原因となった事案を名指ししていない。経済産業省の発表資料は本紙が今回確認できておらず、この記事の命令の内容は中部電力が公表した概要に基づく。命令に至る手続きの経過は「中部電力への業務改善命令、経産省が電取委に意見照会 同社は弁明せず 浜岡の地震動不正」で報じた。

廃炉機構の勧告は計画の報告と費用の精算を求める

NuROの勧告は4項目ある。再発防止策の具体的な実行計画を11月30日までに作ってNuROへ報告し、確実に実施して状況を適宜報告すること、2024年度の廃炉費用をNuROと協議のうえ速やかに精算すること、2025年度以降の請求に適正に対応すること、NuROが別紙で示した改善策に適切に対応することである。

NuROは、もともと使用済燃料の再処理を担う認可法人で、2023年5月の法改正で廃炉の推進も業務に加わった。法律の第49条は、原発を持つ事業者への助言、指導、勧告と、廃炉拠出金の収納、廃炉の実施に必要な費用の支払いを業務に定めている。

NuROは今回、自らの改善策も示した。現場へ出向いて拠出金制度を説明し直す、コンプライアンス相談窓口を請負会社にも周知する、工事の契約内容が分かる書類の提出を求めて必要なら現地で確かめる、不適切な対応をした事業者には直接の担当以外の部署が確認した資料を出させる、といった内容である。

項目 業務改善命令 勧告
出した側 経済産業相 NuRO
根拠 電気事業法 再処理等・廃炉推進の法律
求める計画 業務改善計画 再発防止策の実行計画
提出期限 11月30日 11月30日
その後の報告 2027年3月31日まで、以後も求めに応じて 実施状況を適宜
11月6日に中部電力が受けた命令と勧告の比較

出典: 中部電力「経済産業大臣からの業務改善命令の受領について」「使用済燃料再処理・廃炉推進機構からの勧告の受領について」

計画に合わせて工事報告書を書き換えた廃炉費用の請求

勧告の原因は、浜岡1号機・2号機の解体撤去工事をめぐる不適切な費用請求だ。中部電力が10月29日に出した報告によると、2024年度の請求案件36件を調べた結果、社員が請負先の中部プラントサービスに検収金額を指示するなどした不適切な検収が16件あった。過大な検収は約2.5億円、過小な検収は約0.2億円だった。工事報告書の書き換えは、9月25日に公表した18件から22件に増えた。

背景には、2024年度に始まった拠出金制度への対応の遅れがある。同社は解体工事を長年エリア単位で管理してきたが、新しい制度では機器単位の管理が求められた。準備が間に合わず、計画と現場の実態が食い違ったまま工事が進んだ。2025年3月下旬の検収時には、担当課が工事の実績ではなく計画の金額に合う調書を作るよう指示し、同年4〜5月の請求資料の作成時に工事報告書を書き換えた。NuROの現地確認を前にした同年5月ごろには、現場を報告内容に合わせるための解体工事を別の名目で行わせていた。

同社は原因の一つとして、計画と実績に差が出るとNuROから詳しい説明を求められると考え、その負担を避けたいという意識があったと認めた。

年度 調べた案件 不適切な検収 過大な検収 過小な検収
2024年度 36件 16件 約2.5億円 約0.2億円
2025年度 46件 8件 約900万円 約500万円
浜岡1号機・2号機の廃炉費用の請求で確認された不適切な検収

出典: 中部電力「報告の概要」(2026年10月29日)

2025年度分は請求を見送っている段階の案件である。2024年度分の請求額は、影響の範囲をNuROと協議して整理し、その結果を踏まえて返金するとしている。NuROは6日の発表で、2024年度の廃炉費用の精算手続きを速やかに進めると述べた。事案の発覚の経緯は「中部電力、浜岡1・2号機の廃炉費用請求で工事報告書を書き換え 食い違いは14件から18件に拡大 経産省が追加報告を求める」に詳しい。

地震動の不正は申請取り下げと3703億円の特別損失に

中部電力をめぐっては、浜岡3号機・4号機の審査でも不正が明らかになっている。基準地震動(原発の耐震設計の前提となる揺れ)の策定で、評価の代表として選ぶ地震波「代表波」の選び方などが、規制委の審査会合での説明と異なる方法、あるいは意図的な方法だった疑いが見つかった。発端は2025年5月に原子力規制庁から受けた調査の指示で、同社は2026年1月5日に事案を公表し、外部の専門家だけの調査委員会を設けた。同じ日に経産相から電気事業法に基づく報告徴収を受け、規制委は1月26日に同社本店で検査を始めた。7月1日の規制委では、調査の依頼を受けた後に一部の地震波を組み換えていたことも報告された。

同社は9月11日に調査報告書を受け取り、14日に3号機・4号機の審査の申請を取り下げると発表した。再稼働を目指して2014年から続けてきた審査である。同社の社長メッセージは、二度の内部通報が問題の発見と是正につながらなかったこと、調査委員会から社内の論理を優先する「独自の正当化理論」の存在を指摘されたことを認めている。

10月29日には再発防止策を経産相に報告し、原子力発電事業の固定資産の全額3049億円を減損損失として、核燃料評価損と合わせて3703億円の特別損失を計上した。審査資料の根拠となる技術文書の調査では、妥当性に疑義のある方法で解析を指示したと読み取れる事例が別に10件見つかり、同日の時点で事実関係と影響を確認中としていた。

11月30日の計画に書くべきこと

命令が真っ先に挙げたのは「役職員の責任の所在の明確化」である。

中部電力がすでに打った手はある。9月14日の人事で「経営責任を明確化」するとして、勝野哲会長と林欣吾社長が10月1日付で退任し、安井稔氏が社長に就いた。取締役会の議長を社外取締役に改め、組織風土改革推進部を置き、監査等委員会への内部通報窓口も新設するとした。

しかし、これで責任の所在が明らかになったとは言えない。退任した2人は特別顧問として会社に残る。10月29日の報告書には経営体制の刷新は書かれているが、不正に関わった役職員の処分についての記述は見当たらない。原発の安全の前提となる揺れの想定が不適切な方法で作られ、費用を受け取るための書類が書き換えられた事案である。誰が何を決め、どう責任を取ったのかが分からなければ、再発防止策を外から検証することもできない。

11月30日の計画には、少なくとも3つを書くべきだ。役職員の責任をどう問うたのか。2024年度の廃炉費用をいくら、いつ返すのか。確認中としていた10件の事例の結論はどうなったのか。いずれも同社の調査と機構との協議で答えられることである。