国連食糧農業機関(FAO)、世界保健機関(WHO)、国際獣疫事務局(WOAH)、移動性野生動物種の保全に関する条約(CMS)の4機関は9月21日、鳥インフルエンザ対策の連携を強めるための共同枠組み「鳥インフルエンザ対策の行動を加速するための世界枠組み」を公表した。人の健康、家畜、野生動物、環境をひとまとめに扱う「ワンヘルス」の考え方に立ち、監視、情報共有、検査室網、資金確保などの分野で4機関それぞれの役割を整理している。新しい組織や監視の仕組みは作らず、既存の枠組みを使って進める内容だ。

野鳥に住み着き、哺乳類へ広がるウイルス

文書が最も強く警戒しているのは、ウイルスを持つ動物の幅が広がっていることだ。1996〜97年に東南アジアで現れたH5型(グース・広東系統)は変異と遺伝子の組み換えを繰り返し、いま世界に広がっている「2.3.4.4b」という系統を生んだ。近年はキツネ、ミンクなどイタチ科の動物、アザラシなどの鰭脚類、乳牛、飼い猫と、哺乳類からの検出が相次いでいる。野鳥や野生の哺乳類では、これまでに例のない規模の大量死も起きていると記した。

鳥インフルエンザウイルスは、家きんでの症状の重さによって高病原性(HPAI)と低病原性(LPAI)に分けられる。低病原性はニワトリではほとんど症状が出ないが、文書は、家きんに定着している低病原性のH9N2型が他のウイルスに遺伝子を渡す「供給源」になり、人への感染も繰り返し起こしていると指摘した。H7N9型を含むH7型も、予測のつかない形で現れ続けているとしている。

人への感染は2003年以降1003人、うち479人が死亡

WHOの集計によると、H5N1型に感染した人は2003年から2026年9月6日までに25か国で1003人が確認され、うち479人が死亡した。報告された感染者のうち、約48%が亡くなっている計算になる。

2026年に報告されたのは9月6日時点で10人で、うち2人が死亡した。内訳はバングラデシュ4人(うち死亡1人)、カンボジア5人(同1人)、インド1人となっている。2025年は30人が感染し、12人が死亡した。WHOは、この集計は検査で確定した例だけを数えたもので、症状のなかった人からの検出も含むと注記している。

枠組みが挙げた成果目標と、つまずきの要因

枠組みは目指す成果として、各国が政策や法制度の面でワンヘルスの対応を取れるようにすること、発生の上流にある要因を絶って生態系の回復力を高めること、野生動物・環境・家畜・人の情報を結んで早期警戒に使えるようにすること、資金と人材を持続的に確保することの4つを掲げた。作成は2024年のオンライン協議から始まり、7月6日から20日まで意見公募を経ている。FAOとWOAHが最初の世界戦略を出したのは2007年で、2025年に2024〜2033年を対象とする版へ改められた。

一方で、計画どおりに進まない要因も列挙した。別の感染症や健康危機に関心と資源が奪われること、資金が足りないこと、誤情報によって住民との意思疎通が妨げられること、そしてウイルスの進化が対抗手段を上回る速さで進むことなどだ。WHOは同じ21日、続いているブンディブギョ型エボラウイルス病の流行に向け、診断や治療薬、ワクチンなど10の研究優先課題をまとめた文書も公表した。ブンディブギョ型はエボラウイルス属の中でも研究の進んでいないもので、承認されたワクチンも治療薬もない。この型の流行の経過はコンゴ民主のエボラ、死者3,510人に 2か月で5.6倍 致死率は35%から48%へ悪化、WHO「制圧に何か月も」で伝えた。

日本は昨季24事例・約576万羽 今季はまだ発生なし

農林水産省によると、令和7年(2025〜26年)シーズンの国内発生は24事例で、約576万羽が殺処分の対象になった。内訳は採卵鶏17事例、肉用鶏5事例、その他2事例だ。最初の発生は2025年10月22日の北海道白老町の養鶏場で、飼養羽数は約45.9万羽だった。最後の24例目は2026年4月22日の青森県東北町で、シーズンは半年に及んでいる。

令和8年度は、9月16日時点で秋以降の発生が確認されていない。農水省は同じ9月16日付で「高病原性鳥インフルエンザの防疫対策の徹底について」の通知を出し、シーズンを前にした飼養衛生管理の点検を求めている。