総務省消防庁は8月27日、2026年4月22日に岩手県大槌町で起きた林野火災について、消防庁長官の火災原因調査報告書を公表した。町内の小鎚と吉里吉里で同じ日に2件の火災が起き、合わせて1708ヘクタールの林野が焼けた。報告書は2件とも出火原因を「不明」と結論づけている。焼損した建物は28棟で、このうち住家は3棟だった。

国が自ら調べるのは、大規模な火災に限られる

火災の原因調査は通常、火災が起きた地域の消防本部が行う。これとは別に、消防法第35条の3の2は、消防長などから要請があった場合や特に必要があると認めた場合に、消防庁長官が自ら火災原因を調査できると定めている。実務は消防庁消防大学校の消防研究センターが担い、同センターは対象を「特異な火災や大規模な火災、または社会的影響の大きい火災」と説明している。

同センターが「近年の長官調査」として挙げているのは6件で、2021年の大阪市北区のビル火災、2022年の新潟県村上市の製菓工場火災、2024年の能登半島地震に伴う石川県輪島市の大規模市街地火災、2025年2月の岩手県大船渡市の林野火災、2025年11月の大分市佐賀関の大規模火災、そして今回の大槌町の林野火災である。林野火災では大船渡市に次いで2件目にあたる。年に1〜2件しか使われない仕組みで、それだけ異例の火災だったということになる。

2件とも「確たる物証がない」

小鎚の火災は4月22日13時53分、「道路の法面が燃えています」という119番通報で覚知された。報告書は、通報者の申述や消防隊が現場に着いたときの状況、焼け方の見分結果から、出火箇所を小鎚川沿いの道路の法面と判定した。そのうえで電線、たばこ、放火の3つを検討し、電線からの出火は考えにくく、たばこと放火については確たる物証がないとして、原因を不明とした。

吉里吉里の火災は同じ日の16時22分、「車で走行中に電波塔付近に煙が見えた」という通報で覚知された。出火箇所は尾根付近と考えられるものの、範囲を細かく限定することはできなかった。基地局、たき火、たばこ、放火を検討した結果、基地局からの出火は考えにくく、残る3つは確たる物証がないとして、こちらも不明とした。火は尾根沿いに南東へ広がり、複数の基地局を焼いた。

湿度8.6%、最大瞬間風速17.2メートル

急速に広がった背景として、報告書は当日の気象を挙げる。大槌消防署では14時7分に最大瞬間風速17.2メートルの西風、14時34分に湿度8.6%、14時20分に気温23.7度を観測しており、報告書は山を越えた風が乾いて気温を上げるフェーン現象の発生が考えられるとしている。前日にはアメダス大槌で4.5ミリの雨が降っており、乾燥注意報と強風注意報は出ていたものの、林野火災注意報は発令されていなかった。消防団からは「例年に比べて積雪が少なく小鎚川の流量が減っていた」という話も出ている。

燃え方は、地面の落ち葉や下草を伝う「地表火」が主体だった。吉里吉里では、火元から吉里吉里学園中学部にかけての1.3〜1.5キロを約2時間40分で燃え進んでいる。ところどころで木の上部まで燃え上がる「樹冠火」が起き、飛び火によって急に広がった可能性も指摘された。尾根は地中の水分が少なく、風も強く吹くため延焼が速い。加えて、燃えている枝や松ぼっくりが急斜面を転がり落ち、斜面の下側からも新たに火が出たという。小鎚でも15時ごろに風向きが変わり、小鎚川の左岸に飛び火して北側の山中へ広がった。

住家まで30メートルで止め、大船渡とは被害の質が違った

一方で、住宅地への延焼は食い止められた。吉里吉里学園中学部の西側の道路では、4月22日の19時前に南から迫った火をいったん阻止し、続いて西から迫った火も止めている。安渡地区と赤浜地区の間のスギ林では、最も近い住家まで約30メートルの地点で消し止めた。報告書は、相次いで火災が起きて急速に拡大したにもかかわらず地元消防本部や消防団、県内応援隊、緊急消防援助隊の展開が早く、一部で水利不足が生じたものの代替の水利が確保され、住宅地への延焼を阻止し得たとまとめている。

前年の大船渡市の火災と比べると違いがはっきりする。大船渡市では延焼範囲が約3370ヘクタールに達し、建物226棟が焼けて死者1人が出た。大槌町は焼けた面積が約半分の1708ヘクタールながら、建物の焼損は28棟、人的被害は避難所で転んだ人と消火活動中の消防団員の軽傷2人にとどまった。消防団員は71万8697人、1年で1万3526人減 女性・学生・機能別は増加 報酬が基準に届く市区町村は95.1%で見たとおり、こうした現場の最初の守り手である消防団は全国で減り続けており、山あいの集落ほどその影響を受けやすい。

火災時の消防庁の災害情報によると、4月28日時点で大槌町は1558世帯3257人に避難指示を出し、緊急消防援助隊は11都道県343隊1209人の規模で活動した。自衛隊の大型ヘリ6機と中型ヘリ3機も上空からの偵察と消火にあたっている。鎮圧は5月2日13時、鎮火は5月29日13時で、最初の通報から鎮火まで37日かかった。