米国の10月の雇用者数(農業部門を除く)は前月より16万5000人増え、過去12か月の月平均である4万8000人を大きく上回った。米労働省労働統計局が11月6日(日本時間同日午後10時30分)に公表した雇用統計で分かった。失業率は4.1%で、前月の4.2%から大きな変化は無かった。一方、平均時給の伸びは前年同月比3.1%にとどまり、9月の消費者物価の上昇率3.7%を下回っている。
雇用者は16万5000人増、8月と9月も上方修正
雇用統計は、米国の働き手の状況を毎月まとめる統計である。雇用者数は事業所への調査、失業率は世帯への調査から出す。今回の16万5000人増の内訳は、民間が15万9000人増、政府が6000人増だった。
前の2か月の数字も上方に改められた。8月の増加幅は13万3000人から18万6000人へ、9月は2万9000人から6万人へ修正され、2か月の合計は当初の発表より8万4000人多くなった。統計局は、修正の理由を、企業や政府機関から追加の回答が届いたことと、季節による変動を取り除く計算をやり直したことだと説明している。修正後の数字で8〜10月を平均すると、月13万7000人の増加となる。
米国の雇用者数の前月からの増減(万人)
数値で見る(単位: 万人)
| 項目 | 万人 |
|---|---|
| 5月 | 6.3 |
| 6月 | 3.1 |
| 7月 | -1.0 |
| 8月 | 18.6 |
| 9月 | 6.0 |
| 10月 | 16.5 |
図のとおり、月ごとの増減の幅は大きい。7月は1万人の減少で、8月は18万6000人の増加だった。統計局の技術解説によると、雇用者数の前月からの増減には、標本調査であるために90%の信頼度でプラスマイナス12万2000人程度の幅がある。速報値は翌月以降にも改められるため、1か月の数字だけでなく、数か月の動きを合わせて読む必要がある。
専門職と医療、運輸で増える
増加が大きかったのは、専門・ビジネスサービス、医療、運輸・倉庫の3業種だった。
専門・ビジネスサービスは7万人増え、過去12か月の月平均である1万5000人を大きく上回った。内訳は専門・科学・技術サービスが3万3000人、事務支援などが2万8000人、企業の経営管理が9000人の増加である。この業種は2025年10月の底から26万9000人増えた。
医療は4万2000人増で、過去12か月の月平均3万1000人より多い。病院が1万6000人、在宅医療が1万1000人、外来診療施設が5000人増えた。運輸・倉庫の2万5000人増では、宅配などの配送業が1万7000人、航空輸送が4000人を占める。運輸・倉庫は2月の底から10万4000人増えており、そのうち7万1000人が配送業である。
製造業も1万9000人増え、2025年12月の底からの増加は10万1000人になった。コンピューター・電子製品が7000人、機械と一次金属がそれぞれ4000人増えている。
| 業種 | 10月の増減 |
|---|---|
| 専門・ビジネスサービス | 7万人増 |
| 医療 | 4万2000人増 |
| 運輸・倉庫 | 2万5000人増 |
| 製造業 | 1万9000人増 |
| 小売業 | 6000人増 |
| 政府 | 6000人増 |
| うち連邦政府 | 1000人減 |
| 情報 | 1000人減 |
| 建設業 | 3000人減 |
| 娯楽・宿泊・飲食 | 1万3000人減 |
統計局は、小売業、情報、建設業、娯楽・宿泊・飲食、政府などの増減については、大きな変化は無かったと評価している。
失業率は4.1%、不本意なパートタイムは増加
世帯への調査によると、10月の失業者数は710万人で、失業率は4.1%だった。失業率は3月以降、4.1〜4.3%の狭い範囲で推移している。2025年11月は4.5%で、それより低い水準にある。2025年10月の失業率は、米政府の予算が成立しなかった期間に当たるため、データが無い。
働き手の層別の失業率は、成人男性が3.9%、成人女性が3.6%、10代が13.9%だった。人種別では白人が3.7%、黒人が6.6%、アジア系が2.8%、ヒスパニック系が4.7%である。27週間以上職が無い長期失業者は200万人で、失業者全体の27.6%を占めた。
働く意思のある人の割合を示す労働参加率は61.9%、人口に占める就業者の割合は59.3%で、いずれも1月以降ほとんど動いていない。
雇用者数の増加とは逆向きの数字もある。フルタイムで働きたいのに、勤務時間を減らされたり、フルタイムの職が見つからなかったりしてパートタイムで働く人は、33万9000人増えて480万人となった。
2つの調査は対象が異なる。世帯への調査は約6万世帯が対象で、農業従事者や自営業者を含む。事業所への調査は約11万9000の企業・政府機関、約62万2000の事業所が対象で、農業以外の雇用者数の約26%を占める。複数の職場で働く人は、職場ごとに数えられる。調査の基準はいずれも、毎月12日を含む週や給与の支払い期間である。
時給の伸びは3.1%、物価の上昇率を下回る
民間の平均時給は前月より14セント(0.4%)増えて38.00ドルとなり、前年同月比の伸びは3.1%だった。現場で働く従業員や管理職でない従業員に絞ると、平均時給は12セント(0.4%)増の32.75ドルだった。
民間の週平均労働時間は34.4時間で、前月と同じである。製造業も40.5時間で変わらず、残業は0.1時間増えて3.1時間となった。現場で働く従業員や管理職でない従業員の労働時間は0.1時間減って33.8時間だった。雇用者の数は増えたものの、1人あたりの労働時間は伸びていない。
これに対し、9月の消費者物価指数は前月より0.6%、前年同月比で3.7%上昇した。前年同月比の上昇率は8月の3.4%から拡大している。エネルギーが20.4%上がったことが目立ち、食品とエネルギーを除いた指数の上昇率は2.6%だった。比べる月は1か月ずれるものの、賃金の伸びが物価の上昇に追いついていない状態にある。10月の消費者物価指数は、米東部時間の11月10日午前8時30分(日本時間同日午後10時30分)に公表される。
FRBの次の会合は12月8〜9日
雇用と物価の統計は、米国の中央銀行にあたる連邦準備制度理事会(FRB)の金融政策を左右する。FRBは9月16日に政策金利の誘導目標を年3.75〜4.00%へ引き上げた。この決定は「FRB、3年2か月ぶり利上げ 政策金利を年3.75〜4.00%へ 12人全会一致、前回反対の3人が求めた水準に」で伝えている。
10月28日の会合では金利を据え置いたものの、採決は10対2に割れた。クック氏とハマック氏の2人は、年4.00〜4.25%への引き上げを主張して反対している。声明は「雇用の増加は労働力の伸びに見合っている」とする一方、物価については「高止まりしている」と記した。
ウォーシュ議長は会合後の記者会見で、雇用の面について「状況はかなり良好だ」と述べた。そのうえで、物価が目標を上回る状態が6年近く続いているとして、会合の議論は主に物価の安定に集中したと説明している。年内の追加利上げを問われると、「会合の結果を事前に決めつけることはしない」との立場を示し、それまでに多くのことが分かるかもしれないと答えた。
次の会合は12月8〜9日に開かれる。その前に、10月の消費者物価指数と、12月4日に公表される11月の雇用統計がそろう。
米国の株式市場は、統計の公表を前に大きく動いていた。S&P500の11月5日の終値は7353.73で、4日の7688.62から4.36%下げた。Cboeの遅延相場情報では、6日の取引開始直後の午前9時30分44秒(米東部時間)に7374.47と、前日の終値を0.28%上回っていた。5日の動きは「米国株が急落、S&P500は4.36%安 下落率は2025年4月以来の大きさ」、6日の東京市場は「東京市場が急落、TOPIXは5.90%安の3707.99 33業種すべて下落、食料品は10%安」で伝えている。今回の統計を市場がどう受け止めたかを示す公表資料は、確認できていない。
