公正取引委員会と中小企業庁は9月29日、エアブラスト装置の製造販売を手がける不二製作所(東京都江戸川区、資本金1億円)に対し、中小受託取引適正化法(取適法)第10条第1項に基づく勧告を行ったと発表した。部品の製造や運送を委託した中小受託事業者46社への代金、計7497万3998円の支払いが遅れたと認定した。同社は不利益額の一部にあたる6493万2663円をすでに支払っている。

手形と電子記録債権での支払いを「遅延」と認定

違反とされた行為は3つある。1社に対しては、給付を受け取った日から起算して60日目までに代金計30万9892円を支払わなかった。2026年2月から5月までの間、5社に対しては代金計386万9467円の支払いについて手形を交付し、40社に対しては代金計7079万4639円の支払いについて、支払期日までに代金の額に相当する額の現金と引き換えることが困難な電子記録債権を使った。いずれも支払期日までに、現金またはこれと同等の経済的効果が生じる支払手段による支払いをしなかったと判断された。

公取委は46社に対し、支払いが遅れた代金と、取適法第6条第1項に基づく遅延利息などを、公取委の確認を得たうえで速やかに支払うよう勧告した。支払済みの6493万2663円は除く。遅延利息の率は公取委規則で年14.6%と定められており、給付を受け取った日から60日を経過した日から支払日までの日数に応じて計算する。

1月の法改正で「手形払いも支払遅延」に

取適法は、1956年に制定された下請代金支払遅延等防止法(下請法)を改正した法律だ。2025年5月23日に公布された令和7年法律第41号「下請代金支払遅延等防止法及び下請中小企業振興法の一部を改正する法律」によって名称と内容が変わり、2026年1月1日に施行された。正式名称は「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律」で、略称は中小受託取引適正化法、または取適法という。

今回適用された第5条第1項第2号は、支払遅延を禁じる規定だ。改正後の条文は、代金を支払期日の経過後なお支払わないことのなかに、「手形を交付すること」と、「金銭及び手形以外の支払手段であつて当該製造委託等代金の支払期日までに当該製造委託等代金の額に相当する額の金銭と引き換えることが困難であるもの」を使うことが含まれる、と明記している。従来は手形払いを直ちに違反とはしていなかったが、施行後は手形の交付そのものが支払遅延に当たる扱いとなった。

支払期日そのものは第3条で、検査をするかどうかを問わず、給付を受け取った日から起算して60日の期間内、かつできる限り短い期間内に定めなければならないと定められている。公取委は勧告と同じ日にリーフレットも公表し、一括決済方式による支払いも違反になると説明したうえで、2027年4月1日からは取適法の対象にならない製造委託等の取引でも、給付の受領日から60日以内のできる限り早い日を支払期日と定めて支払う必要があるとした。

令和8年度の勧告15件、支払遅延は初

今回の事案は、関東経済産業局が不二製作所を調査し、9月3日に中小企業庁長官が取適法第9条に基づいて公取委に措置請求したものだ。措置請求は、中企庁長官が第5条違反の事実があると認めたときに、公取委へ適当な措置を採るよう求める手続きをいう。

公取委が公表している勧告一覧によると、今回は令和8年度の勧告の15件目にあたる。それまでの14件では、金型や治具の保管費用を負担せずに取引先に保管させた「不当な経済上の利益の提供要請の禁止」違反が9件と最も多く、代金の減額が3件、買いたたきが2件だった。下請法は今年1月に「取適法」へ 施行後の勧告14件のうち9件は「金型の保管費用」 トリドールには1億4741万円の返還指示で取り上げたとおり、施行後の勧告は金型の保管費用に集中していた。支払遅延を理由にした勧告は、今回が初めてとなる。

取引条件の監視は運送分野でも強まっており、10月からはトラックの荷主監視、10月から公取委・中小企業庁・警察も加わる 国交省が2か月の「集中監視月間」 長時間の荷待ちや運賃の据え置きを指導対象にが始まる。不二製作所の事案でも、部品製造の44社とは別に、運送を委託した2社が対象に含まれていた。