自動車を持つ人が毎年納める自動車税・軽自動車税と、車検のたびに納める自動車重量税。この二つの税にかかっている「上乗せ」の特例を廃止するよう政府に求める議員立法2本が、衆議院で審議されている。衆議院の議案審議経過情報によると、提出者はいずれも国民民主党・無所属クラブの田中健氏、近藤雅彦氏、日野紗里亜氏の3人で、令和8年(2026年)10月5日に、自動車税・軽自動車税の法案は総務委員会へ、自動車重量税の法案は財務金融委員会へ付託された。
第221回国会に提出、臨時国会で審議中
2本は第221回国会(特別会)に衆法第16号と第17号として出された。特別会は7月25日に閉会し、2本はそのとき「衆議院で閉会中審査」の扱いとなって次の国会へ持ち越された。第222回国会(臨時会)は10月5日に召集され、会期は69日間。同国会の議案一覧では、2本とも審議状況が「衆議院で審議中」と記載されている。
議案審議経過情報の「衆議院議案受理年月日」の欄は空欄で、付託年月日と付託委員会だけが入っている。委員会での審査や本会議の採決の日付はまだ無い。提出者3人のほか、議案提出の賛成者として玉木雄一郎氏、古川元久氏、浅野哲氏らが名を連ね、賛成者は2本とも同じ25人である。
付託先の委員会の動きを衆議院の委員会ニュースで確かめると、財務金融委員会は10月20日から28日までに5回開かれ、21日以降の4回はいずれも、飲食料品の消費税率を臨時に引き下げる内閣提出の法律案を議題としていた。総務委員会のニュースは10月22日の1回分が載っている。いずれのニュースにも、今回の2本を審議した記載は無い。
法案は「速やかに廃止」を政府に求める形
2本はどちらも本則3条と附則だけの短い法案で、施行は公布の日とされている。
自動車税・軽自動車税の法案(衆法第16号)は、第2条で、地方税法の附則第12条の3第1項と第12条の4第3項に定める自動車税の上乗せ特例、附則第30条第1項に定める軽自動車税の上乗せ特例を「速やかに廃止するものとし、政府は、このために必要な法制上の措置を講ずるものとする」と定める。提出理由には、特例が設けられた当時からの「社会経済情勢の変化に鑑み、自動車の保有に係る国民の税負担の軽減を図るため」と書かれている。
自動車重量税の法案(衆法第17号)は、租税特別措置法の第90条の11から第90条の11の3までに定める「自動車重量税率の上乗せに係る特例」を、同じく速やかに廃止するよう政府に求める。提出理由は、特例が設けられてから「長期間が経過し」、当時とは社会経済情勢が「著しく変化している」ことを挙げる。
注意したいのは、どちらの法案も地方税法や租税特別措置法の条文を直接書き換えるものではないという点だ。廃止の方針と政府の義務を定める法律で、成立しても、実際に税率が下がるには政府が改正案を出し、国会で成立させる手続きが別に要る。廃止の期限は「速やかに」とあるだけで、日付は書かれていない。
自動車税は古い車で約15%重く
法案が名指しする地方税法の条文は、新車登録から長い年数がたった車の税を重くする仕組みである。
附則第12条の3第1項は、2015年3月31日までに初めて新規登録されたガソリン車・LPG車は登録から14年を経過した日の属する年度以後、2017年3月31日までに登録されたディーゼル車などは12年を経過した日の属する年度以後、自動車税を重くすると定める。電気自動車、天然ガス自動車、ガソリンを燃料とするハイブリッド車などは対象から外れている。
自家用の乗用車のうち、2019年の地方税法改正で定めた日より前に初めて新規登録された車には、附則第12条の4が排気量ごとの年税額を定めている。その第3項が、上の年数を超えた車の税額を置き換える規定だ。
| 総排気量 | 標準税率(年額) | 上乗せ後(年額) |
|---|---|---|
| 1リットル以下 | 2万9500円 | 3万3900円 |
| 1〜1.5リットル | 3万4500円 | 3万9600円 |
| 1.5〜2リットル | 3万9500円 | 4万5400円 |
| 2〜2.5リットル | 4万5000円 | 5万1700円 |
| 2.5〜3リットル | 5万1000円 | 5万8600円 |
| 3〜3.5リットル | 5万8000円 | 6万6700円 |
| 3.5〜4リットル | 6万6500円 | 7万6400円 |
| 4〜4.5リットル | 7万6500円 | 8万7900円 |
| 4.5〜6リットル | 8万8000円 | 10万1200円 |
| 6リットル超 | 11万1000円 | 12万7600円 |
出典: 地方税法(e-Gov法令検索)
1.5〜2リットルの車なら年3万9500円が4万5400円になり、上乗せの幅は約15%にあたる。軽自動車税は附則第30条第1項が、初めて車両番号の指定を受けた月から14年を経過した月の属する年度以後の税率を重くしており、自家用の四輪乗用の軽自動車では年1万800円が1万2900円になる。
重量税は年数を問わず「当分の間」の高い税率
自動車重量税の法案が対象とする租税特別措置法の3条文は、範囲がさらに広い。
自動車重量税法第7条が定める本来の税率(本則)は、車検の有効期間が2年の自家用乗用車で、車両重量0.5トンごとに5000円である。これに対して租税特別措置法第90条の11は、2012年5月1日以後の車検などについて、「当分の間」として0.5トンごとに8200円の税率を定めている。終わりの日付は書かれていない。第90条の12などで免税となる車を除けば、年数に関係なく適用される税率で、本則の1.64倍にあたる。
そのうえで第90条の11の3は、初めて登録を受けた月から13年を経過する月の前月の初日以後に車検を受ける車を0.5トンごとに1万1400円、第90条の11の2は、18年を経過する月の前月の初日以後の車を1万2600円とする。
車両重量1.5トンの自家用乗用車の自動車重量税(車検2年分)(円)
数値で見る(単位: 円)
| 項目 | 円 |
|---|---|
| 本則税率 | 15,000 |
| 当分の間 | 24,600 |
| 13年経過 | 34,200 |
| 18年経過 | 37,800 |
車両重量1.5トンの自家用乗用車で計算すると、車検2年分の重量税は本則なら1万5000円、いまの「当分の間」の税率で2万4600円、13年を経過すると3万4200円、18年を経過すると3万7800円になる。法案はこの3条文をまとめて廃止の対象にしており、成立して政府が措置を講じれば、年数による重課だけでなく、年数を問わずかかる「当分の間」の上乗せ分も外れることになる。
負担軽減は納税者の利益に沿う 減収の規模は示されず
2本はいずれも、廃止で生じる地方の減収への手当てを第3条に置いている。
自動車税は都道府県、軽自動車税は市町村の税である。衆法第16号の第3条は、政府が廃止の措置を講じるにあたり、都道府県と市町村の「減収を埋めるための財源を確保し」、財政状況に影響を及ぼさないよう適切な措置を講じると定める。
自動車重量税は国税だが、税収の一部は自動車重量譲与税として地方自治体に配られる。衆法第17号の第3条は、上乗せ特例の廃止で譲与税の額が減ることが地方公共団体の財政に「悪影響を及ぼすことがないよう」、減収を補う措置を政府に求めている。どちらの法案も、減収の規模や補填の財源を具体的には示していない。
同じ特別会では、賃金の伸びを上回る所得税・個人住民税の負担増に対処する法案2本も国民民主党の議員が提出し、閉会中審査となったが、第222回国会の議案一覧では審議状況が「撤回」となっている。特別会で閉会中審査となった議員立法21件の顔ぶれは、特別国会、内閣提出の64法案はすべて成立 議員立法は59件のうち14件 21件は閉会中審査で次の国会へにまとめている。同じ会派が出した議員立法の扱いは障害者の「18歳の壁」対策法案、衆院で審議中 卒業後の居場所や学びの場を国に求めるでも伝えた。上乗せの廃止が実現すれば、車を持つ人の負担は確実に下がる。車両重量1.5トンの自家用乗用車なら、車検2年分の重量税は2万4600円から1万5000円へ9600円減り、18年を経過した車では2万2800円減る。「当分の間」の税率に終わりの日付が無い以上、続ける理由を問い直す提案は、納税者の利益に沿う。
一方で、法案は廃止の日付も減収の規模も補填の財源も示していない。国の財政と地方の財源を、規模が分からないまま減らすことは、日本の国益にかなわない。負担が軽くなる車の持ち主も、減収を埋める財源を負担する人も、同じ納税者である。69日間の会期で2本の審議を求めるなら、提出者は減収の見込みと財源を委員会で示すべきではないか。
