7月25日に閉会した第221回国会(特別会)で、内閣が提出した法律案は64件すべてが成立していた。一方、国会議員が自分で提出した議員立法は、衆参あわせて59件のうち成立が14件。衆議院に出された21件は「閉会中審査」の扱いとなり、次の国会へ持ち越されている。衆議院が公表している議案の一覧を集計した。
内閣提出は64戦64勝、議員立法は59件中14件
法律案は、誰が出すかで3種類に分かれる。内閣が出す「閣法」、衆議院議員が出す「衆法」、参議院議員が出す「参法」で、後ろの二つをまとめて議員立法と呼ぶ。第221回国会の内訳は閣法64件、衆法38件、参法21件だった。
結果は対照的だった。閣法は64件すべてが成立している。内容は、財政運営に必要な財源を確保するための公債発行の特例法、所得税法等改正案、地方交付税法等改正案といった予算に直結するものから、廃棄物処理法、著作権法、予防接種法、皇室典範等の改正案まで幅広い。
これに対し衆法38件は、成立14件、衆議院を通過したものの成立に至らなかった「本院議了」が3件、閉会中審査が21件。参法21件は、参議院を通過した「参議院議了」が1件、撤回が1件で、残る19件は審議が終わらない「未了」に終わった。参法からの成立はゼロである。議員立法59件のうち成立したのは14件で、4件に1件に満たない。
衆法で成立したものには、「国旗損壊罪」法案、衆院を通過 参院での審議が焦点 全野党が欠席の異例採決 抗議に国旗を壊す必要はあるのかで取り上げた国旗の損壊等の処罰に関する法律案のほか、災害時に東京の機能を代替することを想定した副首都整備の推進に関する法律案、憲法改正の手続に関する法律(国民投票法)の改正案、国会議員の歳費に関する法律の改正案などが含まれる。
なお、予算は8件すべてが成立し、条約12件と承認案件1件は両院で承認された。特別会は2月18日に召集され、7月25日まで158日。当初の会期150日に8日の延長を加えた日程だった。
閉会中審査の21件に何が並んでいるか
閉会中審査は、国会が閉じている間も委員会が引き続き審査できるようにする議決で、これを経た議案は次の国会に引き継がれる。裏を返せば、会期中に採決まで至らなかったということでもある。
21件の顔ぶれは、与野党の対立点がそのまま残った形になっている。政治資金規正法の改正案が2件(議案番号1と14)、政党の政治資金の収入に関する制度の法案が1件。税では、自動車税と軽自動車税の上乗せ特例を廃止する法案、自動車重量税の上乗せ特例を廃止する法案、賃金の伸びを上回る所得税・個人住民税の負担増に対処する法案が並ぶ。暮らしに直結するところでは、高額療養費制度の在り方に関する法案、障害者と家族への支援を総合的に進める法案が残った。
選挙制度では、衆院定数削減法案、6月の提出から採決されず閉会中審査 減らす45人はすべて比例代表 協議が1年でまとまらなければ自動的に定数420人で扱った衆議院議員の選挙制度改革及び定数削減に関する法律案が、この21件に入っている。高市早苗首相は9月23日の記者会見で、この法案について「先の特別国会において継続審議になっており、次の国会においても議論が行われる」と述べ、「議員定数の在り方というのは、民主主義の根幹に関わる問題ですから、国会において御議論をいただくべき事柄」だとして、内閣としては議論の状況を注視する姿勢を示した。
閉会中審査の中には、野党が政府案の対案として出したものもある。令和八年度における公債の発行の特例に関する法律案は、中道改革連合・無所属と国民民主党・無所属クラブの議員が3月10日に提出した衆法で、同じ会期に内閣が出した公債特例法の改正案(閣法1)は成立している。政治資金規正法の改正案(議案番号1)も、同じ2会派の議員が3月2日に提出したものだった。
数字が示すのは「政府案は通る、議員立法は滞る」構図
閣法の成立率が100%だったのに対し、議員立法は23.7%。この差は、審議の入り口の違いから生まれる。内閣提出法案は与党の事前審査を経て、政府として会期内の成立を前提に日程が組まれる。議員立法は委員会に付託されても審議の順番が後回しになりやすく、会期末に採決まで届かないまま閉会を迎えることが多い。参法21件から成立が出なかったのは、参議院を通っても衆議院で審議時間を確保できなければ成立しないためで、そもそも参議院での審議を終えた(議了)のは「大都市地域における特別区の設置に関する法律の一部を改正する法律案」1件だけだった。残る19件は参議院の段階で未了に終わっている。
ただし、閉会中審査は「廃案ではない」という意味も持つ。会期が終わると審議中の議案は原則として次の国会に引き継がれないが、閉会中審査の議決があれば引き継がれる。21件はいずれも、次の国会で審議を再開できる状態にある。
次の臨時国会では、政府側も法案を用意している。首相は9月23日の会見で「臨時国会では、『消費税・支援金法案』や中東情勢を受けた『原油調達多角化に関する法案』など、国民の皆様に身近な法整備で、結果を出していきたい」と述べた(原油調達多角化の法案、臨時国会に提出へ 高市首相が会見で表明 原油輸入の94.7%が中東から、ホルムズ海峡は「自由で安全な航行が困難」)。与党は参議院で過半数を持たないため、首相は「野党の皆様とも真摯に議論を行い、御理解を求めて、国民生活の向上や国益のために一致できる点では幅広く協力して、政策を前に進めていきたい」と語っている。
閣法64件すべてが成立した特別会と同じ構図が続くのか、それとも参議院での数の事情が政府案の成立率に表れるのか。閉会中審査の21件がどれだけ採決まで進むかは、その裏返しの指標にもなる。
