政府は9月25日の定例閣議で、防衛省設置法等の一部を改正する法律(令和8年法律第53号)の一部の施行期日を定める政令と、施行に伴う関係政令の整理に関する政令を決定した。この改正が施行されると、1954年に制定された自衛隊法と防衛省設置法が置いた「航空自衛隊」という名称が、「航空宇宙自衛隊」に変わる。自衛官の定数は総計24万7154人を変えないまま、陸上自衛官を292人減らし、その分を宇宙や情報を担う部門に振り替える。
改正法は第221回国会(特別会)に内閣が提出した閣法第18号で、令和8年4月28日に衆議院、6月26日に参議院で可決されて成立し、7月3日に公布された。衆議院で反対したのは日本共産党のみで、自民党、中道改革連合、日本維新の会、国民民主党、参政党、チームみらいが賛成している。
「主として空において」が「空及び宇宙において」になる
改称は、名前だけの話ではない。自衛隊法第3条第3項は現在、「陸上自衛隊は主として陸において、海上自衛隊は主として海において、航空自衛隊は主として空においてそれぞれ行動することを任務とする」と定めている。改正では、この「主として空において」が「主として空及び宇宙において」に改まる。行動する場所として宇宙が法律に書き込まれる。
呼び名の変更は組織の各層に及ぶ。航空幕僚監部は航空宇宙幕僚監部、航空幕僚長は航空宇宙幕僚長、航空幕僚副長は航空宇宙幕僚副長になり、隊員の身分を指す「航空自衛官」も「航空宇宙自衛官」に変わる。武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律(国民保護法)第38条第4項第2号の「航空自衛隊」も、あわせて改められる。
防衛白書は、航空自衛隊にとって宇宙領域が「単なる監視活動の対象ではなく作戦行動を行う領域」になることを踏まえた改編だと説明している。
「宇宙作戦集団」を新編し、航空開発実験集団は統合される
部隊の編成も変わる。自衛隊法第20条第1項は現在、航空自衛隊の部隊を「航空総隊、航空支援集団、航空教育集団、航空開発実験集団その他の防衛大臣直轄部隊」と定めている。改正では、ここに「宇宙作戦集団」が加わり、航空教育集団と航空開発実験集団の2つが統合されて「航空宇宙教育集団」になる。法律に名前が挙がる部隊は4つのままだが、中身が入れ替わる形だ。
新設される宇宙作戦集団は、同条に新たに加わる第4項で「宇宙作戦集団司令部及び宇宙作戦団その他の直轄部隊から成る」と規定される。あわせて第20条の3が新設され、集団の長を宇宙作戦集団司令官とし、防衛大臣の指揮監督を受けて隊務を統括すると定める。
この宇宙作戦集団の下に入る宇宙作戦団は、すでに動いている。防衛白書によると、2026年3月に宇宙作戦群を廃止して宇宙作戦団が新編され、府中と防府北に置かれた。任務は宇宙領域把握(SDA)で、宇宙航空研究開発機構(JAXA)や米国などの同盟国・同志国の宇宙部隊と連携し、不審な衛星の監視やスペースデブリの把握といった宇宙に関する情報の収集・分析にあたる。白書は、2026年度にSDA衛星の打ち上げとレーザー測距装置の運用開始を予定し、内部部局にも整備計画局に宇宙関連の防衛力整備を担当する参事官を新設したとしている。
こうした取り組みの土台として、防衛省は2025年7月に「宇宙領域防衛指針」を策定した。宇宙領域における防衛能力の強化を、迅速かつ的確な戦況把握、作戦の基盤となる衛星通信の確保、機能保証、相手方の指揮統制・情報通信等の妨げの4つの面から進めるという内容だ。白書の解説によれば、日本では1969年の国会決議で宇宙利用が平和目的に限られていたが、2008年の宇宙基本法成立をきっかけに防衛省・自衛隊の宇宙利用が本格的に始まった。防衛省・自衛隊としての宇宙分野の方向性を示した文書はこれまでなく、指針はその空白を埋めるものだったという。
定数の総計は変えず、陸自から292人を移す
もう一つの柱が自衛官定数の変更である。防衛省設置法第6条は自衛官の定数を組織ごとに定めており、現行は陸上自衛官14万9403人、海上自衛官4万5462人、航空自衛官4万7131人、共同の部隊に所属する自衛官2423人、統合幕僚監部343人、情報本部1936人、内部部局50人、防衛装備庁406人で、総計24万7154人となっている。
改正後の内訳は、陸上自衛官14万9111人、海上自衛官4万5471人、航空宇宙自衛官4万7183人、共同の部隊2626人、統合幕僚監部346人、情報本部1961人、内部部局50人、防衛装備庁406人である。総計は24万7154人で変わらない。
増減を見ると、陸上自衛官が14万9403人から14万9111人へ292人減る一方、共同の部隊が2423人から2626人へ203人増え、航空宇宙自衛官が4万7131人から4万7183人へ52人、情報本部が1936人から1961人へ25人、海上自衛官が4万5462人から4万5471人へ9人、統合幕僚監部が343人から346人へ3人増える。人を新たに増やすのではなく、陸上自衛隊から削った分を、陸海空をまたぐ共同の部隊や情報部門に回す形になっている。
これは白書の記述とも符合する。白書は防衛力の抜本的強化について「自衛官の定数は増やさずに必要な人員を確保する」と明記し、2027年度末の常備自衛官定数は2022年度末の水準を目途とするとしている。もっとも、定数の側をやりくりしても、実際に人が集まるかは別の問題だ。自衛官の充足率88.1% 定員24万7154人に対し現員21万7701人 最前線を担う「士」は57.8%にとどまる 令和8年版防衛白書のとおり、2026年3月末の現員は21万7701人で、定数に2万9453人足りていない。宇宙作戦集団という新しい器を作っても、そこに配置する人員は限られた現員の中から出すことになる。
なお、同じ改正法に含まれていた国家行政組織法の改正は、公布の日から施行されている。別表第三の防衛省の項の副大臣の数を「一人」から「二人」に改めるもので、白書は2026年度に防衛副大臣を1人体制から2人体制へ強化したと記している。
施行日は確認できていない
改正法の附則第1条は、「この法律は、令和九年三月三十一日までの間において政令で定める日から施行する」と定める。航空宇宙自衛隊への改称と定数の変更、宇宙作戦集団の新編は、いずれもこの政令で定める日からの施行になる。9月25日に閣議決定された政令が、その日付を定めたことになる。
ただし、その日付は確認できていない。9月25日付の官報(本紙第1795号)の全体目次には政令の欄がなく、この政令は掲載されていない。9月25日付が執筆時点で公表されている最新の官報で、9月28日付は公表されていない。e-Gov法令検索には令和8年法律第53号による防衛省設置法の改正が2027年3月31日施行として登録されているが、これは法律が定めた期限そのものの日付であり、政令が定めた実際の施行日を示すものとは限らない。本記事では推測を避け、日付は書かない。
同じ9月25日の閣議では、防衛省関係の2本を含めて政令22本が決定された。このうち防災庁関係の政令については、防災庁、11月2日に発足 施行期日の政令を閣議決定 統括官4人・参事官15人を置く 地方機関「防災局」の施行日は決まらずのとおり、発足日が11月2日と示されている。
宇宙は、自衛隊が近年になって任務の対象に加えた領域の一つである。同じ日付の並びで言えば、自衛隊、10月1日からサイバー攻撃元のコンピューターを無害化できる 命じるのは首相で閣議決定が必要、国会の承認は不要 自衛隊法に81条の3を新設のとおり、サイバー領域では10月1日に新しい権限が動き出す。陸・海・空という3つの区分でできていた自衛隊の組織が、宇宙とサイバーという区分を加えて組み替えられていく途中にある。
