統合幕僚監部は7月15日、令和7年度(2025年4月〜2026年3月)における自衛隊の災害派遣と不発弾等処理の実績を公表した。災害派遣の派遣件数は339件、総活動人員は延べ約1万3000人だった。件数は資料に掲載された過去10年のなかで最も少ない。

8割超は離島からの急患輸送

339件の内訳は、急患輸送が284件、消火活動が39件、風水害・雪害・地震等への対応が8件、救難活動が5件、その他が3件だった。急患輸送だけで全体の8割を超える。

急患輸送は、医師のいない離島などで急病人やけが人が出たとき、都道府県知事の要請を受けて自衛隊のヘリコプターや航空機が患者を本土の医療機関へ運ぶ活動を指す。統合幕僚監部の資料は、令和7年度の派遣先について「南西諸島(沖縄県及び鹿児島県)や長崎県の離島、小笠原諸島(東京都)などへの派遣が大半」と説明している。実施したのは陸上自衛隊が171件、海上自衛隊が86件、航空自衛隊が27件だった。

急患輸送の件数は令和3年度315件、4年度317件、5年度352件、6年度318件と推移し、令和7年度の284件は過去5年で最も少ない。ただし減少が定着したとは言い切れない。同じ統合幕僚監部の資料によると、令和8年度は4月21件、5月25件、6月17件と積み上がり、第1四半期だけで63件に達している。

山火事対応は39件、うち林野火災が24件で5年最多

減っていない活動もある。消火活動は39件で、内訳は防衛省の施設の近くで起きた火災に対応する「近傍火災」が15件、山林が燃える「林野火災」が24件だった。統合幕僚監部は、林野火災への対応件数が過去5年で最多だったと明記している。令和3年度は8件、4年度6件、5年度3件だったものが、6年度に20件へ跳ね上がり、7年度はそれをさらに上回った。

月別にみると1月が10件、2月が7件、3月が4件と、空気の乾く冬から春に集中している。林野火災の消火は、自衛隊のヘリコプターが下げたバケットで水をまく「空中消火」が中心となる。

件数の少なさは、投入規模の小ささを意味しない

災害派遣は、件数と人員が比例しない。令和7年度は、284件の急患輸送に投じた人員が延べ約1400人だったのに対し、39件の消火活動には延べ約7500人、わずか8件の風水害・雪害・地震等への対応には延べ約3400人が投入された。1件あたりの規模が桁違いに大きいためだ。

延べ約1万3000人という令和7年度の総活動人員は、大きな災害があった年と比べると極端に小さい。統合幕僚監部の推移グラフでは、東日本大震災などがあった平成23年度が約1074万人、令和6年能登半島地震などの対応を計上した令和5年度が約115万人、平成30年7月豪雨などの平成30年度が約119万人となっている。令和7年度は、大規模災害への部隊投入を要する事態が起きなかった年だったといえる。

派遣件数そのものも、平成28年度516件、29年度503件、30年度443件、令和元年度449件、2年度531件と500件前後の年が続いたあと、3年度383件、4年度381件、5年度387件、6年度377件と400件を割り込み、7年度は339件まで下がった。

派遣の起点は知事の要請、自衛隊法83条

災害派遣の手続きは自衛隊法83条が定めている。同条1項は、都道府県知事らが「天災地変その他の災害に際して、人命又は財産の保護のため必要があると認める場合には、部隊等の派遣を防衛大臣又はその指定する者に要請することができる」と規定する。派遣は自衛隊の判断で自動的に始まるのではなく、原則として知事の要請が起点になる。

2項はその要請を受けた防衛大臣らが「事態やむを得ないと認める場合」に部隊を派遣できるとしたうえで、ただし書きで、特に緊急を要して要請を待つ余裕がないと認められるときは要請なしで派遣できると定める。いわゆる「自主派遣」の根拠にあたる。3項は、自衛隊の庁舎や営舎、その近くで火災などが起きた場合に部隊長の判断で派遣できるとしており、消火活動39件のうち「近傍火災」15件はこの類型に対応する。

不発弾処理は1655件、沖縄が件数の28%

同じ資料には不発弾等処理の実績も載っている。令和7年度に陸上で処理した不発弾等は1655件、処理重量は約37.4トンだった。このうち沖縄県が466件・約11.5トンを占め、全国に占める割合は件数で約28%、重量で約31%にのぼる。

海上での処理は、機雷が実績なし、魚雷や爆雷、爆弾、砲弾といった「その他の爆発性危険物」が122個・約0.5トンだった。戦後80年を超えてなお、年に1600件を上回る規模で地中の不発弾が見つかり、処理が続いている。