自衛隊に入る人が最初に置かれる身分だった「自衛官候補生」の制度が、10月1日に廃止された。9月25日の定例閣議で決定された「防衛省設置法等の一部を改正する法律の一部の施行期日を定める政令」が政令第307号として9月30日付の官報(号外第215号)に公布され、施行期日を令和8年10月1日と定めたためである。10月1日以降に入隊する人は、初日から自衛官として任用される。

政令が施行期日を定めたのは、防衛省設置法等の一部を改正する法律(令和7年法律第44号)附則第一条第七号に掲げる規定である。同号が対象とするのは、自衛隊法第29条第1項、第33条、第36条、第58条第2項、第97条第1項・第2項の改正規定などで、いずれも条文から「自衛官候補生」という語を外す内容が中心になっている。

3か月で、しかも「定員外」だった身分

自衛官候補生は、任期を定めて任用される「士」の自衛官になる前に、必要な知識と技能を身につけるための教育訓練を受ける身分である。自衛隊法第36条第2項が「その修了後引き続いて前項の規定に基づき任用される自衛官として必要な知識及び技能を修得させるための教育訓練を受けるものとする」と定めていた。

任用期間は同条第3項により、3か月を基準として教育訓練に要する期間を勘案し、防衛省令で定めるものとされていた。候補生から引き続いて自衛官になった場合、その自衛官としての任用期間は、本来の期間から候補生だった期間を差し引いた長さになる。陸士長等の任用期間は2年、海士長等と空士長等は3年と定められているため、候補生の期間が長いほど自衛官としての任用期間は短くなる仕組みだった。

制度上とくに目立つのが同条第4項である。「自衛官候補生の員数は、防衛省の職員の定員外とする」と明記されていた。つまり入隊直後の数か月は、防衛省の定員に数えられない身分だったことになる。10月1日の改正では、この第2項から第4項までがまとめて削られ、第5項(陸曹候補者等の特例)が第2項に繰り上がった。入隊した人が初日から自衛官になるということは、採用された時点で定員の内側に入り、現員として数えられることを意味する。

自衛官の定数と実際の人数の開きは、以前から課題として示されてきた。自衛官の充足率88.1% 定員24万7154人に対し現員21万7701人 最前線を担う「士」は57.8%にとどまる 令和8年版防衛白書のとおり、とくに入隊してすぐの階級である「士」の充足が薄い。候補生という定員外の入口をなくして最初から自衛官として扱う今回の見直しは、その入口付近の数え方そのものを変えるものである。

知事や市町村長の募集事務からも文字が消える

削られるのは第36条だけではない。自衛隊法第97条第1項は「都道府県知事及び市町村長は、政令で定めるところにより、自衛官及び自衛官候補生の募集に関する事務の一部を行う」と定めており、ここから「及び自衛官候補生」が削られる。第2項の、防衛大臣が警察庁と都道府県警察に募集事務への協力を求められるという規定も同じである。自治体や警察が関わる募集の対象は、「自衛官」に一本化される。

同じく、地方協力本部の事務を定めた第29条第1項の「自衛官及び自衛官候補生の募集」からも候補生が外れる。服装の規定も変わり、制服を必要とする隊員の服制を防衛省令で定める第33条と、制服の着用と服装の端正を義務づける第58条第2項から、それぞれ「自衛官候補生」が削られる。候補生という身分がなくなるため、これらの条文で別に書き分ける必要がなくなる、という整理である。

給与の面でも手当が整理された。改正法第5条は防衛省の職員の給与等に関する法律を改め、集団的居住場所などに住む場合に支給される「指定場所生活調整金」の規定(第26条の3)を第26条の2へ繰り上げるとともに、支給対象を「自衛官候補生から引き続いて自衛官に任用された者」ではなく自衛官そのものを前提とした書き方に改めた。あわせて9月30日付の官報では、政令第308号として関係政令の整理に関する政令も公布され、防衛省の職員の給与等に関する法律施行令などから自衛官候補生に関する規定が削られている。

期限より約2か月早い施行

根拠となる改正法は、第217回国会に内閣が提出した閣法第16号である。衆議院の議案審議経過情報によると、令和7年2月12日に衆議院が議案を受理し、4月4日に安全保障委員会へ付託、4月18日に委員会で可決、4月24日に本会議で可決された。本会議で賛成したのは自由民主党・無所属の会、立憲民主党・無所属、日本維新の会、国民民主党・無所属クラブ、公明党、有志の会、参政党、日本保守党で、反対はれいわ新選組と日本共産党だった。参議院では5月12日に外交防衛委員会へ付託され、5月20日に委員会で可決された。法律は令和7年5月28日に公布されている。

附則第一条第七号は、この部分の施行日を「公布の日から起算して一年六月を超えない範囲内において政令で定める日」としていた。公布が令和7年5月28日なので、期限は令和8年11月27日にあたる。政令第307号が定めた10月1日は、その期限より約2か月早い日付になる。

なお、同じ10月1日には自衛隊に関する別の制度も動き出している。自衛隊、10月1日からサイバー攻撃元のコンピューターを無害化できる 命じるのは首相で閣議決定が必要、国会の承認は不要 自衛隊法に81条の3を新設のとおり、サイバー領域では新しい権限が加わった。人の採り方と、任務の範囲の両方で、自衛隊法の条文が同じ日に書き換わっている。