総務省の電気通信事故検証会議は、2025年度(令和7年度)に通信会社から報告された通信の事故をまとめた「令和7年度電気通信事故に関する検証報告」を2026年7月17日に公表した。詳しい様式での報告は7941件で、前年度の6713件から1228件増えた。報告した会社は130社から143社に増えている。
13年ぶりの水準に増えた
この様式による集計が始まったのは2010年度(平成22年度)で、初年度は7367件だった。翌2011年度に8773件、2012年度に8201件と増えたあと、2015年度から2019年度までは6100〜6300件台で落ち着いていた。2022年度に7500件へ跳ね上がり、2023年度7257件、2024年度6713件と推移したのち、今回7941件となった。2012年度の8201件に次ぐ水準で、13年ぶりの多さである。
報告の様式は2つある。無線基地局や加入者を収容する装置の故障など、あらかじめ決められた類型は簡易な様式でよい。こちらは26社から7万2185件の報告があり、前年度の8万1414件から減った。
影響した利用者の数でみると、500人未満の事故が7515件と94.6%を占める。500人以上5000人未満が303件、5000人以上3万人未満が72件と続き、10万人以上に及んだ事故は29件だった。復旧までの時間は、2時間以上5時間未満が3666件(46.2%)で最も多い。一方で12時間以上かかった事故も2454件あり、全体の約31%にあたる。24時間を超えたものが1048件ある。
6割は「他社の事故」の巻き添え
発生の原因別では、自社以外に原因がある外的要因が4715件で59%を占めた。このうち4236件、外的要因の9割は「他の電気通信事業者の事故」である。通信は回線や設備を会社どうしで借り合って成り立っているため、1社の障害がそのまま取引先の障害として積み上がる。件数が増えやすい構造だといえる。
次に多いのが機器の自然故障などの設備要因で2768件(35%)。その94%にあたる2601件は機器そのものの故障だった。
壊れた設備がはっきりしている4762件をみると、ケーブルなどの伝送路設備が2213件で最多で、うち利用者宅へ引き込む加入者系ケーブルが1193件、局と局を結ぶ中継ケーブルが243件と、ケーブルの支障が7割ほどを占める。交換機などの伝送交換設備は1914件で、そのうち1385件は加入者収容装置の故障だった。
サービス別では、データ通信サービスの事故が9819件(71%)で、内訳はインターネット接続サービスの4217件が最も多い。音声サービスは2638件(19%)で、IP電話1256件、携帯電話985件がその85%を占め、従来のアナログ電話は192件にとどまる。1つの事故が複数のサービスに同時に影響することがあるため、サービス別の合計は総件数を上回る。そのアナログ電話は、携帯の電波を使う「固定電話」、ユニバーサルサービスへ格上げ 総務省審議会が答申案 メタル回線1043万件の受け皿にで伝えたとおり、2035年ごろをめどに光回線や携帯網の電話へ移される計画が進んでいる。
「重大な事故」は6件、うち3件は人のミス
電気通信事業法施行規則第58条第2項は、一定の規模を超えた事故を「重大な事故」として、理由や原因とともに遅滞なく総務大臣へ報告するよう義務づけている。2025年度の該当は6件で、前年度と同数だった。報告した会社は9社から6社に減っている。別に定められた第58条の2の「事態」は、前年度の5件から0件になった。報告書は、影響した利用者が100万人を超える重大な事故は起きていないとしている。
6件の原因は、人為要因が3件、設備要因が2件、外的要因が1件。人為要因の中身は、関係部門の招集漏れや部門間の認識の食い違いによって設計段階で考慮が抜けたもの、手順書にない誤った点検作業によるものなどだ。
個別にみると、2025年4月26日にはkubellのビジネスチャット「Chatwork」で23時間44分にわたり障害が起き、有料プラン契約が最大約5万9000社、無料プラン契約が最大約8万3000社に影響した。データベースのバグが疑われたが、発生条件は把握できていない。同年10月21日にはNTTドコモの「ドコモメール」が東日本エリアで3時間52分利用しづらくなり、最大32万5564ユーザーに影響した。IPv6用の経路表の設定値が足りず、想定を超えた登録件数で処理が滞ったことが原因だった。
2026年1月20日にはNTT東日本で北海道の約22万回線が片通話になり、同月27日には楽天モバイルがデータセンターの電源点検中に電源断を起こし、音声約9万1000人・データ約9万8000人に影響した。設備メーカーが手順書にない作業をしたためだった。2025年9月22日には長崎県五島市黄島町で海底ケーブルが破断し、22日18時間30分にわたり通信が途絶えている。
告知の出し方にも注文
報告書は、事故を防ぐ側の教訓13項目に加えて、起きてしまったあとの対応として3項目を挙げた。利用者への情報提供を速やかに、正確に行うこと。緊急通報が使えないことや代わりの手段があることなど、利用者の立場に立った周知をすること。そして、警報で異常をつかめなくても、利用者からの申告などで広い範囲に影響が出ていそうだと判断した段階で、関係機関へ速やかに連絡することである。
実際、2025年9月16日にNTT西日本でひかり電話と固定電話の発着信ができなくなった事故(最大約111万契約に影響)では、発生から30分後に公式サイトへ第一報を出したものの内容に不正確な記載があり、雛形を見直したという。別の事故では、原因や影響範囲がわからない段階でも1時間をめどに定期的に情報を更新する、SNSや利用者の申告から広域障害のおそれがあると判断した時点で公式サイトのトップページへ掲載する、といった再発防止策が挙げられている。
電気通信事故検証会議は、大規模化・長時間化する通信事故の再発防止を図るため、2015年5月に電気通信事業部長主催の会議として設置された。通信工学やソフトウェア工学、消費者問題の有識者で構成され、会議と議事録は原則非公開となっている。毎年度、重要な事案ごとの報告と年次報告をまとめ、事故を起こした会社へのフィードバックや業界内での共有、ガイドラインへの反映につなげている。
