消費者庁は9月17日、全国の消費生活センターに寄せられた相談データを分析した「PIO-NETデータを用いた訪問販売等に関する分析調査報告書」を公表した。訪問販売に関する相談で事業者が家に来たきっかけを調べたところ、インターネット広告を見た消費者自身が来訪を要請したものが、2015年度の4.1%から2024年度は36.3%へと9年で大きく増えていた。

報告書は、令和7年度の「特定商取引の実態に関する分析調査」の結果をまとめたもので、東京大学エコノミックコンサルティングがまとめた。消費者庁は公表ページで、訪問販売に関する相談の実態を把握し「今後の制度検討に役立てるため」の調査だと説明している。

「飛び込み」は82.7%から53.6%に

分析の対象は、全国の消費生活センターと国民生活センターを結ぶデータベース「PIO-NET(パイオネット)」に登録された相談のうち、販売購入形態が「訪問販売」で、すでに1円以上を支払っているものだ。2015年度が394件、2024年度が1068件で、件数自体が2.7倍に増えている。

事業者と消費者の最初の接点を四つに分けると、変化ははっきりしている。「インターネット広告を見て来訪要請」は2015年度の4.1%から2024年度は36.3%へ。「インターネット以外の広告を見て来訪要請」は7.6%から5.0%へ。そして飛び込み訪問や知人の紹介など、広告を介さずに事業者が訪ねてきたものは82.7%から53.6%に下がった。残りは接点を特定できなかったものだ。

特定商取引法の訪問販売規制は、自宅など事業者の営業所以外の場所で契約させられる形態を対象にしている。消費者庁の特定商取引法ガイドによると、訪問販売にあたる契約では、法律で定められた書面を受け取った日から数えて8日以内であれば、書面や電磁的記録でクーリング・オフができる。消費者が契約しない意思を示した後に勧誘を続けることも、改めて勧誘することも禁じられている。呼んだのが消費者自身であっても、家で契約すればこの枠組みの中に入る。

呼んだ相手はトイレ・水回りが最多

ネット広告がきっかけで来訪を要請した388件を業種別にみると、トイレや浴室などの「衛生設備」が23.7%で最も多かった。次いで分類しきれないサービスを集めた「役務その他」が21.6%、排水管の清掃などを含む「衛生サービス」が11.3%、「他の住宅設備」が8.5%、「戸建住宅」が7.7%と続く。水漏れや詰まりで慌てて検索し、上位に出てきた業者を呼ぶ——という流れが数字に表れている。

これらのうち解約や返金に触れている165件で、何が問題になったかを調べると、値段が想定より高かったといった価格に関するものが70.3%を占めた。強引な勧誘など手法に関するものが31.5%、書面を渡されないなど契約書面に関するものが30.9%だった(複数集計)。

「1000円~」の広告を見て20万円超の請求

広告に「〇円~」と最低価格だけが示されていた184件では、広告の表示額と実際の契約金額を突き合わせている。広告に1000円以下と出ていたケースでは、契約金額が20万1円以上だったものが7.1%、10万1円から20万円だったものが9.2%あった。広告に1001円から5000円と出ていたケースでも、20万1円以上が7.1%、10万1円から20万円が12.0%を占める。つまり5000円以下の表示を見て頼み、20万円を超える請求を受けた相談が全体の14.2%にのぼった。

解約を申し出た後の対応にも問題が残る。解約や返金に触れた415件のうち、返金や商品の引き取り、原状回復が行われないか不当に遅れているものが16.4%、高額な解約料や違約金を示されたものが8.7%、「解約できない」「期間を過ぎた」などと事実と違う説明を受けたものが8.0%、圧力をかけられたものが3.4%だった。

無料の体験や相談だと思って店に行ったら契約の勧誘を受けた、という「勧誘目的不明示型」の121件では、断った後も勧誘が続いたものが32.2%、事前の説明と実際が食い違ったものが29.8%、脅しや高圧的な態度があったものが5.8%を占めた。

分析にはローカルの生成AI

今回の調査では、相談の自由記述という長い文章を、大規模言語モデル(LLM)に読ませて自動で分類した。報告書は、キーワードの有無だけでは判別が難しかった相談類型も、文章全体の流れを踏まえて分類できるようになったと説明している。使ったのは「gpt-oss-120B」で、相談データの機密性に配慮し、インターネットに接続しなくても動くローカルのモデルを選んだという。分類結果は人手で確認・補正したうえで集計に使った。

報告書は連鎖販売取引(マルチ商法)も扱っている。2024年度にマルチ商法として登録された相談のうち、購入や契約の時期と、人を紹介すれば報酬が得られると知った時期の両方が読み取れる477件を調べると、20.5%は報酬の話が後から出ていた。契約させた後で紹介制度を持ち出す、いわゆる「後出しマルチ」にあたる。