消費者庁は9月25日、消費生活用製品安全法に基づいて報告された重大製品事故17件を公表した。このうち3件はリチウム電池内蔵充電器、いわゆるモバイルバッテリーによる火災で、3件とも鞄やリュックサックに入れて持ち歩いていたとき、あるいはそのまま置いていたときに起きている。

重大製品事故とは、死亡・重傷・一酸化炭素中毒・火災など、被害が重いか被害が拡大するおそれのある製品事故のことだ。製造・輸入した事業者は、知った日から10日以内に消費者庁へ報告する義務があり、消費者庁が定期的にまとめて公表している。今回の17件のうち、被害状況が「火災」だったのは14件、「重傷1名」が3件だった。

3件はいずれも「鞄の中」で燃えた

公表された3件の発生状況は、いずれも使用中ではなく持ち運び・保管中である。

1件目(管理番号A202600689)は2026年9月2日、兵庫県で起きた。当該製品をリュックサックに入れていたところ火災警報器が鳴り、確認すると製品と周辺を焼損する火災になっていた。2件目(A202600690)は8月21日、東京都。事務所で鞄に入れていたところ発煙に気付き、製品と周辺を焼損する火災が起きていた。3件目(A202600691)は8月17日、山梨県で、駐車中の車両内で鞄に入れていたところ発煙に気付いたというものだ。

いずれも「スイッチを入れた」「充電していた」といった操作の記述がない。充電器は使っていないときも電気を蓄えたままで、内部で短絡(ショート)が起きれば操作の有無にかかわらず発熱・発火しうる。3件が示しているのは、鞄に入れて持ち歩くという最も日常的な扱いの中で火災が起きたという事実である。モバイルバッテリーの発火が季節や使い方とどう関係するかは、モバイルバッテリー発火、夏はご用心 事故は6〜8月がピーク 5年で1860件・8割超が火災でも扱った。

リコール中の1件、対象40万1771台で回収率55.3%

3件のうち事業者名と型式が判明しているのは1件だけだ。兵庫県の事故(A202600689)で燃えたのは、アンカー・ジャパン株式会社(法人番号8010001151445)が輸入した型番A1257の製品で、消費者庁はこれを特記事項として別立てで掲載した。

同社はこの型番を含む製品について、「セル製造サプライヤーによる不適切な部材使用が見付かり事故の可能性があることが判明した」として、2025年6月26日からウェブサイトへの掲載、プレスリリース、メールマガジン、ダイレクトメールで周知し、回収・交換を実施している。対象は「Anker Power Bank(10000mAh, 22.5W)」のブラック(型番A1257011)、パープル(A12570V1)、ホワイト(A1257021)、ピンク(A1257051)、ブルー(A1257031)の5色で、販売期間は2024年5月16日から2025年6月6日まで。対象台数は401,771台である。

消費者庁の資料によると、回収率は2026年9月24日時点で55.3%。単純に計算すると、約18万台が回収・交換を受けないまま使われているか、どこかに残っていることになる。リコールの告知から1年3カ月が経っても、半数近くが手元に残っている計算だ。

この対象製品については、リコール対象となった内容による事故が2025年度に7件(いずれも火災)報告されている。2024年度と2026年度は0件。ただし消費者庁は、今回の兵庫県の事故(A202600689)はこの7件には含まれておらず、またこの事故がリコール事象によるものかどうかは現時点では不明だ、と断っている。

同社は型番A1257を持っている人に対し、シリアルナンバーの確認を求めている。回収・交換を受けていない場合は直ちに使用を中止し、受付窓口(電話0120-775-171、平日9〜17時)またはオンライン受付フォームへ連絡するよう、消費者庁も注意喚起している。

残る2件はメーカーも型式も不明

東京都と山梨県の2件は、製品名が「リチウム電池内蔵充電器」とだけ記載され、機種・型式の欄も事業者名の欄も空欄になっている。消費者庁の分類では「製品起因か否かが特定できていない事故」にあたり、製品に原因があるのか他の要因なのかを含めて調査中の段階だ。

公表資料には「これらは消費生活用製品安全法第35条第1項の規定に基づく報告内容の概要であり、現時点において、調査等により事実関係が確認されたものではなく、事故原因等に関し、消費者庁として評価を行ったものではありません」との留意事項が付いている。速報段階のものであり、今後の追加情報や事故調査の進展によって変更・削除される可能性があるとも記されている。

17件の内訳

今回公表された17件のうち、ガス機器・石油機器に関する事故は該当なしだった。

製品起因が疑われる事故が6件で、内訳はコードレス式のマイク付イヤホン(リチウムポリマーバッテリー内蔵)1件、充電式スピーカー2件、食品乾燥機1件、電動アシスト自転車1件、リチウム電池内蔵充電器1件。

製品起因か否かが特定できていない事故が11件で、内訳は充電式の携帯型扇風機1件、充電式スティック型の電気掃除機1件、充電式の電気掃除機1件、エアコン1件、リチウム蓄電池1件、エアコン室外機1件、ポータブルトイレ1件、ガラス製容器1件、リチウム電池内蔵充電器2件、ウォーターサーバー1件である。

17件のうち、製品名にリチウム電池・リチウム蓄電池・充電式が含まれるものは10件を数える。火災以外の3件は、ポータブルトイレの座面ふたに左手の手指を挟んで負傷した事例(群馬県、重傷1名)、ガラス製容器が破損して落下し右足を負傷した事例(千葉県、重傷1名)、1歳の幼児がウォーターサーバー背面の排水口から出た温水に触れてやけどを負った事例(福岡県、重傷1名)だった。

リコールが告知されていても、手元の製品が対象だと気付かないまま使い続ける構図は今回に限らない。9月11日公表分でも、リコール中の製品で火災 消費者庁が重大製品事故27件を公表 電気ケトルは48機種が交換対象、告知から4年経つ製品ものとおり、交換の告知から4年が経った製品での事故が報告されている。回収率55.3%という数字は、告知を出すことと、製品が実際に手元から回収されることの間にある距離を示している。