内閣府が2026年7月に公表した令和8年版男女共同参画白書は、特集で社会人の「学び直し」を取り上げた。仕事や職業キャリアに関する学び直しについて、学ぶ意欲があり過去1年以内に実際に学んだ人は女性9.6%、男性15.0%にとどまった。一方で「学ぶ意欲はあるが、過去1年以内に学んでいない」人は女性24.1%、男性24.7%おり、実際に学んだ人の2倍前後にのぼる。意欲と行動の開きの背景に何があるかを、白書は費用・時間・情報の三つに整理した。

意欲はあっても、踏み出したのは1割前後

白書が使ったのは、内閣府が委託して実施した「令和7年度人生を豊かにするための学びに関する調査」だ。2025年12月2日から15日にかけて、国内在住の20歳以上69歳以下のインターネット・モニター2万人に聞いた。白書はここでいう「学び直し」を、資格取得や職業訓練だけでなく「社会人による、職業に直結した学びに限られない人生を豊かにする学びや他者との学びあい」と広くとらえている。

仕事や職業キャリアに関する学び直しの状況を年代別にみると、「意欲があり、過去1年以内に学んだ」割合は女性が20代16.7%、30代11.6%、40代9.6%、50代8.7%、60代5.3%と下がる。男性も20代25.2%、30代21.4%、40代15.3%、50代11.5%、60代6.8%と同じ形をとる。若い年代ほど男女差が大きく、20代は女性16.7%に対し男性25.2%、30代は女性11.6%に対し男性21.4%と、男性が女性の2倍近い。

就業形態による差はさらに大きい。この1年に学んだ割合は、女性では正規雇用15.4%、非正規雇用8.6%、無業1.9%。男性では正規雇用17.4%、非正規雇用11.8%、無業3.8%だった。雇われ方の違いが、そのまま学ぶ機会の差になっている。

女性は「お金」、男性は「仕事の忙しさ」

学び直しの妨げになっているものを、働いている人と働く意向のある無業者に複数回答で聞いた結果が、男女の事情の違いを映し出した。

女性は「金銭的余裕がない」が32.7%で最も多く、「学んでも収入アップにつながらない」19.3%、「何を学んでいいか分からない」19.1%、「仕事が忙しくて時間がない」17.2%、「家事・育児・介護等が忙しくて時間がない」14.6%と続いた。男性も最多は「金銭的余裕がない」の25.4%だが、2番目は「仕事が忙しくて時間がない」の20.5%で、「学んでも収入アップにつながらない」18.1%、「何を学んでいいか分からない」13.9%の順になる。「家事・育児・介護等が忙しくて時間がない」は7.2%で、女性の半分にとどまった。

何らかの困りごとを挙げた人は女性71.9%、男性66.0%で、女性の方が多い。

年代をさらに細かくみると、「金銭的余裕がない」は女性40代の38.0%が全体で最も高く、同じ40代の男性25.6%と開く。「家事・育児・介護等が忙しくて時間がない」は女性40代17.9%に対し男性40代9.2%、50代では女性13.1%に対し男性4.6%となり、子育てや介護を抱える年代で女性に偏る構図がはっきり出た。家庭内の役割の偏りが地域活動の担い手にも表れていることは、自治会長の女性は7.8% 23万9459人中1万8629人 政府の「10%」目標は2度先送りされ2030年度に 大阪19.8%、群馬1.3%で15倍の差でも数字として示されている。

配偶者が支援すると、学んだ割合は倍以上に

白書が新たに踏み込んだのが、家庭内の理解と学び直しの関係だ。配偶者がいる人に自分の学びに対する配偶者の姿勢を聞くと、「積極的に支援してくれる」と「理解がある」を合わせた前向きな回答は女性45.1%、男性47.8%だった。

この姿勢別に、過去1年以内に学んだかどうかを集計すると差は大きい。配偶者が「積極的に支援してくれる」と答えた人では、学んだ割合が女性55.9%、男性68.9%に達する。これに対し配偶者が「否定的な姿勢である」と答えた人では、女性24.1%、男性21.9%にとどまった。積極的な支援がある場合とない場合で、女性は55.9%と24.1%、男性は68.9%と21.9%と、男性の方が落差が大きい。

年代別では、配偶者が前向きだとする割合は女性の30代が41.5%、40代が43.0%と低く、男性の40代45.2%、50代45.7%も他の年代を下回る。白書は、学び直しに踏み出せるかどうかが本人の意欲だけで決まっているわけではないと指摘している。

「学ぶ場が分からない」への対応が課題

学び直しをした人の受け止めは悪くない。暮らしを充実させる学び直しを過去5年以内に経験した人のうち、何らかの効果を感じたと答えたのは女性87.2%、男性86.9%。内容は女性が「日々の暮らしに役に立った」36.9%、男性が「興味・関心の幅が広がった」32.6%で最も多かった。

白書は、障壁のすべてが個人の責任ではなく社会の側の環境整備で解消できるものもあるとして、三つの方向を示した。費用については、厚生労働省の教育訓練給付金やハロートレーニング、公的機関が無料・低額で提供する学習プログラムを挙げる。時間については、長時間労働の是正と男性の家事・育児・介護への参画が、学びに使える時間を増やすことにつながるとした。情報については、経済産業省と情報処理推進機構(IPA)のデジタル人材育成プラットフォーム「マナビDX」や、文部科学省が社会人向けに講座と支援制度を案内するポータルサイト「マナパス」を例示している。

背景には、デジタル技術の広がりに日本の個人が追いついていないという認識がある。白書が引いた総務省の調査では、2024年時点で何らかの生成AIサービスを使ったことがある個人の割合は日本が26.7%で、中国81.2%、米国68.8%、ドイツ59.2%を大きく下回った。世代によって使い方が分かれている実情は、生成AIの日常利用、高校生83.3%で最多 小学生29.0%・中学生47.6%から急上昇 社会人は56.7%に下がる「山型」でも確認できる。

男女共同参画白書は、男女共同参画社会基本法に基づき政府が毎年国会に提出する年次報告で、令和8年版の特集テーマは「仕事や職業キャリアに関する女性の学び直し・暮らしを充実させる男性の学び直し」。政府は2026年3月に第6次男女共同参画基本計画を決定しており、白書は地域の男女共同参画センターを学び直しの入り口として位置づけ、2026年1月に内閣府が策定した運営ガイドラインの活用を地方自治体に求めている。