郵便ポストを大幅に減らし、空のポストを回る集荷をやめる――。郵便の配達頻度や送達日数の見直しを検討している総務省の情報通信審議会郵便事業政策委員会が11月4日に開いた第4回会合で、日本メーリングサービス協会がこうした提言を出した。同じ日に聞き取りを受けた主婦連合会は、一方的な値上げやサービスの低下に反対し、日本郵便の改革と公的資金の投入を先に求めた。KDDIスマートドローンは、郵便局をドローンの発着拠点にする日本郵便との取り組みを説明した。各者の資料は総務省のサイトに掲載されている。
メーリング協会、業界が工程を担う「協業型」を提言
日本メーリングサービス協会の提言書は、結論として「業界が郵便工程の一部を担い、その対価も含めたトータルコストの削減を実現して料金を引き下げる『協業型』」を軸に据えた。聞き取りには吉澤隆吉会長と田中孝副会長が出席した。
提言は4つの軸を掲げ、そのうち3つの軸の下に具体策を13項目並べた。1つ目の軸は物数を増やすことで、通数割引を受けられる差し出し通数の下限を引き下げる、広告郵便の割引を同封物や内容の条件を緩めて広げる、送達日数に余裕を持たせた低料金のダイレクトメール(DM)商品をつくる、などを挙げた。2つ目は費用の削減への協力で、差出人が区分やバーコードの印字、地域区分局への直接の持ち込みを担った場合の割引(作業分担割引)の拡充、差し出す日を分散させた場合の割引などを求めた。
3つ目は制度と運用を柔軟にすることだ。新商品や割引料金を事後の届け出で出せるようにする手続きの簡素化、サービス水準を見直す際に大口の差出事業者の意見を聞く場の設置、料金改定の際に十分な周知期間を取ることを挙げた。4つ目は関係法令の抜本的な改正で、提言書は「縛りが多すぎる法律・省令を改正して社会情勢、時代にあった内容へ改正」と書き、ユニバーサルサービスの再定義を求めている。
協会は13項目のうち8項目に優先度を付けた。日本郵便の費用削減に直結する作業分担の2項目と、物数を増やす効果が大きい割引・広告郵便の2項目を「高」とした。
| 優先度 | 提言 | 協会が挙げた理由 |
|---|---|---|
| 高 | 作業分担割引の拡充、差出日分散割引 | 日本郵便のコスト削減に直結し、受け入れられやすい |
| 高 | 通数割引の下限引き下げ、広告郵便割引の拡大 | 物数増加の効果が大きい |
| 中 | 低料金DM商品の創設、料金届出の簡素化 | 制度改正が必要で時間がかかる |
| 中 | 大口差出事業者の意見聴取の場、料金改定の周知期間 | 業界を守るための提言 |
ポスト削減は省令の「約18万本」とぶつかる
提言の中で暮らしに最も近いのが、郵便ポストの大幅な削減だ。協会は「デジタル対応でカラポストの選別」と書き、郵便物が入っていないポストを回る「カラ取集」などの無駄をなくせば、労務費などの固定費を大幅に減らせるとした。そのうえで、この項目には「要法律改正」と注記している。
ポストの本数には決まりがある。9月25日の第2回会合で日本郵便が出した資料によると、郵便法施行規則第32条第2項は、日本郵政公社だった2003年4月1日時点の本数(約18万本)を維持することを定めている。あわせて、各市町村と特別区の中に満遍なく置くこと、公道上など常時使える場所や駅・店舗の目につきやすい場所に置くことも求めている。日本郵便はこの基準に沿って本数を保っており、2025年度末(2026年3月31日)時点のポストは17万1489本だった。
同じ資料は、郵便物を扱う費用を工程ごとに分けて示している。2025年度は、窓口やポストで郵便物を受け取る「引受け」が2444億円で全体の18.2%、区分局の間で運ぶ「継越(つぎこし)」が1599億円で11.9%、各家庭や事業所へ届ける「配達」が6307億円で47.0%を占めた。協会が「引受・継越の費用が30%超」と書いたのは、この18.2%と11.9%を足した数字にあたる。差出人が区分や持ち込みを肩代わりすれば、この部分の費用が減るというのが協会の考え方だ。
郵便物の工程別費用(2025年度)(億円)
数値で見る(単位: 億円)
| 項目 | 億円 |
|---|---|
| 引受け | 2,444 |
| 継越 | 1,599 |
| 配達 | 6,307 |
| 間接業務 | 3,064 |
提言の背景には、郵便物の減少がある。日本郵便の資料によると、郵便物は2001年度の263億通をピークに減り続け、2025年度は118億通と24年間で55.1%減った。日本郵便は2026年5月に策定した収支改善計画で、2028年度に2268億円を超える収支改善を見込むが、物価や人件費の上昇で同年度の当期純利益はなお1691億円の赤字になる見通しを示している。料金についても、新サービスを作るときを含め、すべて届け出が必要で「柔軟な料金設定ができない」と課題に挙げていた。協会の提言は、この日本郵便側の課題認識を随所で引いている。
主婦連、「負担増は納得できない」と改革を先に
消費者の立場から資料を出したのは、委員として加わる主婦連合会常任幹事の木村たま代氏だ。資料は郵便を「暮しに欠かせない生活インフラの一つ」と位置づけ、全国一律の料金体系と確実な配達を挙げて「郵便事業は、信用、信頼こそ最も重要」とした。
郵便ネットワークを維持する課題については「一方的な料金値上げやサービス低下などの負担増は納得できない」と明記した。まず必要なのは「日本郵便全体の改革・経営の透明性・公的資金投入」と、消費者への明確な情報公開だとしている。
一方で、ユニバーサルサービスを保ったうえで、その中身を検討することは認めた。例として、配達頻度の変更、一定の場合に個別の配達ではなく郵便局などで受け取ること、郵便ポストの削減を挙げている。条件の不利な地域では、引き受けや配達の方法を工夫して続けることを求めた。ポストの削減は、立場の異なる協会と主婦連の双方が検討の対象に挙げたことになる。
資料には会員から寄せられた声も並ぶ。「日本の何処にでも郵便が届く、信頼性とユニバーサルサービスは守るべきだ。それにはある程度の値上げは仕方がないのではないか」という意見がある一方、「最低限ユニバーサルなところへ公的資金を投入してでも、弱者に対する経済的負担は増やさないでほしい」という意見もあった。郵便事業に期待することとして、デジタルに不慣れな「ぜい弱な消費者」を置き去りにしない対面のサポート、災害時や有事の「最後のセーフティネット」としての役割、職員の待遇改善を挙げた。
KDDIスマートドローン、郵便局をドローンの拠点に
3者目のKDDIスマートドローンは、杉田博司執行役員CTO(最高技術責任者)が説明した。同社は無人機の発着拠点となる「ドローンポート」を全国1000か所に置き、利用者が場所を指定すれば最寄りのポートから約10分で駆け付ける共同利用型のサービスを目指している。石川県との包括連携協定に基づき、2026年2月末までに奥能登の12か所にポートを置いた。8月の大雨では、県と志賀町の緊急要請を受けて常設のポートから遠隔で出動し、4日間に12回飛んで初動の調査を支えたという。
日本郵便とは、ドローンの活用に向けた基本合意書を結んでいる。資料によると、郵便局のネットワークでKDDIのポートの全国展開を支え、KDDIの通信と遠隔運航の体制で日本郵便のドローン物流を支える関係だ。合意に基づく第1弾として、石川県の珠洲郵便局にポートを置き、郵便局を拠点にした実証を9月28日に始めた。
同社は、ドローン物流の実用化に向けた大きな課題の1つに電波の届かない地域を挙げ、携帯電話の電波と衛星通信で補うと説明した。資料は「ドローン物流の実装で、郵便のユニバーサルサービスを未来へつなぐ」と結んでいる。同社は地域や過疎地の物流を支えるにはドローン物流の実装が重要だとしており、総務省が意見募集で示した「条件不利地域における持続可能な引受・配達方法等の在り方」という論点に、技術の側から案を示した。
意見募集は11月20日まで、海外では非優先郵便の隔日配達も
委員会は、総務相が8月20日に情報通信審議会へ出した諮問を受けて検討している。郵便には現在、月曜日から金曜日まで週5日、1日1回以上の配達と、差し出しから原則4日以内の送達が郵便法と同法施行規則で義務づけられている。9月25日の第2回会合では、日本郵便がこうした水準と郵便事業の現状・課題を説明した(関連記事: 郵便の配達頻度・送達日数・ポスト本数、日本郵便が見直し要望を検討 郵便物は2001年度263億通から2025年度118億通へ55.1%減 営業損益は4年連続の赤字)。
総務省は10月20日から11月20日まで、郵便事業の方策について一般から意見を募っている。意見を出す際には、速さ・信頼性・価格・頻度のどの要素をユニバーサルサービスとして優先すべきかを具体的に書くよう求めた(関連記事: 郵便の配達頻度と送達日数の見直し、総務省が11月20日まで意見募集 速さ・信頼性・価格・頻度の優先順位を問う)。
協会が低料金のDM商品の根拠に挙げたのは、オーストラリアとベルギーの「非優先郵便」だ。日本郵便が第2回会合で示した海外の例によると、ベルギーのbポストは2020年に公的機関からの郵便物や広告郵便などの非優先郵便物を隔日配達に移した。オーストラリアポストは2024年4月から、普通郵便と無宛名郵便の隔日配達への移行を進めている。協会は、こうした送達日数に余裕を持たせた商品で、価格を重視する利用者を取り込めるとしている。
一方、定形郵便物の料金の上限は、12月1日から総務相の認可制に変わる(関連記事: 定形郵便の料金上限、12月1日から総務相の認可制に 原価と利潤で審査する基準を総務省が公布)。料金を柔軟にしたい日本郵便と業界、負担増に反対する消費者団体の間で、サービス水準と料金のどちらをどれだけ動かすのか。委員会は、聞き取りと意見募集の結果を踏まえて議論を続ける。
